内郷→大津港(常磐線)五浦海岸 10時15分、
上野行き普通列車
に乗る。列車はいわき市をぐんぐん南下して、
勿来
に停車。ここを出ると、白河と並ぶ陸奥への関門、勿来の関を横目にして再び茨城に入る。そして県境の駅、
大津港
に到着。10時38分。
大津港駅からは平日ならばバスがあるようなのだが、休日のこの日には全く便が無い。タクシーに乗って海岸に向かう。5分ほどで
五浦美術館
に到着。五浦海岸を見下ろす高台に立つこの真新しい美術館には、岡倉天心や日本美術院に関する資料が豊富に展示されている。展示されている絵画はそれほど多くないが、たまたま企画展示されていた神戸の「須磨御殿」の襖絵(作:木村武山)は非常に良かった。素人目にも、そのダイナミックさと繊細さが伝わってくる。
美術館を出て、遊歩道沿いに海岸を南下する。強い風が吹き付ける。その風に乗って
波が陸地に押し寄せる
。
押し寄せる波は巌に当たって砕ける。
そんな日本画にぴったりな風景を毎日見て暮らす画家達がいた。ここは、そのような画家達の
夢の跡
だ。
この五浦の地に日本美術院を創立した岡倉天心は、海岸近くの草むらに
ひっそりと眠っている
。天心の墓のすぐ向かいに、彼の邸宅がある。今は茨城大学の五浦美術文化研究所になっている。正面の
長屋門
から中に入ると、
天心記念館を左手に
小道
が海の方へと続いている。海に突き出た小さな岬、その先端に
六角堂
が立っている。文字通り六角形の建物で、
内部
は畳敷きの6畳程度の小さな部屋だ。見渡せば
青い空と海
、だが激しく打ち付ける波は大音響と共に目の前でたちまち
真っ白に変わってしまう
。感動と恐怖が同時にやって来る。
天心は、この六角堂で読書したり、ここから釣り糸を垂れていたと言う。羨ましいのを通り越して、ため息しか出ない。せめて私は、この景色を写真と共に心に刻もう。
六角堂の近くにあるホテルの露天風呂に入る。青空の下、五浦海岸を一望しながら湯に浸かる。心は空に海に溶けていきそうだ。
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勿来の関
五浦海岸
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