ヨーロッパ横断鉄道旅行-第6弾(ベルリン→ミュンヘン)(4)

ブロッケン駅(1)
魔の山

 ヴェエルニゲローデ駅を出ると、右手の方にもう一つの駅がある。これが、ハルツ狭軌鉄道のヴェルニゲローデ駅だ。切符を買って中に入ってみると、駅舎の裏手にフォーク型のホームがあり、既に客車が停まっている。先頭にあるはずの機関車を見に行くと、機関車はまだ連結されていない。ふと脇を見ると機関庫があり、それを見学できるように展望台まで設置されている。
 展望台からの眺めは素晴らしい。出番を待ちながら静かに息を吐くSL達、整備用の車庫、そして両者をつなぐターンテーブル。かつてはどこの鉄道でも見られたはずの光景が、ここにはまだ残っていたのだ。目を反対側に向けると、木組みの家々が建ち並ぶのが見える。ヴェルニゲローデは、ハルツ地方の中でも古くからの木組みの建物がよく保存されていることで知られる。
 やがて、1台のSLが機関庫を出発し、姿を消したかと思うとこちらにバックしてホームに入線する。私もそろそろ客車に乗ることにしよう。

 13時25分、ブロッケン山に向かう列車が発車する。列車はヴェルニゲローデの市街地のすぐ外を西に回る。左手にはヴェルニゲローデ城が丘の上に聳えているのが見える。13時28分、ヴェルニゲローデ・ヴェストエンターに停車。市街地にはこの駅の方が近い。そのため、大勢の人々が乗って来る。駅前には木組みの家々が建ち並び、メルヘンの街に来たような錯覚を与える。
 列車は南西に向かって坂道を上る。辺りは比較的新しい住宅地のようだが、あえて木組みにしている家も時折見られる。ヴェルニゲローデ・ハッサーオーデを過ぎると、人家も少なくなり、森に入って大きなヘアピンカーブを曲がる。標高は300メートルを超えた。シュタイネルネ・レンネを過ぎると、早くも標高は400メートルを超える。短いトンネルを抜ける。意外なことだが、こんな山道であるにもかかわらず、トンネルを通過したのはここだけなのだ。
 列車はひたすら険しい山道を上り続け、無数のカーブを通過する。辺りは高い木々に囲まれ、駅もほとんどない。

 14時5分、ドライアンネン・ホーネに停車する。線路はここから二手に分かれる。このまままっすぐ南に進むとノルトハウゼンに通じている。ここを西に向かえば、ブロッケン山となる。そのため、ここで乗客が大きく入れ替わる。対向列車を待った後、14時18分に発車する。
 発車後すぐに線路が分岐する。この列車は右手に進み、より険しい山道を登って行く。14時32分、シエルケに停車する。この辺りは保養地のようで、大勢の乗客が下車する。ここでも対向列車を待って、14時41分に発車する。ひたすら森の中を進む。山道を登るSLの苦しい息遣いがここまで伝わってくるようだ。

 15時過ぎ、ついに森を抜けた。視界が開け、ハルツ山地の山並みも見える。とうとう山の上まで来たようだ。線路に並走するハイキングロードには、大勢のハイカー達がいる。列車も一安心したのか、急に失速する。と思いきや、ついに停車し、そしてバックを始める。どうやらスイッチバックの待避所らしい。しばらくして、対向列車が勢い良く通過して行く。この列車も再び前進を始める。
 しばらくして左手に見えてきたのはブロッケン山の山頂だ。だが、その山頂になかなか近づけない。なぜなら、線路が山頂の周りを螺旋状に上って行くからだ。辺りはもはや岩と草ばかりで、視界を遮るものはなく、美しい山々の景色を堪能することができる。
 そして15時18分、列車はついにブロッケン山の山頂駅に到着する列車のはるか下方に平地の景色が広がる。標高は1100メートルを超えている。2時間かけて800メートル以上も上ってきたことになる。さらに驚きなのは、この鉄道は確かに狭軌(1000ミリメートル)ではあるが、ラックレールなどの補助レールを使っていないことだ。

 目を転じて山頂に向かう。3つの大きな建物が並んでいるので、その下まで行ってみる。それにしても、真夏とは思えないくらい寒い。半袖の上に上着を着ているが、それでも長くは屋外にいられない。こんな所にもビアホールがあり、屋外でジョッキを傾けている人がいる!いくらビール好きの私でも、それはできない・・・。
 この日、視界はとても開けていた。だが、それはこの山では珍しいことなのかもしれない。1年の多くで霧に包まれるこの山は、自身の影が霧に映し出される「ブロッケンのお化け」で良く知られている。さらに毎年4月30日には、世界中の魔女がここに集結するそうだ。まさに「魔の山」である。
 どうやら私も寒さと霊気にやられたらしく、体の震えが止まらなくなってきた。に戻って、ソーセージの入った豆のスープを食べる。

 しばらくして、汽笛が聞こえて来た。だが不思議なことに、列車の姿はどこにも見えない。これは魔物のせいではなく、線路が山頂の下を螺旋状に通っているからだ。ようやくヴェルニゲローデ行きの列車が入線する
 そろそろ下山するハイカーも多いせいか、列車はたちまち満席になる。この列車のテーブルには、ハルツ狭軌鉄道の路線図が描かれていて面白い。

 16時25分、山頂を発車する。岩と草ばかりの荒野を抜け、16時36分にあのスイッチバック待避所に停車。息を切らして山を登って来た対向列車を待った後、バックして本線に復帰する。
 列車は山道をひたすら下る。16時58分、シエルケに停車する。ここでも対向列車を待ち、17時4分に発車する。17時14分、ドライアンネン・ホーネに停車。明らかに上りよりもスピードが速い。17時25分に発車する。山を下るSLの汽笛が、心なしか気楽なものに聞こえる。
 17時57分、ヴェルニゲローデ・ヴェストエンターに停車。市街地の入口の門が高く聳えている。片道約2時間、往復で4時間近いSLの旅もついにラストランだ。18時2分、列車はついにヴェルニゲローデに到着する。到着後も、乗客達が名残惜しそうにSLに寄って来る。

続く
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