ヨーロッパ横断鉄道旅行-第1弾(イスタンブール→アテネ)(14)

アフェア神殿から
エーゲ海

 オモニア駅で地下鉄1号線に乗り換え、ピレウス方面に向かう列車に乗る。列車は次のモナスティラキを出発すると、地上に出る。先ほど写真を撮った古代アゴラ前を通るのだが、列車の中からは意外と視界が悪く、アクロポリスを見ることはできない。
 乗っている列車は1号線の終着駅・ピレウスに行くものだと思っていたのだが(実際、普段はそうなのだが)、途中のカリセアに到着したとたん、乗客達が一斉に降り始めてしまったのだ。他の乗客に促されて、私も下車する。どうやらこの列車の終点は、カリセアだったらしい。ならば、ここでピレウス行きの列車を待とう。
 だが、この後に到着した列車は、いずれも全ての乗客をここで降ろしているではないか。何かおかしい。そう思った時、「地下鉄はこの先には行きませんよ」と親切にも教えてくれる人が現れた。さらに、私が日本人だとわかると、日本語でも説明してくれたのでびっくりである。
 というわけで、私は列車から降りてくる人々と共に駅前から少し歩き、停車していた2両連結の代替バスに乗った。バスはピレウスの1駅手前、ネオ・ファリロまで乗客を運んだ。地下鉄は、カリセアからネオ・ファリロまで運休していたのだった(その理由はよくわからない)。ネオ・ファリロでバスを降りた人々は、再び駅の中へと向かう。駅前には大きなサッカースタジアムがあるので、駅の出入り口はかなり広い。そして、ここからまた地下鉄に乗り、1駅先のピレウスにようやく到着する。
 ピレウス駅は、地下鉄の駅とは思えないくらい立派な造りをしている。外観も洒落たビルディングであり、言われなければ駅であることすらわからないくらいだ。

 駅から大通りに沿ってしばらく歩くと、巨大なフェリーターミナルが現れる。この港こそアテネの海の玄関口であり、ここからはギリシャのあらゆる島々や諸外国に船で行くことができるのだ。
 ターミナルの一画にある切符売り場で、フェリーの切符を買う。向かうのはサロニコス湾に浮かぶエギナ島である。島へ向かうフェリーは意外と大きい。フェリーの中には広くて快適な船室があるのだが、やはりエーゲ海の風を感じてみたいので甲板に出ることにした。
 出港時刻になり、フェリーがゆっくりと動き出す。岸壁が徐々に遠ざかっていく。港に停泊している大型船の前を次々によぎる。港を出ると、本土とサラミス島を隔てる海峡が見える(写真の左側がサラミス島)。紀元前480年、アテネを主力とするギリシャ連合艦隊とペルシャ艦隊が激突し、ギリシャ軍が勝利を収めたサラミスの海戦は、まさにこの海域で行われたのだ。
 フェリーは、さらにサラミス島の東側を通って南へと向かう。テッサロニキで見た海にはがっかりさせられたが、今目の前に広がる海は、期待した通り青く美しい。上空には雲が多かったのだが、それでも日差しが相当に強い。肌には日焼け止めを塗っていたのだが、うっかり塗り残した所だけ赤く腫れ上がってしまったほどだ。
 やがて、東側に島影が現れる。エギナ島である。島影は次第に大きくなり、人家がくっきりと見えるようになる。そしてフェリーはエギナ島の中心地であるエギナ・タウンに到着する。ピレウスを出発してから約1時間の海の旅であった。

 エギナ・タウンからはバスに乗る。バスと言っても、アテネのバスようにスタンプ機などの高度な(?)システムは備えていない。切符売り場で往復の切符を買い、バスの運転手にそれを渡すだけである。運転手の趣味なのだろうか、カーステレオからはハードロックのライブ音声がガンガンにかかっている。何だか、知り合いの車に乗せてもらうような気持ちがする。乗客の大半は観光客だが、中には地元の人もいる。バス停など存在しないので、自分が降りる場所を運転手に告げている。
 バスは、島の西部にあるエギナ・タウンから、山道を抜け、島を横断するように東に向かう。途中には聖ネクタリウ修道院という名所になっている修道院がある。バスが島の東部に近づくにつれて上り坂が一段ときつくなり、その坂を上りきった所にアフェア神殿がある。私はここで下車する。バスは、ここから一気に坂を下って、島の東海岸にあるリゾート地、アギア・マリーナへと向かう。

 アフェア神殿は、紀元前6世紀頃に建てられたもので、その頃はエギナ島にも立派な都市国家があったそうだ。今でも24本もの石灰岩の柱が残っている。本土から船で1時間もかかる離島に、こんな立派な建造物があるのは意外な感じもするが、これも多くの島々を行き来する人々によって育まれた古代ギリシャ文明の特徴なのかもしれない。神殿からは、エギナ島の平地と、その先に広がる海を一望することができる。

 神殿の前にバスがやって来た。往きと同じバスだ。アギア・マリーナから折り返してきたのだろう。バスは山道を下ってエギナ・タウンに戻る。
 エギナ・タウンの海岸通りには明るい色をした建物が並んでいて、古い建物も珍しくない。カフェやレストランも数多く営業している。通りには観光用の馬車が走っている。街を散策している子供だけのグループをたくさん見かける。ギリシャの人々にとって、ここはお手軽なリゾート地なのだろう。通りのレストランで遅い昼食をとる。もう何度目かのスブラキだ。

 船便のスケジュールの都合で、帰りは高速艇に乗った。これはピレウスまで40分で行けるのだが、残念ながら景色はあまり楽しめない。
 ピレウスから再び地下鉄1号線に乗り、次のネオ・ファリロでバスに乗り換え、カリセアから再び地下鉄に乗り、モナスティラキで下車する。プラカ地区にあるこの駅の構内には、地下から出土した遺跡がそのまま残されている。アテネはやはりすごい町だ。

 夕方、いつもの店に食事に行く。ギリシャで夕食をとるのもこれが最後だ。スブラキにヨーグルトをかけたサバスと、すっかり気に入ったグリークサラダ、そしてビール、さらにワインを飲む。ワインは値段が安かったせいか、味がいまいちであった。

 帰り道、あまり人数は多くないものの、警官の姿を通りのあちこちで見かけたのが気になった。夜、ホテルの近辺で小競り合いのような声を聞いた。結局何が起きたのかはわからないが、あるいは前日のデモの余波だったのかもしれない。

続く
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