ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(3)

王宮(2)
霹靂

 映画博物館を出てカステッロ広場に戻り、その奥にある王宮へ行く。イタリアには様々な「王宮」があるが、ここの王宮はある意味「本物」である。なぜなら、これはイタリアを統一した最初で最後の王家・サヴォイア家の宮殿だからだ。

 もちろん私はトリノカードを持っているから、チケット売り場に行って入場券をもらうだけでよかった。だが、ここからが意外に難関だ。まず、入口がわかりにくい。ようやく見つけて中に入ったはいいが、階段を上ると扉が閉まっている・・・まさか、昼休み?(ヨーロッパでは昼休みに閉まる観光地も珍しくないのだ)途方に暮れかけていると、他の入場客が扉を開けて入って行くので、私も後に続く。

 扉の向こうは、まさに別天地である。光り輝く部屋の数々、そして壮麗な通路にずらりと武具が並ぶ。

 王宮を出るとお昼なので、この旅でようやく初めての本格イタリアンを食べる。肉入りのラビオリとサーロインステーキ・チーズ添え、ビールに加えて赤ワインもしっかり飲む。

 すっかり満腹になったところで、王宮の中庭に面したサバウダ美術館へ。宗教画を中心に巨大絵画がずらりと並ぶ。もともとサヴォイア家のコレクションから始まっているので、歴代のサヴォイア候の肖像画も多い。こちらも、満腹だ。

 再び王宮を出て、裏手のサン・ジョヴァンニ・バッティスタ聖堂へ行ってみるが、ミサの最中なので中に入るのは諦め、そこから4番トラムに乗る。今思えば、この日の真の試練はここからであったのだ・・・

 レップブリカ広場でトラムを下車する。ここにコインランドリーがあるはずなので、事前に確認しておきたかったのである。コインランドリーは見つかったものの、治安面で若干不安を覚えたので別の店を探そうと思った矢先、雨が降り始める。この広場には大きな市場があるのだが、雨で皆一斉に帰り始めたせいか、トラムが激しく混雑していて乗れない・・・仕方なく雨の中を歩いて一つ先の停留所からトラムに乗り、地図アプリで見つけていた別の店に向かう。ところが、アプリが示した場所に店はない・・・雨脚は強まるばかり。これでは洗濯の前に服がずぶ濡れになるので、諦めてホテルに引き返す。不幸中の幸いは、帰りのトラムから別の店を見つけることができたことである。ともかく、停留所から激しい雷雨の中をほうほうの体でホテルへ帰る羽目に・・・

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(2)

映画博物館(5)
3日目

昇降

 エミーリア停留所から4番トラムに乗り南下し、モンテ・ディ・ピエタで下車。ここを左に折れてピエトロ・ミッカ通りに入る。歩道はポルティコになっている。普通のアーケード街なのだが、柱廊があるだけで何だか由緒ありげな所に来た気分になるから不思議だ。
 やがてカステッロ広場へ。その名の通り、お城というか要塞がある。ここの一角にあるツーリストインフォメーションでトリノカードを購入。市内の主要な博物館と公共交通の1日券が含まれている。

 ここからは、ポルティコの続くポー通りではなく、裏道に入ってみる。いきなり大きな建物が現れるが、これがトリノのオペラ座である。通りの名は、ジュゼッペ・ヴェルディ通り。だが、オペラ座以外は裏通りにふさわしく、何とも寂しいものがある。

 しばらく直進すると、とんがり屋根どころか、先端が塔になっている建物が現れるので、そこを目指して道を左に折れる。
 モーレ・アントネッリアーナという何とも覚えにくい名前の建物に入る。もちろん、ここではトリノカードが使える。まずは地上階から屋上の塔へ向かうエレベーターに乗る。最初は周囲が壁に囲まれているので気づかなかったが、動き始めると壁も動くのでエレベーターがガラス張りになっていることに初めて気が付く。そして次に現れた景色に思わず「あっ!」と声が出そうになる。
 ここで何が見えたのか?それは後で述べるとして、まずは屋上に到着。ここからはトリノの市街地と、その北に聳えるアルプスの山々が見えるはずなのだが・・・残念ながらこの日は曇っていて、トリノ市街を見渡すのがせいぜいであった。

 いったんエレベーターに乗って地上階に戻り、今度は階段を上がると、そこは国立映画博物館になっている。そこには古今東西(と言っても、どうしても欧米のものが中心であるが)の映画をモチーフにしたアトラクションがあって、映画をあまり見ない私でも十分楽しめる。だが、もっと驚くのはその建物の構造そのものである。映画館の客席というか、もはやベッドにすらなっている座席群の真ん中に突如現れるのは、何とエレベーター!言うまでもなく、これは先ほど乗った屋上行きのものだ。そのエレベーターの行く先を眺めると、そこには天上世界の入口のような穴が真ん中に開いた天井がある。観客はベッドに横になって、映画のような不思議な空間を眺めることができるのだ。
 この巨大な吹き抜け空間の周囲は映画資料の展示室になっていて、螺旋状の通路で上り下りできる。ただし、屋上には行くことができない。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(1)

マルペンサエクスプレス(マルペンサ空港駅)
1・2日目

ミラノ→トリノ

 羽田を深夜に出発した飛行機は、翌朝中東のドバイに到着。いつものように乗り継いで、ミラノ・マルペンサ空港には14時30分頃に到着。ドバイからはA380という大型機で大量の乗客がやって来たからだろうか、入国審査は長蛇の列である・・・。
 それもようやく抜けて鉄道駅に向かう。その途中の通路に、ダ・ヴィンチの有名な『最後の晩餐』のレプリカというかデジタル展示がある。本物はミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会にあるのだが、なんだかんだで結局ミラノで見られなかったものの一つである。ミラノに着いたばかりなのに、すぐにこの地を離れていく私としては、レプリカだろうが何だろうが、ありがたく見物してゆく。

 ホームには、ミラノ中央駅へ向かうマルペンサエクスプレスが入線していた。乗車券のみで乗れる快速列車だが、いつ見ても車体のデザインがカッコよく、お得な気分になる。とは言え、座席の指定もないから、あっという間に車内は満員になってしまう・・・15時43分に発車。ミラノ中央駅には16時35分に到着

 今回ばかりは、この壮観な駅舎をゆっくり見物する暇もなく、切符を買い、次のホームへと向かう。ローマ始発でトリノへ向かうFAは、予定より5分遅れて入線。だが、駅内の混雑に比べて、意外にも空席がある。
 17時12分、列車は7分遅れで発車。広い構内線を抜けると、すぐに左に折れて「環状線」に入り西に進む。見覚えのある経路だと思っていたら、前年訪れた万博会場のRho-Fieraを通過して特急専用線に入る。
 そしてあっという間に郊外に出ると、ロンバルディアの平原を疾駆する。ティチノ川を渡り、ノヴァラを掠めて、セージア川などいくつかの川を渡ると、大河・ポー川に沿って進む。やがて川を渡って大きな市街地に入ると、列車は徐行を始め、ついに地下に入る。
 17時57分、地下駅のトリノ・ポルタ・スーザに停車。ほとんどの乗客はここで降りてしまう。列車は少数の乗客を乗せたままさらに前進するのだが、大きく左カーブして地上に出る。実はこのカーブはヘアピンで、当初とほぼ逆方向に向かっているのだ(つまり「J」の字の鏡文字を描く)。そして18時8分、終点のトリノ・ポルタ・ヌオーヴァに到着
 この2つの駅を地図上で見ると、実はとても近い。それならば、10分ほど余計に列車に乗るよりもポルタ・スーザで下車する方が合理的なのであろう。そのせいか、ポルタ・ヌオーヴァの駅舎は大きいわりに人気が少なく感じられる。もちろん、私の旅は合理的であろうとなかろうと、とりあえず終点まで行かないと気がすまないのであるが。

 ポルタ・ヌオーヴァの駅前からトラムに乗ってホテルに向かう。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)

はじめに

 前回の旅から列車は地中海の美しい海岸を走るようになったが、地形の厳しさもあって、海岸を通る鉄路の姿を捉えることが難しかった。今回の旅では、青い海と鉄路の美しいコンビネーションを余すことなく堪能することができた。
 今回の旅でイタリアの鉄道にひとまず別れを告げ、フランスに入る。イタリアとフランスの鉄道の違いも、また興味深いポイントである。

旅の時期
2016年4月・5月

目次

    1・2日目
  1. ミラノ→トリノ

  2. 3日目
  3. 昇降

  4. 霹靂

  5. 4日目
  6. 彷徨

  7. 5日目
  8. 名残

  9. トリノ→アレッサンドリア

  10. アレッサンドリア→ジェノヴァ

  11. ジェノヴァ→サヴォナ

  12. サヴォナ→アルベンガ

  13. アルベンガ→ヴェンティミーリア

  14. ヴェンティミーリア→ニース

  15. 6日目
  16. 息切

  17. 海鉄

  18. 7日目
  19. タンド線

  20. 8日目
  21. 一八

  22. 9日目
  23. 散々



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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第12弾(ピサ→ミラノ)(16)

日本館
7日目

万博

 旅の最終日は、その当時(2015年)開催されていたミラノ万博に行った。

 ミラノ中央駅からトリノ行きの快速列車に乗る。列車は発車後すぐに環状線に入り、西に向かう。この路線は初めてである。そして環状線から離れて少し北西に進んだところで最初の停車。ここがRHO Fierraという駅で、国際展示場すなわち当時の万博会場の最寄り駅であった。ここまで約10分。ミラノの中心部から至近距離にあると言える。改札前のスペースはとても広く、特に帰りの混雑への対応を想定しているようだ。

 万博の開場は10時だが、それを前にして入口は既に来場者でごった返している。
 ようやく10時になった。来場者が一斉になだれ込む、と言いたいところだが、そうはいかない。なぜなら、入口で一人一人ボディチェックを受けているからである。近年のテロの影響は、こんなところにも影を落とす。

 さて、この万博のテーマの一つは食であった。食から農業、さらには環境問題への理解を促すということのようだ。しかし、胃袋を一生引っ提げる宿命にある人間は、目の前のニンジン、いや、世界各地のグルメに目も心も奪われてしまう。かくして私も・・・。

 手始めにチェコ館でピルスナー、次いでベルギー館で黒ビールとベルギーフライ。オランダ館ではハイネケンとパティが全てチーズの「チーズバーガー」。そして、南米のビーフの臭いに誘われ、最後はイタリアワインのテイスティングで終わる。
 食べる合間に、日本館(待ち時間を表示していたのはここだけだ)やトルコのゆるキャラを見たりして過ごす。夕立もあったが、通路に広く屋根を渡しているので気にならない。

 気が付くと、もう夜だった・・・。夢から醒めたように万博会場を出て駅に向かう。何気なく電光掲示板を見て驚く。ダイヤが大幅に乱れているのだ。日本とは異なり、イタリアではダイヤが乱れた時も館内放送などの「音」はほとんどない(放送があったとしても、私には聞き取れないのだが・・・)。だから駅の様子も普段とはあまり変わらないのである。
 ミラノ中央駅へ向かう列車の本数が多いおかげだろうが、駅ではそれほど待つことなく、予定より約90分遅れで到着した列車に乗り込む。なんとなく疲れた表情の人が多い。約15分でミラノ中央駅に到着。
 どことなく殺伐とした雰囲気になった駅をさっさと出ると、街の夜景を見てほっとする。

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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第12弾(ピサ→ミラノ)(15)

ミラノ行きThello(ジェノヴァ・プリンチペ駅)(1)
ジェノヴァ→ミラノ

 そして私は、ジェノヴァ・プリンチペ駅に戻ってきた。ホームに降り注ぐ日差しは、17時とは思えないほど強い。17時5分、その太陽のある方向、西側から、列車が入線する。イタリアのテッロ社が運行する国際特急で、フランスのニースからミラノへと向かう。後ろから2両目の一等車に乗ると、座席は2列・1列でとてもゆったりしている。

 17時21分、ジェノヴァ・プリンチペを発車。列車は進行方向を西に変える。したがって、私が乗っている車両も前から2両目になる。すぐに駅西側の丘の下のトンネルに入ると、ここで分岐。西のニース方面行きの列車や各駅停車はすぐにトンネルを抜けて海岸に出るが、北方行きの特急列車はなおもトンネル内を進む。ようやくトンネルを抜けた時は、北から流れるポルチェヴェラ川が左手に流れている。
 川を渡ると、今度は右手の川向こうにも線路が見える。これはジェノヴァと北方を結ぶ在来線で、この列車が進むのは特急専用線である。トンネルが断続する渓谷の景色がしばらく続く。

 渓谷の中で、いつしかジェノヴァのあるリグーリア州からピエモンテ州に入っていた。やがて渓谷が開けてきて、在来線と合流する。線路もまっすぐになり、列車のスピードもぐんぐん上がる。アルカータ・スクリヴィアを通過。再び在来線と分かれると広大な草地の中を単独で北に直進してトルトナを通過。いったんアレッサンドリアを経由する在来線と合流する。ここからはまっすぐ北東に進み、18時10分ヴォゲーラに停車。

 列車はヴォゲーラを出発するとすぐに左に分岐して、さらに北東に進む。ちなみに、ここを右に分岐するとまっすぐ東に向かい、ピアチェンツァに至る。
 やがて北イタリアの大河・ポー川が現れ、列車はそれを渡る。左からは、これもアレッサンドリアからの線路がやって来て合流し、ティチノ川を渡る。そして18時26分、パヴィアに停車。
 パヴィアを出ると、すぐに左右に大きく分岐。右に進むとピアチェンツァに行ってしまうから、もちろんこの列車は左に進む。名高いパヴィアの修道院を左手に見ながら、列車はまっすぐな線路を快走する。ミラノ・ロゴレードを通過すると、いよいよミラノの「鉄道環状線」(線路がおおよそ環状につながっているだけで、山手線のような路線があるわけではないようだ)に入り、線路の立体交差も現れる。辺りの景色もすっかり市街地になる。「環状線」の東側・ランブラーテを通過すると列車は徐行を始める。広い構内線には、その当時(2015年5月)開催中のミラノ万博を記念して「EXPO」のロゴをあしらった特急車両が停車している。ミラノ行き列車はその脇を通過して、ゆっくりと巨大なミラノ中央駅へと吸い込まれてゆく。18時55分、到着

 2年ぶりのミラノ中央駅であったが、変わっていたのはホームの入口で切符をチェックするようになっていたことだ。改札ができたとも言えるだろう。もちろん、神殿とも教会とも言える巨大な駅舎が変わることはない。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第12弾(ピサ→ミラノ)(14)

赤の宮殿・白の宮殿
6日目

紅白

 朝、ホテルをチェックアウトするとプリンチペ駅に向かい、荷物を預けて地下鉄に乗り、サン・ジョルジョで下車。
 さあ、ここからが大変だ。ガリバルディ通りを目指すものの、古い港町であるジェノヴァの路地は、狭く入り組んでいる。タブレット端末で時々位置を確認しているにもかかわらず、油断するとすぐに道を迷ってしまう・・・

 ようやくガリバルディ通りへ。現在の市庁舎であるトゥルシ宮の宮殿が並んでいる壮観な眺めだ。
 これらの建物への入場券は、近くの本屋で売られている。まずは赤の宮殿へ。いきなり巨大絵画が待ち構えていて驚く。豪勢な部屋の数々もすごいが、やはりテラスからの眺めも良い。、そして山側の景色を堪能できる。
 次いで白の宮殿へ。トスカーナやジェノヴァの絵画を中心に展示されている。本来トゥルシ宮に通じる通路があるそうなのだが、この時工事中で、中庭を通ってトゥルシ宮に向かう。
 トゥルシ宮は市庁舎でもあるので展示スペースは少なく、かつコレクションもそれほどでもない。しかし、由緒ありげな会議室やロッジアの眺めは素晴らしい。

 次の目的地、スピノーラ宮殿へは直線距離では大したことないはずなのだが、途中昼食のために寄り道したせいなのか、私が方向オンチなのか、これが意外にたどり着けない。さらには真っ昼間なのに夜のお姉さんに客引きされたりして、路地裏の怖さも思い知らされる。
 それでも、やっとの思いでたどり着いた(私だけ?)スピノーラ宮殿は、それだけの価値がある所だった。壁一面の絵画に囲まれて、しばし時を忘れる。ここにもテラスはあるが、相対的に低い位置にあるせいか、眺めはそれほどでもない。

 港から山側に行くのは上述したようになかなか大変だったのだが、その逆は意外に簡単である。海という大きな目印があるからかもしれない。のデパートで、買い残したジェノヴァのおみやげを買う。
 いよいよジェノヴァを去る時が近づく。後ろ髪を引かれる思いで地下鉄に乗る。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第12弾(ピサ→ミラノ)(13)

ポルトフィーノ湾
5日目

隠棲

 朝、ジェノヴァ・プリンチペ駅に行く。前日に到着した地上ホームではなく、この日は地下ホームに下りる。「地下」と言っても実際は地上である。地上ホームや駅舎が高台にあるので、海側のこのホームは「地下」に見えるだけだ。とはいえ、このホームのブリニョーレ側の半分は実際にトンネルの中なのだ。山が海に迫るリグーリア地方の複雑な地形を象徴するかのようだ。

 そうこうしているうちに、セストリ・レヴァンテ行きの列車が入線する。8時14分に発車。そのままトンネルに入り、抜けるとジェノヴァ・ブリニョーレに停車。R(Region)列車だから各駅に停車すると思っていたが、意外にもここからは快速運転となり、町はずれのジェノヴァ・ネルヴィまで停まらない。
 その後も快速運転は続き、ボリアスコレッコカモーリの順に停車する。カモーリからは内陸に入り、ポルトフィーノ半島を横断して反対側のサンタ・マルゲリータ・リグレに停車。8時50分過ぎだ。

 は高台にあるので、少し歩いて街に下り、港へ向かう。ポルトフィーノ行きのフェリーまで少し時間が余ってしまったので、しばらくブラブラ。街はを中心にカラフルな建物が建ち並び、ちょっと風格というアクセントを添えるかのように小さなお城まである。ここもリヴィエラのリゾート地の一つなのだ。

 のんびり街を歩いていたら、いつの間にか港に大行列ができている・・・危ない。チンクエテッレ同様、ここにも観光客が押し寄せ、フェリーはあっという間に超満員となる。10時15分に出航。次第に遠ざかるサンタ・マルゲリータ・リグレの街を眺める。やはり港町の美しさは、海上からでないとわからない。
 フェリーは半島に沿って南に向かう。山のあちこちに瀟洒な邸宅庭園が見える。住宅というよりも、別荘なのであろう。
 やがてフェリーは半島の南端近くで向きを変え、入江に入ってゆく。その入江もまた、カラフルな建物に覆われている。ここがポルトフィーノである。

 フェリーを降り、少しを巡る。見るからに豪華なクルーザーがそこかしこに停泊している。ポルトフィーノは、実は世界中の富裕層の隠れ家として現在人気の地であるらしい。

 港から小高い丘に登ってみよう。現れたのは、別荘?いやだ。いや、実はどちらも正しい。元はジェノヴァが建てた城だったが、ブラウンというイギリス人が買い取り、一時期別荘にしていたのである。
 ここから見たポルトフィーノの入江の景色は・・・素晴らしい。これで天気さえよければ、何も言うことがないのだが。
 今度は、城の搦手?から出て丘を下りてみよう。その麓には珍しい黄色の教会(サン・ジョルジョ教会)が建っている。

 昼食。と思ったが、やはり金持ちが集まるところだけあって、レストランは軒並み高い・・・。多くの人々と同様、私もこんな所に別荘を構えて優雅な隠遁生活をすることに憧れるが、どうやら現実には別荘どころか半日も過ごせないようだ(笑)。結局ピザとビールだけ口にして、早々に退散することに。

 サンタ・マルゲリータに戻ると、また少し歩いてみる。大きな教会を発見。その名もサンタ・マルゲリータ教会。町名の由来なのであろう。よく見ると、辺りも門前町のようになっている。が、シエスタにはまだ早い時間帯なのに、多くの店が閉まっている。この街にとって、まだシーズンオフなのだろうか?

 駅に戻る。14時1分、サヴォナ行きの列車に乗る。これは各駅停車だった。ふと気がつくと太陽がまぶしい。朝からずっと曇っていたのに、どうして今頃になって晴れるんだ!!!と呟いたところで、今更ポルトフィーノに戻る気力・体力はもはやない・・・私の気分は晴れないまま、列車は14時51分、ジェノヴァ・プリンチペに到着。今度は地上ホームである。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第12弾(ピサ→ミラノ)(12)

ジェノヴァ港
熱那

 プリンチペ駅前の広場にはコロンブス像が立っている。彼はスペインの後援であの大航海に出たのだが、出身はここジェノヴァだと言われている。

 駅前からバルビ通りをまっすぐ歩く。すると、右側に「王宮博物館」の旗が立った建物が現れる。通りの真ん中に「王宮」とは違和感があるが、ここは確かに「王宮」なのだ。
 元々はジェノヴァの有力貴族・バルビ家の屋敷であったものを、ジェノヴァがイタリア王国に吸収された後、王宮の一つとして使用されたそうだ。現在見学できるのは2階部分だけであるが、外観からは想像できないくらい内部は豪勢で、ダメ押しのように玉座もある。
 次いでテラスに出る。ここからはもちろん、を眺めることができる。だが、このテラスの真骨頂は、振り返った時にある。その時初めて、この建物の真の姿がわかるのだ。ふと日本の町家のことが頭に浮かぶ。あれも通りに面した玄関の狭さや地味さとはうらはらに、奥には大きく美しい庭や土蔵があったりする。

 王宮を出て、さらに通りを進むと、今度は神殿のような建物が現れる。しかしながら、これはれっきとしたキリスト教の教会である。

 教会を出て、さらに通りを進もうとしたその時、通りに異変があることに気づいた。デモである。デモ隊が向かう方角は、まさに私の向かおうとするそれであった。

 作戦変更。いったんプリンチペ駅に戻り、今度は地下鉄に乗ろうとするのだが、これが見つからない・・・。地下鉄駅は鉄道駅に直結しておらず、少し離れた場所にあるのだ。ようやく入口を見つけ出して地下鉄に乗る。

 フェッラーリ広場駅で下車。地上に出ると、駅名の通りフェッラーリ広場である。ここはジェノヴァの中心部であり、地域政庁をはじめボルサ宮ドゥカーレ宮など由緒ある豪奢な建物がずらりと周りを取り囲んでいて、さながら建物の博物館といった感じである。しかし、多くの建物が「現役」であり、美術館のあるドゥカーレ宮などを除いてはほとんど見学できない。これもジェノヴァの特徴と言えるだろう。

 フェッラーリ広場から港に向かって歩くと、すぐにサン・ロレンツォ教会が現れる。フィレンツェの教会を思わせる美しい外観の教会だが、ここも内部の見学はできない。
 しばらく歩いてに至る。港にはサン・ジョルジョという地下鉄駅があるのだが、もうしばらく散策を楽しみたいのでフェッラーリ広場へ戻る。今度はソプラーナ門を通る。旧市街の城壁門の一つだ。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第12弾(ピサ→ミラノ)(11)

ジェノヴァ行きFB(ラ・スペツィア駅)
4日目

ラ・スペツィア→ジェノヴァ

 長いようであっという間だったラ・スペツィア~チンクエテッレの旅を終え、さらに鉄路で北上を続ける。
 9時16分、ラ・スペツィア駅ジェノヴァ行きのFBが6分遅れで入線する。車内は、1列・2列のシートが並ぶ、一人旅には理想的な環境である。

 列車はラ・スペツィアの市街地をすぐに抜けて山にぶつかると、長いトンネルに入り、半島を横断する。トンネルを抜けるとチンクエテッレに入り、リオマッジョーレ、マナローラ、コルニ―リア、ヴェルナッツァを次々に通過する。その間、長いトンネルが続き、海の景色が見られるのはごくわずかである。そしてモンテロッソも通過。いよいよ未踏の地へ。

 この後もレヴァント、ボナッソーラと山に囲まれた、すなわちトンネルの間の狭い谷間に存在する駅が続く。
 リヴァ・トリゴソからようやく少し土地が開けてきて、やや大きな町セストリ・レヴァンテを通過。ここからは開けた海岸線が続く。

 だが、それもキャヴァリまでで終わり、再び山に囲まれた風光明媚な町が次々と現れる。海辺に建つお城が見えるゾアーリ、そしてやや大きな町ラパッロを通過。

 次の駅サンタ・マルゲリータ・リグレを通過すると半島を横断するためにいったん山道に入るが、カモーリから海岸に復帰する。一つ一つのトンネルは短くなっているもののなお続く。線路の上も断崖、下も断崖。

 ジェノヴァ・ネルヴィを通過。海辺の小さな駅だが、いよいよジェノヴァ市街に入ったと思われる。しばらく開けた海岸が続くが、ついに海を離れるとやや長いトンネルに入り、列車は徐行する。トンネルを抜けると、そこには都会の景色が広がる。そして10時4分、ジェノヴァ・ブリニョーレに停車。
 ブリニョーレを出るとすぐにまたトンネルに入るが、列車は徐行したままである。そしてトンネルを抜けると、ついに終点のジェノヴァ・プリンチペに到着する。10時12分。

 この「王子」を意味するプリンチペ駅は、駅舎の内装もさることながら、外観からも王子の住んでいそうな宮殿を想起させるのである。

続く
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