ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(16)

カタルーニャ音楽堂(2).jpg
灰男

 この日泊まったホテルは、バルセロナの中心部ではなく、空港近くにあった。そのことが、その夜起きたことを悲劇にもしたし、一方で出費を最小限に抑えたとも言える。

 前述の通り、この日の出発は朝遅く、それゆえに夜はどこかに行こうという気持ちが強かった。それでホテルに着くや否や、ネットでとあるチケットを買ったのだ。そこから、私のスケジュールは一気にタイトになった。

 まず洗濯。ホテルの周辺は新しい造成地のようで、コインランドリーなどなかった。それで、1月ばかり前の記憶を頼りにコインランドリーの旅に出かける。これが15時過ぎ。地下鉄を乗り継いで約1時間、コインランドリーは記憶通りの場所で、期待通りに営業していた。無事に旅を終えてホテルに戻るともう18時を回っていた。

 少しばかり休憩して、再びホテルを出たのは18時30分過ぎ。またもや地下鉄を乗り継ぎ、1号線のウルキナオラ駅で下車。駅周辺の通り(ライエタナ通り)の豪壮な建物群を眺めながら時を過ごす。ここでファストフードでも何でも食べておけばよかったのだが、それは後知恵に過ぎない。その時は何も知らなかったのだから。

 20時過ぎ、通り沿いでひときわ異彩を放つ建物に入る。カタルーニャ音楽堂だ。このバルセロナでも屈指の音楽の殿堂で極上のひとときを過ごすのが、この夜の私の目論見だった。数フロアにわたって積み重なる観客席、豪華絢爛な天井とシャンデリア、窓には凝った意匠のステンドグラス。夢の空間が、目の前に現出している。

 20時30分、いよいよ開演する。幕が上がり、ステージ上に女性が現れて声を出し始める。「おや?」それは歌ではなくセリフだった。
 実は私はクラシックのコンサートに来たつもりだった。ところが、これはオペラだったのだ。先ほどネットでチケットを買った時、英語の説明があったかどうかすら覚えていない。もしかするとスペイン語かカタルーニャ語の説明しか見ていなかったのかもしれない。私にとって日付と時間がわかればそれでよかったのだから。
 だが、そんな勘違いはもはやどうでもよかった。一流の歌と演技と演奏が、見事に設計された劇場の音響効果を通して私の魂を揺さぶり続ける。

 時はあっという間に過ぎた。オペラ『ウリッセの帰還』は大団円を迎えたが、カーテンコールは鳴りやまない。私はふと時計を見る。0時を過ぎている!!私の心の中で鐘が鳴り響く。「もう帰らねば!」

 まだ興奮の冷めやらぬ劇場の人波を潜り抜けて外に出る。地下鉄は既に終電の時刻を過ぎている。一方、この日は朝食以外には洗濯の間にパンを少し頬張っただけで、他には何も食べておらず、頭の回転も鈍い・・・。それでもウルキナオラ駅のところで左折してカタルーニャ広場に出るだけの知恵は残っていた。

 カタルーニャ広場から出発する空港行きバスの最終便は0時30分発。何とかこれに間に合う。乗客は私ともう一人しかいない。深夜で交通量が少ないからだろう。気持ちが落ち着いたので、念のため靴を確認する。もちろん脱げてはいない(笑)。バスは昼間ではあり得ないくらいに飛ばす・・・。おかげで、通常なら30分程度かかるところを20分足らずで空港に到着。
 バス代は約6ユーロ(2017年時点)だから、深夜時間帯のタクシーを使うよりはるかに安くついた。だが、空港からホテルまでは少し距離があるし、徒歩で行くのも困難である。そのため空港からはタクシーに乗ろうとしたのだが、バルセロナ空港は深夜も到着便が多く、タクシー待ちの行列が恐ろしく長い・・・。それでも供給量も多いため、この長蛇の列もぐんぐんはけてゆく。こうして1時30分過ぎには私もホテルに帰還する。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(15)

バルセロナ・サンツに到着.jpg
ジローナ→バルセロナ

 ジローナを発車後、まっすぐに南の郊外に出るとAVE専用線が右へと分岐してゆく。そして列車はフォルネルス・ド・ラ・セルヴァに停車。11時44分。赤い壁の2階建て駅舎が印象的だ。11時52分、カルデス・ド・マラヴェッラに停車。ここの駅舎は3階建てで、1階が黄色、2階より上が黄色の枠に赤の壁になっている。
 列車はここから南西へと向きを変える。やがて先ほど分岐したAVE専用線が姿を現すが、今度は立体交差して、これを繰り返すようになる。ちょうどその立体交差のところでマサネット・マサナスに停車。12時3分。

 マサネット・マサナスからはいよいよバルセロナ近郊線に入る。左へと分岐していくのは1号線で、この列車は2号線Nort(北)を進む。次の駅オスタルリックには12時8分に停車。丘の上には城が見える。この辺りは狭い谷間で、AVE専用線や高速道路も並走している。次いで12時12分、ブレーダに停車。突如として現れたモダンな駅舎にびっくりする。
 12時20分、サント・セローニに停車。ここまでは各駅停車だったが、ここからは快速運転となる。大きな住宅地も増えてきて、大都市圏に入ったのだと実感する。12時37分、グラノジェルス・セントレに停車。貨物基地に隣接している。ここは2号線Sud(南)と8号線の基点でもある。グラノジェルス・セントレを出てすぐにAVE専用線が並走してきてトンネルに入ると、そのトンネルの中に次の駅モントメロがあるのだが、ここは通過する。グラノジェルス・セントレの手前から徐行していたこの列車だが、ここからはさらにスピードを落とす。次の駅モレット・サント・フォストを通過すると、8号線が右に分岐してゆく。

 12時57分、サント・アンドレウ・コムタルに停車。ここからはバルセロナの中心部になる。マサネット・マサナスで分岐した1号線が左から合流してくる。そしていよいよ地下に入る。13時2分、次の駅エル・クロット・アラーゴに停車。13時7分、パセジ・ダ・グラシアに停車。そして13時10分、ついに終点バルセロナ・サンツに到着する。ここまで地下を通ってきたため、ターミナル駅に到着したという実感がいまいちわかない。

 いったんホームを離れて階上に出てみると、ここには20近い数のホームが存在することがわかり、駅の入口も大きく、確かに巨大なターミナルなのだとわかるのだが、マルセイユ・サン・シャルル駅のように目の前にずらりと列車が並ぶ光景に比べると、やや寂しい気がしないでもない。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(14)

バルセロナ行き列車(リャンサ駅).jpg
6日目
リャンサ→ジローナ

 朝、雨が降っていた。本当は早めに出発してバルセロナで観光する時間を増やしたかったのだが、この天気なら、行きたいところが少なくなる。それで遅めに出発することにした。幸いにして雨はやみ、悪路で傘をさすことなく歩ける。

 10時43分、バルセロナ・サンツ行きの列車で出発。一山越えてヴィラジュイガ、そして11時ちょうど、フィゲラスに停車。乗客が大きく入れ替わる。
 フィゲラスの郊外を南に進む。辺りは畑。すると右から線路が合流してきた。新幹線専用線だ。フランスのTGVと接続するRENFEの新幹線AVEは、ピレネー山脈を越えるとフィゲラスに停車するのだが、どういうわけか駅は街の西側にあり、在来線のそれとは異なる。そして、フィゲラス南郊のこの地点でついに在来線と合流する。合流したところで、ヴィラマーラに停車。11時5分。

 列車は以後も森や野原の広がる中を南に進み、各駅に停車する。11時22分、少し大きな町・フラサに停車。列車はここから南西へと向きを変える。しばらくすると、畑の中に町が見えてきた。11時31分、セルラに停車。駅前に城のような工場のような不思議な建物があり、高い煙突様の塔が2本建っている。今は市役所らしいが、きっと由緒ある建物なのだろう。

 ここから山道に入り、カーブが続く。テル川の渓谷を抜ける。やがて渓谷はその幅を広げ、ついには街となる。ジローナだ。大聖堂を左手に見て川を渡ると、ジローナに停車。11時39分。AVEも停車するこの駅でも、やはり乗客が大きく入れ替わる。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(13)

コリウール城(1).jpg
水城

 コリウールの駅前に出てみたものの、私はどこに行ったらよいかわからず、しばらく思案していた。なぜなら、この町のことは日本のガイドブックには書かれておらず(2017年時点)、何の情報も持ち合わせていなかったからだ。それなら、なぜこの駅に降りてみたかったのかと言えば、前日に列車でここを通った時、車窓に飛び込んできた入江とそれに面する立派な建物に思わず惹かれたからだ。
 いつまでも考えていても仕方ないので、とりあえず駅から続く一本道を通って坂を下りる。すると、わずか数分でコリウールの街に出る。想像以上に賑わっている街だ。時間的にもちょうどよいので、まずは昼食とする。メニューを見ると、ラッキーなことにブイヤベースがあるではないか!ここは「南仏」であったなあと納得しつつ、迷わずそれを注文、メインはお昼なのであまりがんばらずハンバーガーとする。お供はロゼ。

 すっかり満腹になってレストランを出た後、ふと見ると街のあちこちにある旗が立っていることに気が付く。黄色と赤の縞模様の旗、もちろんフランス国旗でもスペイン国旗でもないが、どこかで見覚えのある旗。しばらく考えて、それがカタルーニャの旗であることを思い出した。なぜここに?

 そんな疑問を抱えつつ、街を散策する。入江の北西側が特に賑わっているが、海辺から一歩中に入ると狭い路地になっていて、その両側には土産物店やギャラリーが多い。街外れには教会が建っていて、その先には岬(たぶん昔は島というか岩礁のようなところだったのだろう)が突き出ている。そこから突堤が突き出ているので、行ってみる。その突堤から振り返った街の姿に、思わず息を吞む。これは、前日車窓から見た景色をちょうど反対側から見たものだったからだ。入江の北西側の一角が凹んでいて、おそらくそこは港なのだろう。その港を挟むように2つの建物が建っている。一つは街外れの教会で、この塔が灯台の役割を果たしていたのだろう。そして、その反対側に聳えるのは大きな城だ。

 そうなると、次に行きたくなるのはその城だ。幸いなことに、コリウール城は観光地として開放されていたので、さっそく入る。城内の建物はよく保存されていて、内部の構造もけっこう複雑だ。
 今では個人用のクルーザーくらいしか停泊していないこの町に、なぜこんな立派な城が建っているのか?そして、カタルーニャの旗が立っているのはなぜか?その答えを探っていくと、意外な歴史に気が付く。ここコリウールを含む一帯はもともとカタルーニャの一部であり、1659年にフランス・スペイン間で結ばれたピレネー条約以前はスペイン領であった。さらに、このカタルーニャの北部においては、ペルピニャンに取って代わられる以前は、コリウールがその中心地であった。
 このことはさらに、別の疑問にも答えてくれる。ペルピニャンの北にある駅から、駅名表記にフランス語以外もう一つ加わっていることを私は既に見ていた。この表記はカタルーニャ語であったのだ。
 やがて、私は城の屋上に出る。そこからはコリウールのと、を一望することができる。

 海に面したこの美しい古都にすっかり満足することができたものの、私には一つ心残りがあった。それは天気だ。明るいパステルカラーの建物を輝かせる晴れ間が見たい・・・。天気の回復をしばらく待った。
 17時過ぎ、ようやく雲の隙間に青空が顔をのぞかせる。前日のような快晴の下ほどではないが、が華やいだ気がする。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(12)

セルベール行き列車(セルベール駅).jpg
フィゲラス→セルベール→コリウール

 フィゲラス駅に戻り、ポルト・ボウまでの切符を買おうとした私は、ポルト・ボウから1駅先、フランス側のセルベールまでの切符が買えることに気が付いた。そしてもう一つのこと、駅の電光掲示板で北方面への列車はすべてセルベール行きになっていることにも気づいた。そして、ここでようやくスペイン・フランス国境を越える列車の「約束事」を理解した。
 すなわち、フランス側から来た列車はすべてスペイン側のポルト・ボウ止まりとなるが、折り返しは回送となる。一方、スペイン側から来た列車もすべてフランス側のセルベール止まりとなるが、折り返しは回送となる。したがって、フランスからスペインに行く乗客は必ずポルト・ボウで乗り換え、スペインからフランスに行く乗客は必ずセルベールで乗り換えることになるのだ。これが、前日にポルト・ボウで浮かんだ疑問への解答である。

 11時29分、セルベール行きの列車が到着する。ここで多くの乗客が降りたため、車内はガラガラだ。
 列車はまっすぐに北東に向かってヴィラジュイガに停車。そしてなだらかな山地を越えてリャンサに停車する。明るい色の海岸通りを横目に見ながら北上し、2つのトンネル区間に挟まれた入江をさっと過ぎて短い鉄橋を渡るとコレラに停車。そして、短いトンネルを抜けると、早くもポルト・ボウに停車する。しかし、ここでは降りることはなく、そのまま乗り続ける。

 以前も書いた通り、スペインとフランスとでは線路幅が異なる。そのため、この国境を相互の列車が乗り入れているということは、両方の規格の線路がこの区間に並んでいるのだろう。さらには、ポルト・ボウを出たところでデッドセクションを通過する。様々なレベルで2つの規格が入り乱れているこの国境区間は、私の想像力を刺激せずにはいられない。
 そうこうしているうちに列車は国境のトンネルを越えて、セルベールに到着する。11時57分。

 ホームのすぐ近くに券売機があったポルト・ボウとは異なり、セルベールではいったん改札を出て駅の窓口で切符を買わねばならない・・・。切符を買うと、今度は別のホームに行く。そこにはアヴィニョン行きの列車が既に入線していた。

 列車は12時34分に発車。短いトンネルをいくつも抜け、明るい色の街を通ってバニュルス・シュール・メールに停車。次いでポール・ヴァンドルに停車すると、12時57分、コリウールに停車する。そして私は、ここで下車する。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(11)

ダリ劇場美術館(2).jpg
奇才

 フィゲラスの駅前から噴水のある公園を2つ通って西に少し歩き、ランブラ広場に出る。とても気持ちの良い眺めなので、このままずっと散歩したくなる。
 そんな時、なぜか直立せず斜めに立っている小さなモニュメントが見える。周りの地面に描かれた模様がモニュメントに映し出されるとそれは一つの顔になる。そうだ、私はこの人に会いに来たのだった。

 広場から少し北に歩くと、それは姿を現す。真っ赤な城壁?とその上に載った卵。おっと、ここは裏手だった。正面に回ると今度は卵の銅像?が立っている。しかし、これはダリ・ワールドのほんの入口に過ぎない。ダリが故郷に建てた美術館の中で、世界中から来た観光客と共に私も驚かされ、そして楽しむ。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(10)

バルセロナ行き列車(リャンサ駅).jpg
5日目
リャンサ→フィゲラス

 朝、部屋を出てフロント館に行き朝食。そしてそのまま出かけてリャンサ駅へ。
 8時42分に到着予定のバルセロナ行き列車は、数分遅れで到着。これに乗る。
 列車はなだらかな山地を越えてヴィラジュイガに停車。ここからは平地となり、真っ直ぐ南西に向かう。
 やがて市街地に入ると大きく左カーブしてフィゲラスに停車。8時57分。到着時刻は予定通りだ。私はここで降りる。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(9)

バルセロナ行き列車(ポルト・ボウ駅).jpg
ポルト・ボウ→リャンサ

 ホームに降り立ったはいいものの、このホームは1面1線で、次に乗るべき列車は見えない。ホームの壁にはいくつものドアが並んでいるのだが、その中はホームに沿って細長い通路になっており、待合室が点在している。下車してくる数少ない乗客を受け入れるにはあまりに広い。待合室を挟んで東側のドアを出るとSNCF(フランス国鉄)のホームであり、西側のドアを出るとRENFE(スペイン国鉄)のホームだ。
 待合室の傍らに切符の自動券売機があり、時刻表も貼りだされている。だが、時刻表はRENFEのものしかなく、自動券売機もRENFEの切符しか売っていない。私はポルト・ボウまでの切符しか持っていないから、ここでRENFE区間の切符を買う。今の私にはそれで十分用は足りるのだが、ここからフランス側に行くにはどうすれば良いのだろうか?この疑問が氷解するのは翌日のことだった。

 西側のドアを出てRENFE側の駅に入ると、そこには大きな屋根に覆われた3面の広いホームが現れる。
 どうせなら、こちらのホームにSNCFの列車が乗り入れてくれるとありがたい気もするが、そうならないのは、乗客の越境管理(SNCFホームには到着する列車を待ち構える警官の姿があった)や駅舎の管理といった問題以前に、線路の幅が違うという根本問題があるからだろう。ポルト・ボウに乗り入れたSNCFの線路は1435mm(標準軌)であるのに対し、RENFEの線路幅は1668mmという独自規格なのである。

 バルセロナ行きの列車は、通路・待合室直結の1番線ではなく、6番線に入線する。14時33分、バルセロナ行き列車が発車する。すぐに短いトンネルを抜けると、小さな入江が現れる。14時37分、コレラに停車。
 谷川に架かる鉄橋を渡り、また短いトンネルを抜けると、またまた入江が現れる。そしてまたまたトンネル。抜けると、風光明媚な海岸通りが一瞬だけ現れるが、すぐに内陸に入りかけたところでリャンサに停車。14時42分。私はここで下車する。

 ホームは2面3線あって広いが、駅前には駐車場以外に特に目立つものもないこの駅に降りた訳は、たまたまこの町の宿が空いていたからという理由しかない。駅から町まで歩くのはさほど遠くないものの、歩道がほとんどなく、とりわけキャリーバッグを引きずる身にはつらい。また、古い町なのだろう、道が入り組んでいて、初めての人間にはちょっとした迷路だ。宿の場所を見つけるのに一苦労だった・・・(もっともこうした「迷路」こそ魅力でもあるのだが。)

 宿は通常のホテルではなく、ゲストハウスのようなところで、フロントや食堂のある建物ではなく、その近所の「離れ」のような場所だった。おそらく夏のバカンスシーズンに長期滞在するような場所なのであろう。
 夏にはまだ早かった(5月)が、海岸に行ってみた。もちろん泳ぎたかったわけではなく、こんな場所ならコインランドリーがあるのではないかと探しに行ったのだ。確かにビーチや港はあった。しかし、オフシーズンで多くの店が閉まっており、コインランドリーもなかった・・・。部屋に帰って、久しぶりにセルフサービスで洗濯する。
 夕食は、他の宿泊客が少なかったせいだろう、宿の食堂ではなく、近所のレストランを指定された。サラダ、スパゲッティ、サーモンのムニエルというどちらかというとイタリアンな感じの料理だったがとても美味しかった。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(8)

ポルト・ボウ行き列車(ポルト・ボウ駅).jpg
ペルピニャン→ポルト・ボウ

 ペルピニャンでは7分停車した後、12時44分に発車する。すぐにいくつもの線路が右へと分岐してゆく。これらにはピレネー山中へ向かうローカル線も含まれているが、何と言ってもTGV専用線がそのメインである。しばらくその存在を忘れていたが、ニームの手前で合流して以来、スペインへと向かうTGVと同じ線路を走っていたのだ。しかし、後述するようにこの先はカーブが連続するようになるから、さすがにTGVの高速運転には向かないのであろう。
 列車は早くも郊外に出る。オレンジ色の屋根を戴く家屋が続くきれいな田園風景だ。12時53分、郊外の町・エルヌに停車。列車は南西へと向きを変える。さらに田園風景が続き、馬が放牧されている牧場も見える。12時58分、アルジュレ・シュル・メールに停車。街中の塔が印象的だ。

 さらに南西へ。そしてついに海が姿を現す。短いトンネルを抜けた先に駅。13時3分、コリウールに停車。ここでも3分停車した後、13時6分に発車。その直後、景色が急に開ける。入江、それに面したオレンジ色の街、その中心には城。「もっと見たい」と思った瞬間、無情にもトンネルに入る。トンネルを抜けて大きく左カーブすると駅。13時8分、ポール・ヴァンドルに停車。ここも大きな入江だが、「ポール(Port)」の名の通り、近代的な港に整備されている。

 山が海に迫ってきた。トンネルとカーブが連続する。13時14分、バニュルス・シュール・メールに停車。トンネルの合間に、小さな入江が姿を見せる。短いトンネルを抜けた後で左手に港町が姿を現すと、右手では構内線がばっと広がる。13時22分、セルベールに停車。フランス側の最後の駅だ。

 セルベールを発車してすぐにトンネルに入っても列車は徐行したままだ。4時間近い旅の名残を惜しむかのように。
 トンネルを抜けたら、国境を越えていた。左手に見える港町はポルト・ボウ。同じ"Port"でも、ここでは「ポルト」と読む(正確には"Porto"だが)。そして右手では構内線がばっと広がる。13時25分、列車が駅に到着する。ずっと座りっぱなしだったので、少しフラフラしながらホームに降り立つ。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(7)

ナルボンヌ→ポール・ラ・ヌヴェール.jpg
モンペリエ→ペルピニャン

 モンペリエでは大勢の乗客が降り、そして大勢乗って来る。7分停車後、10時50分に発車。郊外に出て南西へと進路を変えると、しばらくして水辺の景色となる。地図上では「〇〇 étang」と書かれていて、日本語では「池」と訳されるが、ここのétangは細い洲によってわずかに海と隔てられている存在なので、本当は「潟」と理解した方が良いかもしれない。
 そうした「池」の脇を抜けて、11時ちょうどにフロンティニャンに停車。ここから線路は「池」と海の間の洲を通るので、ようやくが見える。大きな港町に入り、港に向けて構内線が広がってゆく。11時7分、セートに停車。ここはトーという大きな「池」と海とをつなぐ水路上の港町のようだ。大勢の乗客がここで降りる。

 発車すると、洲としては珍しく丘が現れ、そこにはきれいな家々が立ち並ぶ。洲は、そしてまた平坦で細長いものとなる。洲を渡り終え、列車は西へと進路を変えて内陸へ。川沿いの美しい街に入る。11時20分、アグドに停車。さらに西に進み、丘陵や畑の中をしばらく進む。また大きな町が現れる。北からやって来た線路が、右手に合流する。11時33分、ベジエに停車。ここでも大勢の乗客が下車する。また南西へと向きを変え、丘陵や畑の中を進み、細い無数の水路を渡る。そして、またまた大きな町が現れる。11時47分、ナルボンヌに停車。もちろん、大勢の乗客が下車する。

 ナルボンヌには9分停車して、11時56分に発車する。大聖堂の見える美しい街並みを横切ると、左右に大きく分岐する。右手に進めば西方のトゥールーズやボルドーに至る。この列車は左に分岐して南に向かう。郊外に出てしばらく水路や緑地のある風景の中を抜けると、再び海と隔てられた大きな「池」が現れる。列車は、いくつもの「池」の間に細く渡された洲の上を走る。渡り終えると、ポール・ラ・ヌヴェールに停車。12時8分。
 やっと渡り終えたかと思いきや、すぐにまた次の「池」を渡る。12時15分、ルカート・ラ・フランキに停車。またまた大きな「池」が現れるが、その岸辺を走るだけで、もう渡ることはない。
 前方には遠くに冠雪した山が見える。ピレネー山脈であろうか?「池」とはとうとう離れてしまい、平坦な土地が続く。12時24分、サルスに停車。ここから、駅名表示にフランス語の名前ともう一つの名前が出るようになった。もう一つの駅名はカタルーニャ語で書かれている。これについては、後の記事で書こうと思うので、ここではとりあえずおいておく。
 列車はさらに南に進んでアグリー川を渡ると、小さいがきれいな街リヴェルサルトに停車。12時32分。そして、列車は次第に大きな市街地に飲み込まれるとテ川を渡ってペルピニャンに停車する。12時37分。

続く
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