シルクロード旅行-番外編1(上海→嘉峪関)(12)

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黄浦江

 ホテルに着いたものの、この後の行動を決めかねていた。行きたい所はたくさんある。しかし、上海を気ままに歩き回ることには大きな不安があった。この日は5月4日。日本人の多くが忘れてしまっているが、1919年に「五・四運動」が始まった日であり、中国では反日感情が高まる記念日の一つとされている。まして、2005年4月の反日暴動の記憶は、まだ生々しかった。浦東のホテルに泊まることにしたのも、上海の中心部を避けたい気持ちがあったからだ。
 とりあえず、黄浦江沿いの浜江大道を散策する。黄浦江の流れは穏やかで、時折通過する大小の船が立てる小波以外は何も見えない。対岸のバンドには、石造の建築物が建ち並ぶ。上海にヨーロッパ各国の租界があった時代の名残である。春の日の、のどかな風景。心の中の不安が少しずつ氷解してゆく。

 陸家嘴から地下鉄2号線に乗って黄浦江を渡り、河南中路で下車。南京東路を東へ歩き、バンドへ向かう。上海で最も有名な名所であるバンドは大勢の人々で溢れていた。ここに建ち並ぶ石造建築物を見るのは2度目だが、これらの建物の大きさと美しさにはいつも圧倒される。しかし、この日は全ての建物に赤地の布に白い字で書かれたスローガンが掛けられている。中には、「浦東開発十五周年」などと書いてあるものもある。見た目は非政治的なこれらのスローガンの持つ政治性に、思わず苦笑する。
 バンドを南へ歩き、黄浦江の遊覧船乗り場へ向かう。バンドの混雑に比べると、遊覧船の乗客は驚くほど少ない。船は黄浦江を北へと下って行く。左手にはバンドの古風な石造建築群、右手には浦東の最新高層ビル群が見える。上海の今昔を一望する思いだ。船は楊浦大橋まで川を下り、そこで折り返す。爽やかな風が川面をよぎる。人や物が慌しく蠢いているはずの上海だが、ここから見ると悠久の時の中に静かに浮かんでいるようだ。不安はいつしか消えて無くなっていた。思う存分にこの町を歩き回ろう。

続く
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