ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(14)

タンド鉄道橋
7日目
タンド線

 快晴だ。しかし、この日は海ではなく、山に向かう。ニース・ヴィル駅の一番はずれのホームに列車は入線していた。パンタグラフはなく気動車、3両編成。車内は座席が1列・2列に並んでいて、一人旅にはうれしい。車両の側面には"Train des merveilles"と書かれている。"merveilles"は、この列車が向かうメルヴェイユ地方を指しているのだが、フランス語で"merveille"は「驚異・奇跡」という意味でもあるので、「奇跡の列車」とも読める。さて、今日の旅にはどんな「奇跡」が起こるのやら。

 9時24分、列車が発車する。最初は東に向かうのだが、すぐに入るトンネル内で、ヴェンティミーリアへ向かう線路と早くも分岐して北に向かう。トンネルを抜けるとパイヨン川を渡り、大きな操車場に入る。操車場には気動車用の軽油?スタンドがあったりして、面白い。
 列車はその後もパイヨン川に沿ってニースの郊外を北に進むのだが、意外にトンネルが多い。9時37分、ドゥラップ・カンタロンに停車。対向列車を待つ。ここからはもう単線区間になるのだ。9時40分に発車。9時43分、ハルト・ド・フォンタニルに停車。近くに高校があるらしく、学生が一斉に下車する。しばらく進むと、山登りが始まる。ディーゼルエンジンが唸りを上げる。9時52分、パイユに停車。川は渓谷になる。谷の町レスカレーヌに停車。ちょうど10時だ。

 短いトンネルを抜けて、10時3分にトゥエ・ド・レスカレーヌに停車すると、今度は長い長いまっすぐなトンネルに入る。スピードは出るが、その分よく揺れる・・・。ようやくトンネルを抜けると、そこには渓谷のほとりの美しい街並みがあった。10時12分、ソスペルに停車。きっと観光地なのであろう、多くの乗客が降りてゆく。

 列車はしばらくこの渓谷に沿って走るが、またもや長くまっすぐなトンネルに入る。抜けると、これまた別の渓谷が現れる。ロワイヤ川である。そして、こちらの車窓からはわからないが、もう一本の線路が山の上方に並行するように走っている。やがて、渓谷のほとりにやや大きな美しい街並みが現れ、並行していたもう一本の線路といつの間にか合流する。10時27分、ブレイユ・シュル・ロワイヤに停車。あのもう一本の線路とは、ヴェンティミーリアからロワイヤ川沿いにやって来たものなのだ。

 列車はロワイヤ川に沿って進むが、標高がぐんぐん上がっている感じがする。10時44分、フォンタン・サオルジュに停車。美しい谷間の駅だ。列車はさらに渓谷を上る。しばらくすると、列車の左手に別の線路が現れる。どこの路線か?と思うが、そうではない。これは「未来」の線路なのだ。
 そうこうしているうちに、列車は左手に向かって川を渡り、トンネルに入る。トンネル内なので車窓からはまったくわからないが、トンネル内で線路は大きな円を描く。そしてトンネルから抜けると、渓谷を右手に見下ろす。そしてその右側には先ほど列車が通っていた、すなわち「過去」の線路が見える。つまり、列車は今「未来」の線路を走っている。線路のループ構造が、鉄道ファンのみならず多くの人々を惹きつける理由の一つは、時間のずれを、空間のずれとしてはっきりと見せてくれるからなのかもしれない。

 やがてループ区間も過ぎ、渓谷はますます標高を上げる。もはやループにはならないものの、線路は大きなS字を描きながら山を登り続ける。11時6分、サン・ダルマ・ド・タンドに停車。ここまで相当な標高差を上り詰めてきた列車はかなりお疲れであろうが、休む間もなくS字カーブを上る。11時13分、ラ・ブリギュに停車。そしてS字カーブのトンネルを抜けると、小高い丘に小さな塔の建ったが姿を現す。11時20分、ついに列車の終点であるタンドに到着する
 ニースから約2時間も山奥に来たのだから、行き止まりなのかと思いきや、そうではない。線路はさらに北に伸びており、イタリアのクーネオに通じている。クーネオからはさらにトリノを目指すこともできる。とは言え、旅の時間も限られているので、今回はタンドで折り返すことにしよう。

 タンドの駅前からちょっと散策する。ロワイヤ川沿いの町はそれほど大きくなく、すぐに町はずれに行き着いてしまう。もちろん、あの塔へは距離的には大したことがなさそうだが、上り坂がきつそうなので、今回はやめておく。
 町をぶらぶらしていると、いつの間にか線路の近くに来ていた。コンクリート製?のアーチ橋である。私は時計と時刻表を取り出して思わず見比べる。あと10分か・・・、暑いので早く涼しいところに行きたいが、我慢する。そして、ついにその時が来た。私が先ほど乗ってきた列車が、ニースへと折り返す。そのタンド駅を出発したばかり列車が、アーチ橋をゆっくりと渡ってゆく。こんな時は、やはり電線やパンタグラフのない気動車の方が美しい。

 何かをなし終えた気がしてほっとしたのか、お腹が空いてきた。よく見ると、タンドには町の大きさに比べてレストランが多い。喉も渇いていたので頭の中がワインでいっぱいになってしまい(笑)、ワインリストを店の前に掲げるレストランにホイホイと惹きつけられる。しかし、本能に基づく?店の選択は誤っていなかった。コルクを抜かずにワインを注げるという装置(最近は日本でも手に入るらしいが、2016年当時は入手できなかったはず)に関心しつつ、白とロゼと料理を堪能。
 腹ごなしに、町はずれにあるメルヴェイユ博物館に行く。地元の考古学博物館で入場料は無料だが、ディスプレイのやり方など、意外に凝っている。

 駅に戻る。14時30分過ぎ、ニースからやって来た列車が到着。これが折り返してニース行きになる。
 14時47分、ニース行き列車が発車する。S字カーブのトンネルを下ってラ・ブリギュ、サン・ダルマ・ド・タンドに停車する。穏やかなロワイヤ川の流れは、この辺りから急になってくる。

 そして、あのループ区間に差し掛かる。今度は「未来」が下の方に見える。往きには見ることができなかったが、線路の上にある山々の威容には心打たれるものがある。こうして列車はループトンネルを抜けて山を下る。

 15時24分、フォンタン・サオルジュに停車。列車はさらに渓谷を下る。この区間は幹線道路も並走しているが、線路は道路よりも高い位置にあるので、やはり眺めがよい。
 15時38分、ブレイユ・シュル・ロワイヤに停車。時間があれば、この町にも降りてみたい。

 ヴェンティミーリアへ向かう線路と分かれると、列車は長いトンネルを抜けてソスペル、さらに長いトンネルを抜けて16時7分にレスカレーヌに停車。渓谷はパイヨン川のそれに変わる。16時23分、ハルト・ド・フォンタニルに停車。今度は学生が一斉に乗車する。パイヨン川を渡ると、16時27分にドゥラップ・カンタロンに停車。そして南に進むと、最後にヴェンティミーリアから来た線路と合流してニース・ヴィルに到着する。16時40分。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(13)

ヴィルフランシュ駅
海鉄

 ロクブリュヌの中世の村から山を下りて駅に戻る。11時57分、予定よりやや遅れてニース行きの列車が到着したので、これに乗る。車窓はトンネルの黒または海の青で染められる。
 12時20分、ヴィルフランシュ・シュール・メールに停車。私はここで下車する。「シュール・メール」(海に面した)の名の通り、駅の中から海が見える。ヴィルフランシュは、東のサン・ジャン・カップ・フェラという小さな半島と西のニースに挟まれた入り江の奥にある。ニース・ヴィルからわずか2駅にもかかわらず、とても静かな(まだ夏のシーズンに入る前という事情もあろうが)海辺の村である。

 まずは西側の海岸を歩く。海水浴客もいるにはいるが、まだそれほど多くはない。だからランチタイムにもかかわらず、海辺の飲食店はガラガラだ。高級店はランチタイムでもびっくりするくらい高いので、「軽食」も提供しているカフェに入る。ところが、「軽食」たるカルボナーラがびっくりするくらいおいしい!
 海岸に出て入り江の奥を眺めると、そこにはまずビーチがあり、その上に線路がある。その線路の上を列車がちょうどヴィルフランシュに停車する。海岸リゾートと鉄道がみごとに溶け合う景色だ。

 今度は駅の裏手に回って坂を上る。山の中腹を通る幹線道路に行くためだ。を上から眺める。青のグラデーションを線路が囲む。こんな路線なら毎日でも乗りたい・・・。

 幹線道路に出ると、バス停に向かう。そこから81番の市バスに乗る。バスは、東のサン・ジャン・カップ・フェラに向かう。ところが、大勢の乗客が降りるのにつられて、目的地の1つ手前のバス停で降りてしまった・・・。が、結果的には美しい海と瀟洒な別荘の数々を歩きながら眺めることができたので良かったのかもしれない。
 しばらく歩くと、こうした別荘群の中でもおそらく「群を抜く」別荘に行き着く。それがロスチャイルド邸である。かつてヨーロッパ有数の富豪であったロスチャイルド家の別荘らしく、優雅な部屋の数々と庭園には感嘆するしかないが、それでもヨーロッパ諸侯のそれに比べるとつつましく見えてしまうのは、諸侯とも取引の多かったロスチャイルド家の「遠慮」だろうか?喉が乾いたので、喫茶室で一休み。束の間のひと時、大富豪気分?でヴィルフランシュ湾を眺める。

 帰りはロスチャイルド邸のすぐそばにあるバス停から、81番の市バスに乗る。16時を過ぎたところだが、もう夕方のラッシュ?らしくバスは非常に混んでいる。さらに道路も渋滞してくる。
 というわけで、ヴィルフランシュ駅近くのバス停で降りるつもりだったが、その手前のバス停で降りた。そして、これがまた当たる。西日がヴィルフランシュ湾の西側を照らす時刻だったから、そこを上から眺めるには良いタイミングだったのだ。そして、トンネルとトンネルの間の線路と駅の姿もよく見える。

 16時56分、名残惜しい気持ちでニース行きの列車に乗る。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(12)

ロクブリュヌ城から東側を眺める
6日目
息切

 天気は昨日とは打って変わって快晴。こんな日には、一刻もじっとしていられない。8時に出発。
 ニース駅の券売機で切符を買う。まずはローカル列車専用の券売機へ。画面こそ今風だが、操作は全てダイヤルで行うという何ともデジアナ融合なインタフェースなのである。このダイヤルの操作は慣れないと非常に難しい上に、駅を指定する前に割引の種類がたくさんあって、該当するものをまず選択しなければならないので(フランス国民ではなく、いわゆる「生産年齢」の範囲内にいる人であれば、この種の割引には全く該当しないのだが・・・)、すっかり面喰ってしまう。仕方なく、特急の切符も変える「高級な」券売機に行ってみる。こちらはさすがにタッチパネルで英語対応もしているので便利だ。
 ニース駅のホーム番号は1,2・・・ではなく、A, B...Gとなっていて、他の駅とは変わっている。理由はわからないが。

 8時50分過ぎ、マントン行きの快速列車が入線する。どっと人が乗り込むのだが、2階建てでキャパシティが十分なため、何とか座ることができる。列車は予定より5分遅れの8時55分に出発する。海も昨日とは打って変わって真っ青だ。この青い海を写真に収めてみたいのだが、トンネルが断続しているせいもあって、なかなか難しい・・・。列車は目的地であるロクブリュヌ・カップ・マルタンを通過。トンネルを抜けると後方にマルタン岬が現れる。ここでようやくまともな写真が撮れる。9時25分、カルノレに停車。ここで降りる。
 ここで約30分ほど待って、9時52分に反対方向のニース行き普通列車に乗る。再びトンネルを通り、9時54分にロクブリュヌ・カップ・マルタンに停車。ここで降りる。ちなみに、「カップ」とは英語の"cape"と同じで「岬」のことであり、カップ・マルタンとはマルタン岬のことなのである。
 数分後、ニースからの普通列車が到着する。それなら、最初からこっちに乗れば運賃も安くついたし(切符にはカルノレ経由の運賃がもちろん加算されている)良かったと思ったが、時すでに遅し。切符を買うときによく確認すべきなのである。

 ロクブリュヌの町は、この辺りの町と同様に海に面した山の斜面に作られている。私はこの斜面をひたすら登っていくのだが、想像以上に傾斜がきつい・・・。階段も多い。こうして息を切らしながら登り続けること50分。たどり着いたのは、ロクブリュヌの旧市街。というより、中世以来の村、と呼ぶのが正しいようだ。
 坂道を登りきって疲れ果てていた私は、その中世の佇まいに感動するよりも、狭くて細い坂道を見て、さらに息苦しくなってしまった(笑)。そしてどこか開けた場所を求めて彷徨う。
 村の中心部に城があった。だいぶ朽ち果ててはいるが、が残っている。その塔の上に登ると、そこにはまたもや息の止まりそうな光景が待っていた。東はモナコ方面正面は村の全景とマルタン岬。これらを説明するのに言葉は不要である。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(11)

ニース・ヴィルに到着
ヴェンティミーリア→ニース

 早々にホームを離れると切符売り場に向かう。予想通り、ここではニースまでの切符を買うことができた。既にニース行きのSNCF(フランス国鉄)の列車は既に入線しているし、出発まで時間もないので、また早々にホームに向かう。

 16時35分、ニース行き列車が出発する。各車両は半分が2階建てになっていて、意外にキャパシティがある。このことは、後日実感することになるだろう。
 列車はすぐにロイア川を渡ると、ヴェンティミーリアの旧市街が丘の上に見える。その丘の下のトンネルを抜けて海岸を走る。だが、空が曇っているのと、トレニタリアの列車以上にSNCFの列車の窓が汚いため、写真を撮っても意味がないほどだ・・・

 列車は、気づかないうちに国境を越え、16時44分にフランスのマントン・ガラヴァンに停車。ついにフランスに足を踏み入れたのだ。警官が車内を巡回するところが、唯一国境の駅らしさを感じさせる。駅の周辺はリゾート地の雰囲気に満ちており、海岸と反対側の丘の斜面には上まで街並みが続く。
 列車はマントンの市街地の中を通り、16時50分にマントンに停車。次の駅カルノレを出ると真ん前に丘(マルタン岬)が立ちはだかるのだが、この丘にも街並みが上まで続き、まるで巨大な屏風のように見える。列車は丘の下のトンネルを抜ける。

 16時58分、ロクブリュヌ・カップ・マルタンに停車。この駅については、いずれ書くことになるだろう。しばらくすると、長いトンネルに入る。そしてトンネルの中で駅に停車。17時4分、ここがあのモンテカルロである。この駅についても、いずれ書くことになるが、ここではサンレモで感じたような驚きや感慨があったことだけを記そう。
 ようやくトンネルを抜けると、17時9分、カップ・ダイユに停車。ここからは海岸がなくなり、断崖とトンネルが交互するようになる。17時17分、ボリオ・シュール・メールに停車。造船所のある港、そして沖に大型客船が停泊する景色が素晴らしいが、先に述べた事情で良い写真が撮れなかったのが残念だ。

 列車は半島であるサン・ジャン・カップ・フェラを横切って、入り江の奥にあるヴィルフランシュ・シュール・メールに停車、17時20分。この駅についても、いずれ書くことになる。
 ヴィルフランシュからすぐにトンネルに入り、抜けたところはもうニースの市街地である。17時23分、ニース・リキエに停車。そして列車は市街地を横切り、また小さなトンネルに入ると、右から来たタンド線(これについても、いずれ書くことになる)と合流すると、ついに終点のニース・ヴィル駅に到着する。17時30分。構内にはソテツらしい木も生えていて、南国ムード満点だ。駅舎はこの当時(2016年5月)工事中だったらしく、使用できる通路が限られていた。
 ホテルは駅前の狭い路地にあって、やや迷ったが、ようやくチェックイン。長い1日が終わる。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(10)

ボルディゲーラ駅
アルベンガ→ヴェンティミーリア

 アルベンガでも多くの乗客が降りる。対向列車を待って発車。15時11分。
 すぐにチェンタ川を渡ると、しばらくはビーチが続くが、次第に磯へと変わり、トンネルが断続する。山肌に「ALASSIO」の文字が現れ、やや大きなリゾート町に入る。15時17分、アラッシオに停車。

 またしばらくビーチが続くが、ライグエーリアからトンネルに入り、抜けてアンドーラを通過。磯の景色がしばらく続いたかと思うと、またビーチとなる。15時30分、ディアーノ・マリーナに停車。

 ディアーノを出るとすぐに長いトンネルに入る。抜けて一瞬だけ海岸が現れたかと思うと、すぐにまたトンネルに入り、それを抜けたところでインペリア・ネオリアに停車。15時36分。ここでとうとう雨が降り出す。対向列車の通過を待って、15時40分に発車。
 ようやく町の景色が現れる。なかなか大きな町だ。列車はインペーロ川を渡ると、徐行したまま進み、ポルト・マウリーツィオに停車。15時43分。その名の通り港がすぐそばにあるが、近隣の町と同様、ここもヨットハーバーである。

 この先もトンネルと海岸が交互に現れるのだが、次第にトンネルの方が長くなる。そして長いトンネルを抜けたところでタッジャ・アルマに停車。15時53分。アルマの町の景色もわからないまま、列車は発車するとすぐにトンネルに入る。
 トンネルの中で列車はスピードを上げ、やがて徐行する。そして、16時ちょうど、サンレモに停車。西リヴィエラを代表する、音楽祭でも知られる風光明媚な町の玄関口は、今やトンネルの中なのである。

 サンレモを出てしばらくして、ようやくトンネルから抜け出す。また海岸とトンネルが交互して現れる。16時8分、ボルディゲーラに停車。いつしか雨はやんでいたが、空は曇ったままだ。
 しばらくビーチが続くが、列車は少し内陸に入ってネルヴィア川を渡ると広い構内線に入る。と同時に車内の照明が一瞬消える。これはデッドセクションなのだろうか?そう考える間もなく、列車はホームに滑り込む。16時17分、ついに終点のヴェンティミーリアに到着する

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(9)

フィナーレ→ピエトラ
サヴォナ→アルベンガ

 サヴォナでは乗客の多くが入れ替わる。列車は14時27分に発車。大きく右にカーブすると、港からの引き込み線が合流して広い構内線となる。しばらく海岸沿いを走るが、別の港に向かう引き込み線と分岐すると内陸に向かい、長いトンネルに入る。
 トンネルを抜けると14時35分にスポトルノに停車するが、すぐまたトンネルに入る。
 そしてこのトンネルを抜けるとフィナーレ・リグレに停車、14時42分。またまたトンネルに入ってしまうが、そこを抜けるとしばらくは海岸を走る。海辺のリゾートの景色が続く。

 14時50分、ピエトラ・リグレに停車。既に単線区間になっているため(サヴォナから?)、対向列車を待つ。14時57分に発車。クルーズ船ばかりが停泊する港が見える。15時1分、ロアノに停車。
 サヴォナからずっと徐行が続いていたのだが、この辺りからようやくスピードが出てくる。やがて少し大きな町に入る。15時8分、アルベンガに停車。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(8)

ヴェンティミーリア行き快速(ジェノヴァ・プリンチペ駅)
ジェノヴァ→サヴォナ

 ジェノヴァ・プリンチペ駅に降り立つのは約1年ぶりである。西を向いても東を向いても丘に囲まれた宮殿のような駅舎の中で、しばし休憩と昼食をとる。
 この駅でニースまでの乗車券を買おうとしたが、それは難しかった。なぜなら、それは特急列車の指定券とセットでなければならず、その列車は夕方までないのである。仕方なく、フランスとの国境の駅・ヴェンティミーリアまでの乗車券を買う。その先のことは、ヴェンティミーリアに着いてみなければわからない。

 13時43分、ヴェンティミーリア行きの快速列車が入線する。始発は、やはり隣のジェノヴァ・ブリニョーレである。客車を牽引する機関車には落書きが・・・。始発でないこともあり、車内はけっこう混んでいる。

 列車は、発車するとすぐに西の丘を貫くトンネルに入る。トンネル内でミラノ・トリノ方面への特急専用線と分岐すると、トンネルを抜ける。そこにはジェノヴァの新しい港と市街地が広がる。13時48分、ジェノヴァ・サピエルダレーナに停車。ここでミラノ・トリノ方面への在来線と分岐する。列車はポルチェヴェラ川を渡り、港と大きな工場を通り抜ける。荷物の積み降ろしのための埠頭に通じる引き込み線がいくつも分岐する。13時55分、ジェノヴァ・セストリポネーテに停車。列車が進むにつれ工場、コンテナ基地、住宅地、ヨットハーバーなどが次々と入れ替わるが、そこが港であることには変わりがない。ジェノヴァは現在でも巨大な港なのだ。14時3分、ジェノヴァ・ヴォルトリに停車。ジェノヴァ市街はここまでだからか、多くの乗客が降りる。列車はしばらく停車。

 14時8分、列車が発車する。ジェノヴァの市街地を抜けたのだから、これからは美しいリヴィエラ海岸の景色が続くことを期待していたのだが、実際はそうではなかった。西リヴィエラの鉄路では大幅な改修が行われていて、海沿いの鉄路が、やや内陸の山地を貫くトンネルへ置き換えられようとしている。私が乗車した2016年5月はその改修の真っただ中にあった。だから、これから数回にわたって記すことになる景色や駅には、2019年現在ではもう見ることができないものも含まれる。あらかじめご了承いただきたい。

 さて、話をジェノヴァ・ヴォルトリ発車後に戻そう。列車は海岸に向かわず、トンネルを突き進む。港町・アレンツァーノではトンネルから抜け出したかと思うと、山側にある駅を通過してすぐにまたトンネルに潜る。同じような感じで、コゴレート、ヴァラッツェ、チェッレ、アルビソーラといった港町を、まるで息継ぎのように通り抜けてゆく。
 アルビソーラを通過して入ったトンネルを抜けると、列車は徐行を始める。右から線路が合流。これはトリノからフォッサノを経由して山間部を通ってきたものだ。次いで川を渡ると大きな街に入る。14時24分、サヴォナに停車。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(7)

ロンコ→ジェノヴァ
アレッサンドリア→ジェノヴァ

 アレッサンドリアに7分停車した後、列車は11時31分に発車する。すぐに分岐があるが、この列車は直進する。右側に分岐した路線は、その先でさらに2路線に分岐する。ポルミダ・ディ・スピーニョ川を渡ると、また分岐があり、ここも直進する。ここを左に分岐すると、ミラノへと向かうことになる。列車は田園地帯を直進して、11時43分にノヴィ・リグレに停車する。

 列車はさらにしばらく南東に直進するが、やがてスクリヴィア川の峡谷がそれを妨げるように現れると、川に沿って南に進む。対岸の丘の麓にきれいな町が見える。11時49分、セッラヴァッレ・スクリヴィアに停車。町の中心部に架かる橋をゆっくり通過すると対岸に線路が現れ、やがてその線路は川を渡ってこちらと合流する。合流してきたのはミラノ方面から来た特急専用線で、前回の旅ではこの線路を通ってジェノヴァからミラノへと向かったのであった。そして列車はアルカータ・スクリヴィアに停車する。11時57分。

 アルカータからは、この列車も特急専用線に入る。これは前回の旅でジェノヴァからミラノへと向かったのと同じ線路だ。在来線のリゴロソ駅付近を通過すると長いトンネルに入り、蛇行した峡谷をショートカットする。そしてトリノを中心とするピエモンテ州に別れを告げ、ジェノヴァを中心とするリグーリア州に入る。トンネルを抜けるとロンコ・スクリヴィアに停車。12時7分。ホームが川に架かっている。また駅の直前に分岐があり、一部のホームが分岐した線路上にあったりして、なかなか複雑な構造をしている。

 ロンコを出ると、すぐにトンネルに入る。このトンネルは相当に長い。抜けると、もうスクリヴィア川ではなく、ポルチェヴェラ川の峡谷に変わっていた。川の対岸には在来線が見える。短いトンネルをいくつもくぐると、次第にジェノヴァの市街地が近づいてくる。在来線のジェノヴァ・リヴァローロ駅付近で川を渡り、大きな操車場を通ってまたトンネルに入る。列車はトンネルの中で徐行を始める。トンネルを抜けると、ジェノヴァ・プリンチペに停車。12時29分。この列車の終点は次の駅ジェノヴァ・ブリニョーレなので、私はここで下車する。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(6)

ジェノヴァ行き快速(トリノ・ポルタ・ヌオーヴァ駅)
トリノ→アレッサンドリア

 ポルタ・ヌオーヴァ駅に戻ると、荷物を受け取り、切符を買ってホームに向かう。そこにはジェノヴァ行きのRVが既に入線していた。10時30分の出発予定であったが、2分遅れて発車する。この列車はポルタ・スーザに戻ることなく、まっすぐ南に進む。広い構内線や操車場をゆっくりと通り抜けると、10時39分にトリノ・リンゴットに停車。この先は郊外の景色になり、列車のスピードも上がる。

 モンカリエリの手前でピエモンテ州西部に向かう路線と分岐すると、ポー川を渡り、東へと進む。あまりにスピードが出るので、よく揺れる・・・。ヴィッラノーヴァを過ぎると山道に差し掛かり、丘の麓の村をいくつも通過。白い牛の姿も見える。やがて平地に戻り、少し大きなドゥオーモが現れると街に入って徐行。11時6分、アスティに停車。多くの乗客が下車する。

 列車は、ピエモンテ州南部に向かう路線と分岐して、さらに東に向かい、タナロ川に沿って進む。やがて、北から来た線路と合流してタナロ川を渡ると、大きな街に入る。11時24分、アレッサンドリアに停車。
 いかにも「アレクサンデル」(英語ではアレキサンダー)にちなんだと思われるこの町の名の由来については、この町出身のウンベルト・エーコが、小説『バウドリーノ』の中でフィクションを交えながら説明している。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(5)

映画博物館・展望台から
5日目

名残

 トリノを、そしてイタリアを発つ朝になった。思えばトリノに来てからまだ一度も青空を拝んでいないのであるが、この朝はついにそれが現れたのだ。そこで私は、ここ数日考えていた計画を実行に移すことにした。

 ホテルをチェックアウトすると、まず4番トラムでポルタ・ヌオーヴァ駅に向かう。駅のロッカーに荷物を預けると、また4番トラムに乗って折り返し、15番トラムに乗り換える。現代的なデザインの4番トラムと異なり、15番トラムはレトロ調のオレンジ色の車体である。ポー通りで下車すると、まっすぐにあの建物に向かう。あの建物とは、そう、映画博物館だ。

 9時のオープンと同時に中に入る。もうトリノカードは使えないから、普通にチケットを購入する。ただし、展望台のみのチケットである。エレベーターに乗る。もはや驚くことはないが、吹き抜けになった映画博物館は、いつ見ても幻想的だ。数分で展望台に到着。

 そこに現れた景色は、予想通りでもあり、予想以上でもあった。トリノ市街地の背後に聳える、雪で覆われたアルプスの山々。その上には真っ青な空が広がる。ここにもう一度来て良かったと心から思う。これがトリノの、そしてイタリアの最後の絶景である。

 ちらと時計を見て、踵を返す。シンデレラおじさんは、慌ただしくかぼちゃ色のトラムに乗って駅に向かう。

続く
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