シルクロード鉄道旅行-第9弾(テヘラン→イスタンブール)(7)

ワン湖
ワン埠頭→タトワン埠頭

 列車がワン埠頭に到着すると、私達は荷物を抱えて慌しく列車を降りた。ワン埠頭駅の狭いホームは大混雑している。列車から降りてくる私達の他に、これからこの列車に乗り込もうとする人々がホーム上で待機していたからだ。

 ここで説明しておこう。実は、イランからトルコへと続く線路は、ここワン埠頭で行き止まりになっている。トルコ国内をさらに西へと向かう線路は、ワンから湖を挟んで対岸にあるタトワンを起点にしている。だから、イランから列車に乗ってきた人々は、ワン埠頭でイラン側の車両と別れ、フェリーに乗り換えてタトワン埠頭まで行かねばならない。逆もまた然りだ。ホーム上で待っていた人々は、イスタンブール方面から来た列車の乗客で、テヘランへと折り返すこの車両に乗り込もうとしているのである。私達がワン駅でずいぶん待たされたのは、タトワンからやって来るフェリーとの接続を図っていたからだ。
 ワンとタトワンの間に線路が開設されないのは地形上の問題が理由らしい。湖の周辺はすり鉢状になっていて、湖岸が急勾配になっているのだ。外が暗いために気付かなかったのだが、列車がワンの市街地を東から西へと湖岸に向かって移動した際には、大きなS字型カーブを描いて坂道を下っていたのである。現代の技術をもってすればワン-タトワン間の線路を開設することは不可能ではないだろうが、膨大な資金と労力をつぎ込むに値する需要がないということなのだろう。

 さて、ワン埠頭のホームに降り立った私は、人波に押し流されるように、ホームの先端からさらに数十メートル先に着岸したフェリーに向かって進む。線路はフェリーに向かって伸びており、フェリーの車両甲板と連結している。車両甲板には1台のコンテナが載っているのだが、おそらくこれからテヘラン行きとなる列車の末尾に連結されることになるのだろう。それと入れ替わりに、我らがイスタンブール行き列車の末尾に連結されていたコンテナ(乗客の荷物を収納している)が車両甲板に載るのだろう。
 私達は車両甲板から階段を登って船室へと入る。広い船室にはたくさんの座席が並んでいて、座り損ねる心配はないが、眠るのには適していない。乗客全員が乗船した後も、フェリーはなかなか出航しない。車両甲板の方から音がするので、車両の出し入れがまだ続いているようだ。
 0時25分、フェリーはようやく出港したようだ。「ようだ」と書いたのは、窓の外を見ても真っ暗な湖面が見えるばかりでフェリーの動きがよくわからなかったからだ。

 眠ると言っても、座席でうたた寝した程度だったのだが、目が覚めて外を見ると、夜が明けて空が白くなっていた。ワン湖と湖岸に広がるタトワンの町並みが見える。そして、5時25分に船はタトワン埠頭に着岸する。予定時刻なるものは、もうとっくに役に立たないのだが、念のため比較してみよう。予定ではフェリーは20時にワン埠頭を出港し、0時にタトワン埠頭に着く予定だった。もしも予定通りならば、ワン湖の景色など眺めることは不可能だったから、遅れたことはラッキーだったと言えるかもしれない。

 船室から階段を下りて車両甲板に出ると、乗客用の貨物コンテナ以外に、もう一台コンテナが載っていることに気付いた。私達の乗ってきた車両がテヘラン行きとして折り返した後、別の貨物列車がやって来て、このフェリーにコンテナを託していったのだろう。
 私達はフェリー(写真の中で左側のコンテナが乗客用)を降りると、すぐ目の前のタトワン埠頭駅へと向かった。

続く
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