ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(18)

チューリッヒ行きRailJet(インスブルック駅)
7日目

インスブルック→ランゲン・アム・アールベルク

 9時50分過ぎ、ウィーン始発、スイス・チューリッヒ行きの特急Railjetが入線する。私は1等車に乗り込む。1等車の車内は、座席が左側1列、右側2列で、天井には停車駅や予定到着時刻、さらには地図や現在位置、列車の時速まで表示してくれる案内モニタが設置されている。
 列車は9時54分に発車する。ターンテーブルのある半円形の大きな操車場の側を通ると、最初の分岐点を通過して大きく右にカーブする。
 ちなみに、この分岐を直進すると、急峻なブレンナー峠を越えてイタリアに向かう路線となる。ブレンナー越えはアルプスの南北を貫く鉄道のメインルートの一つで、2014年現在でも勾配とカーブの続く山越えルートになっているが、一方で全長56kmにも及ぶ長大なトンネルが建設中であり、インスブルック駅にはその資料展示室がある。
 私の乗るこのRailjetはブレンナー峠には向かわず、右カーブを抜けるとインスブルック西駅を通過して、再び分岐点を通過する。ここを右に向かえば、前日に乗ったミッテンヴァルト方面への路線となる。今日はここを左に向かい、イン川に沿って西に向かう。

 車窓にはチロルの盆地の風景が広がる。草原を埋める黄色い花と、遠くにはアルプスの山々。列車はぐんぐんスピードを上げ、早くも時速150kmに達する。10時15分、エッツタールを通過。南北に長い峡谷を刻んでイン川に注ぎ込むエッツタール川を渡る。

 ところが、ここからはカーブが多くなり、スピードのアップ・ダウンを繰り返す。盆地は次第に狭くなり、峡谷へと変わる。10時34分、ランデック・ツァムスに停車。発車するとすぐにランデックの美しい街並みが現れる。これまで西から東に流れていたイン川は、このランデックで向きを変え、川筋は南へと向かう(つまり、南から北に流れている)。列車は向きを変えたイン川を渡り、イン川の支流・ザンナ川に沿って西に向かう。
 ザンナ川の刻む峡谷は深く、大きくなるが、ヴィースベルクでさらに川筋は2つに分かれ、列車はローザンナ川に沿って西に向かう。しばらくはカーブの多い山道が続くが、次第にトンネルが連続するようになり、それにつれて列車のスピードも上昇する。

 10時58分、ザンクト・アントンを通過する。スキー・リゾートとして有名な町だ。その直後、長いトンネルに入る。チロルの西の境界となるアールベルク峠を貫く、長さ10kmほどのトンネルである。トンネルの出口に差し掛かると列車は徐行。11時5分、トンネルを出たところでランゲン・アム・アールベルクに停車。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(17)

アイプ湖(2)
越境ピクニック(その2)

 山頂からの景色を満喫した後、今度はロープウェーに乗って一気にアイプ湖まで下る。アイプ湖のロープウェー乗り場の看板には、英語もないのに日本語の記述はある。ロープウェー乗り場から少し坂を下ると、湖の南岸になる。
 これでも十分に良い眺めだが、ツークシュピチェなどは湖の南側にあるため、ここからは見られない。湖の北岸に行く道を探してみるが、案内板もなく、見つからない・・・諦めて登山鉄道の駅へ向かっていたその時、湖の南東岸辺りにある駐車場で、奥に向かって歩いて行く人を見つけた。
 人の向かった方向に行ってみると、果たしてそこには遊歩道があるではないか!こうして湖の東岸沿いの遊歩道をしばらく歩くと、思った通り、湖の背後に聳えるツークシュピチェが現れた。さらに歩を進め、アイプ湖が北に張り出してウンター湖になる地点まで行ってみると、真正面に聳えるツークシュピチェの雄姿が現れる。写真右側の一番高いところが山頂で、よく目を凝らすと、あの黄金の柱まで見ることができるのだ。

 湖の南東にある登山鉄道の駅へ行く。ここからでもツークシュピチェを眺めることができる。13時18分、グライナウ行きの下り登山鉄道がやって来る。列車は右へ左へ小さくカーブしながら急勾配を下る。グライナウが近づくと、左手に登山鉄道の車庫が見える。13時30分、グライナウに到着。ここでラックレールのない普通車両に乗り換える。13時48分、ガルミッシュ・パルテンキルヒェンに到着する。

 今度はドイツ鉄道に乗り換え、14時4分にミッテンヴァルト行き列車に乗る。駅の売店で残り1個になっていたミュンヘンのビール・フランツィスカーナをGetして、飲み鉄モードに突入。列車は山道をゆっくり上り、14時26分にミッテンヴァルトに到着する。すぐに隣ホームのインスブルック行き列車に乗り換え、14時28分に発車する。
 列車は再びオーストリアに入り、ゼーフェルトを通って険しい山を下る。そして15時23分、インスブルックに到着する。

 夕食にはチロル料理を食べたいと思い、グリルがそのままフライパンに乗って出てくるプファンドルを食べる。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(16)

ツークシュピチェ山頂から(8)
ドイツの頂上へ

 ホームから地下通路に下りると出口が東西二つに分かれている。東側に進むとドイツ鉄道の駅舎があり、西側に進むとドイツの最高峰・ツークシュピチェに向かう登山鉄道の駅がある。登山鉄道の駅の窓口には、大勢の登山客が列をなしている。列に並んでいる間に、ガルミッシュ・パルテンキルヒェンという舌を噛みそうな地名について少し説明しよう。

 もともと、ドイツ鉄道の駅から東に少し歩いたところにあったのがパルテンキルヒェンという町で、この駅を含む西側のエリアがガルミッシュという町だった。1936年、ベルリンオリンピックの年にこの地で冬季オリンピックが開催されたのだが(かつて夏季と冬季のオリンピックは同じ年に行われていた)、その機会に二つの町は合併したのである。オリンピックを引き受けるには2つの町の協力が不可欠だったからなのだろうか?先ほど車窓から見たジャンプ台も、その当時のものかもしれない。

 ようやく登山鉄道の切符を買い、ホームに行く。上が白、下がバイエルンを象徴する青に塗られた登山電車は、既に乗客でいっぱいだ。デッキの片隅に立つしかない。
 10時15分、登山電車が発車する。しばらく南に進むと、ミッテンヴァルトに向かうDB線と分かれて右に大きくカーブする。オーストリアのエーアヴァルトに向かうDB線と併走する。緑に覆われた平坦な土地をしばらく進むが、ハウスベルクを過ぎると、DB線とも分かれて徐々に山を登り始める。天に向かって聳える山々が姿を現す。10時30分、グライナウに到着する。実は、ここまで乗って来た列車は普通の車両。ここから本当の登山仕様の列車に乗り換えるのだ。その列車の側面にはスキー板を取り付けられるようになっているのだが、一番の違いは、歯車を使って進むラックレールだ。つまり、ここからは相当な急勾配が予想される。

 10時35分、グライナウを発車する。山道をぐんぐん登る。天に聳える山々がさらに近づく。10時43分、アイプゼーに停車する。その名前の通り、アイプ湖という湖のほとりにある。ここで7分間停車した後、10時50分に発車する。勾配はさらにきつくなり、ほとんどケーブルカーのようになる。11時、信号所に停車。もちろん単線なので、ここで対向列車を待つ。発車すると、まもなくリッフェルリスという信号所?を通過する。そしてトンネルに突入。相変わらず急勾配は続き、大きなヘアピンカーブもある。もちろんその場では気づかないが、ツークシュピチェ山頂の真下も通過したらしい。あまりに長いトンネルなので、トンネル内にも信号所がある。トンネルに入ること20分。ようやく終点のグレッチャーに到着する。駅はまだトンネルの中にある。

 駅を出ると、そこは一面の銀世界だ。標高2650メートル。鉄道一本でこんな所まで来てしまったのだ。振り返ると、山小屋のような駅舎が見える。私にスキーの素養があれば、この真っ白でなだらかな斜面を滑ってみたいが、残念ながらそういう能力がないので、ここからはツークシュピチェの山頂を目指すことにしよう。
 山頂にはロープウェーで行くことができる。雪を被った岩肌の上を進む。どんどん山頂に近づいているものの、濃い霧に覆われていてよく見えない。

 ツークシュピチェの山頂にはビルのような建物が建っている。ここの展望台から辺りを眺める。やはり視界が悪い・・・岩場の上に金ぴかの柱が立っているのが、本当の山頂であろう。標高2962メートル。ドイツの最高地点に苦もなく到達したのだから、あまり文句は言えないのだが、それでもここで引き返すのは惜しい。しばらく待ってみよう。

 強い風が吹きすさぶ中、展望台にしばらく立ち尽くす。上着を何枚も来て、マフラーにニット帽を被る。気軽に来れるとはいえ、真冬の装備をしていないと凍えてしまう。
 山の天気は本当に変わりやすい。少しばかり霧が晴れてきたのだ。山頂がその神々しい姿を現す。辺りの様子もよくわかってきて、この展望台が建つ岩場や、剣のように鋭い岩山も見える。かつての高所恐怖症は克服したつもりでいたが、これを見るとやはり足がすくんでしまう。だが視線を遠くに転じると、麓のアイプ湖アルプスの山々の素晴らしい景色が目に飛び込んでくる。怖さを忘れて、3000メートルの絶景をしばし楽しむ。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(15)

ホッホツィール→ライト(2)
6日目

越境ピクニック(その1)

 メイン路線ではないからだろう、ミッテンヴァルト行きの列車はインスブルック駅の張出ホームに入線していた。8時38分に発車する。発車後、すぐに右に分岐して大きくカーブする。インスブルック西に停車、8時40分。ここを出るとまたすぐに分岐がある。左に進むとチロル地方をさらに西に進んでスイスに至る幹線、この列車はここを右に分岐してイン川を渡る。8時44分、ヘッティングに停車。

 インスブルックの北側に聳える山々が壁のように立ちはだかる。だが、列車は臆することなくその山を登って行く。いくつものトンネルと駅を通過するうちに、次第に街が小さくなり、やがて盆地を広く見渡せるようになる。ひときわ長いトンネルを抜けたところで、8時57分、ホッホツィールに停車する。ここで対向列車を待った後、9時ちょうどに発車する。ここからは単線だ。

 急勾配の続く大きなヘアピンカーブをぐんぐん上る。山中ののどかな村のはるか向こうには、盆地の南側の山々が聳えている。9時7分、ライトに停車。山中の村というよりは、もう町である。ここからは谷間に入るため、平坦な景色が続く。9時13分、ゼーフェルトに停車。辺りは保養地・別荘地という感じのところで、駅も大きい。ここで対向列車を待ち、9時17分に発車する。

 ここからは下り坂となる。辺りは平坦な盆地だが、時々巨大な岩山が姿を現す。9時27分、淡い緑色の駅舎が印象的なシャルニッツに停車。ここはオーストリア・ドイツ国境のオーストリア側の駅である。そしてここからは白濁した川に沿って走る。その川の名はイーザル川。ここからずっと下ってミュンヘンの市街に注ぎ込むのである。そして列車はいつの間にか国境を越えてドイツに入る。そしてドイツ側の国境の駅・ミッテンヴァルトに到着する。9時33分。

 向かいのホームにはドイツ鉄道の列車が既に入線していた。ミュンヘン行きである。9時37分に発車する。列車はイーザル川からはすぐに離れて、丘陵地帯を北西に進む。9時44分、クレーに停車。草原の中を縫って、列車は緩やかに坂を下る。すると、手前の山の麓にスキーのジャンプ台が見えてきた。そして9時58分、列車はガルミッシュ・パルテンキルヒェンという舌を噛みそうな駅に停車する。私はここで下車する。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(14)

インスブルック市の塔より
借景の街

 暑い。まだ4月の終わり、しかもアルプスのお膝元だというのに、気温は20度もある。駅前からサルールナー通りをまっすぐ進むと、マリア・テレジアが建てた凱旋門が現れる。ここから道を右に折れると、その名もマリア・テレジア通りとなる。沿道にはエルカーと呼ばれる出窓が付き、壁が美しく装飾されている建物が並ぶ。ここをまっすぐ進むと、そのエルカーの最たるもの、黄金の小屋根に突き当たる。
 ここからは狭い路地になってわかりにくくなるが、とにかく直進すると、インスブルックの大聖堂に行き着く。外観内装も、チロルの中心にふさわしい立派なものだ。

 大聖堂の裏手(いや、こっちが裏手なのか?)がハプスブルクの王宮である。この王宮もそうだが、この街ではあらゆる建物の背景に美しいアルプスの山々が姿を見せる。どこを取っても絵になってしまうのだ。
 さて、ヨーロッパではよくあることだが、王宮に着いたものの、見学の入口がどこだかわからない・・・。ずいぶん地味な入口をようやく見つけて中に入る。
 この王宮は、もともとチロル大公が建て、ハプスブルク皇帝のマクシミリアン1世がインスブルックを都とした時に王宮として改築したのが始まりである。その後、マリア・テレジアが再改築して現在の形になった。
 大広間の豪壮さ、小さなプライベートルームの絢爛さは確かにすごいが、この直前にルートヴィヒ2世の「作品」を見てしまった身としては、これすら地味に見えてしまうのだ。

 王宮に隣接して宮廷教会があり、その隣にはチロル民族博物館がある。民族博物館だから地味なのかと思ったのだが、入るや否や、その予想が覆される。まず、博物館の中庭を抜けると、そこは宮廷教会の入口なのだ。もともとマクシミリアン1世の墓所として建てられたのだが、諸事情で本人はここに埋葬されていない。しかし、王族などのブロンズ像がずらりと並び、独特の雰囲気を作り上げている。
 博物館の本館に戻ると、チロルの生活用具だとか、各階層の民家(家屋や家具はみんな木造だ)の再現だったりする。最上階には教会の宝物の他、呪術の道具も展示されている。ミステリアスなBGMが流れ、ちょっとおどろおどろしい雰囲気になったところで、展示室の奥のドアが突然「カチャ」と音をたてて開く!恐る恐るドアの向こうに進むと・・・残念ながら、この先はぜひご自分の目で確かめていただきたい。

 来た道を少し戻り、黄金の小屋根に行く。このテラスは、マクシミリアン1世が目の前の広場で行われる行事を見物するために建てたもので、建物の内部はマクシミリアン1世の博物館になっている。私は博物館に入ったものの、何とテラスに出るのを忘れてしまった・・・
 黄金の小屋根にほど近いところにが立っているので登る。エレベーターはないからしんどい・・・。だが、塔の上から見るインスブルックの街とその背景の山々の景色は、疲れを吹き飛ばしてくれる。

 黄金の小屋根の前を左に折れるとイン川に架かるイン橋に出る。インスブルックという地名の由来となった橋だ。アルプスの雪解け水をたくさん含んで白っぽく濁ったが滔々と流れてゆく。

 今度は旧市街を東に横切って州立博物館に行く。チロルの美術品や音楽の展示が中心だ。宗教画や農民画などの絵画は、想像していたよりもはるかにレベルが高い。音楽はヘッドホンで試聴できるのだが、昔の素朴な聖歌などは聴いていて癒されるものがある。

 いったんホテルにチェックインして、夕方食事に出かける。地ビールの店に入ったのだが、そこにはミュンヘンで食べ損なったヴァイス・ブルストがあるではないか!迷わずこれを注文。「江戸の仇を長崎で討つ」感じだが、とても満足できた。肝心のビールは、こんな暑いときにはとても飲みやすいのだが、今まで濃厚なドイツビールを飲んできた身には、少し薄く感じてしまう。
 ほろ酔い気分で外に出ると、ちょうど日没となり、あの凱旋門がライトアップを始めていた。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(13)

インスブルック行きRailJet(ヴェルグル駅)
ヴェルグル→インスブルック

 ヴェルグルからは、ザルツブルクを出てドイツ領に入りローゼンハイムを経由してきた特急RailJetに乗り換える。乗り換え時間は5分しかなく、ホームも別の島だから急ぐ。
 しかし、インスブルック行きのRailJetは5分遅れで10時33分に到着。車内はけっこう混んでいる。列車はイン川沿いの広い谷間を南西に進む。南西から北東に流れているイン川は、ヴェルグルを通過した後、ドイツ領に入って北へ東へと進み、最後はドイツ・バイエルンのパッサウでドナウ川に合流する。

 列車は早くも一般の路線とは分かれ、特急専用線に入る。スピードは速いが、長いトンネルに入ってしまい、何も見えない・・・
 イェンバッハの近くでようやくトンネルを抜ける。イン川の対岸の山の中腹に白く美しい城が見える。これがトラッツベルグ城なのだろうか?
 そんなことを考えているうちに、また長いトンネルに入る。トンネルを抜けても、美しいチロルの谷間の景色はあっという間に過ぎ去り、市街地が現れる。
 10時58分、列車は終点のインスブルックに到着する。

 インスブルックはチロル地方最大の都市だが、ここでもホームは頭端式ではなく、通常の通過型ホームである。オーストリアでは、ドイツに比べると、首都ウィーンも含めて頭端式ホームが少ない印象がある。駅構内は吹き抜けで見通しが良い。コインロッカーに荷物を預けて、早速街に出てみよう。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(12)

ヴィンダウ→ホプフガルテン(1)
キッツビュール→ヴェルグル

 9時48分、シュヴァルツゼーに停車。出発するとすぐにシュヴァルツ湖という小さな湖が見えてくる。谷間は開け、列車は北西から西へと進路を変える。9時53分にキルヒベルク・イン・ティロルに停車。車窓には緩やかな稜線が広がり、一面が緑に覆われる。9時58分、ブリクセン・イム・ターレに停車。山の麓のやや大きな村だ。10時、ヴェステンドルフに停車。

 のどかな山麓の村を通り過ぎて、10時3分にヴィンダウに停車。発車すると列車はトンネルに入って大きく左カーブする。次いで車窓に現れた小さな谷の反対側には別の線路が見える、と思いきや、列車は急な坂道を下って今度は大きく右カーブしたかと思うと、その谷を横断して谷の反対側に出て再び大きく右カーブ。谷の元いた側にはやはり線路が見える。つまり、線路はこの谷で大きなヘアピンカーブを描いており、ヴィンダウからの険しい勾配を一気に下ったのである。そして列車は10時10分、ホプフガルテン・ベルクリフトに停車。美しい町だ。

 列車は谷間を流れる川に沿って北西に向かい、10時13分、ホプフガルテン・イム・ブリクセンタールに停車。山の上に城館が見えたかと思うと、列車は谷間を抜けて開けた盆地に出る。10時18分、ヴェルグル南に停車。

 高速道路が現れ、辺りは大きな町となる。そして、右からやってきた線路と合流する。これは、この列車が辿ってきた山道コースではなく、ザルツブルクからドイツ・ローゼンハイムを経由してやって来た平地コース、すなわち高速列車用の線路である。10時23分、列車は終点のヴェルグルに到着する

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(11)

ザールフェルデン→レオガング・シュタインベルゲ
ツェル・アム・ゼー→キッツビュール

 列車は湖の西岸を北に進むと、再び雪山に囲まれた盆地に入る。少し大きな町に入り、8時58分、ザールフェルデンに停車する。ここから進路を西に変える。北側には雪山が聳えている。9時4分、レオガング・シュタインベルゲに停車。盆地はさらに狭まって谷となり、霧が山々草原を覆う。

 谷が開けたところで9時17分、ホッホフィルツェンに停車。緩やかな丘陵地帯を通って、9時21分にプファフェンシュヴェント、9時26分にフィーバーブルンに停車。草を食む羊の群れがいてもおかしくないような緑の斜面を通り、9時31分にグリースヴィルトに停車。

 小さいながらも空港が現れ、次いで市街地に入る。9時34分、ザンクト・ヨハン・イン・ティロルに停車。ガラガラだった車内には、再び乗客が増え始める。「ザンクト・ヨハン」はザルツァハ川沿いにもあった駅なので、これと区別するために「イン・ティロル」とつけているのであろう。日本ならば「会津○○」とか「陸前○○」のようなものだ。これ以降、「イン・ティロル」のつく駅が増える。これまで谷間を北西方向に進んでいた列車は、ここで南に向かう谷に沿って進む。9時38分、オーベルンドルフ・イン・ティロルに停車。

 そして9時42分、キッツビュールに停車する。キッツビューラーホルンとハーネンカムという2つの山に挟まれたこの町は、古くからスキーリゾートとして知られている。キッツビュール駅はキッツビューラーホルンの麓にあるが、列車の右手・町の西側にはハーネンカム山の稜線が見える。列車はここでぐるりと町の外周をなぞるようにヘアピンカーブを描いて反転し、北東に進路を変える。9時46分、ハーネンカム山の麓、キッツビュール・ハーネンカムに停車。ここからはキッツビューラーホルンを見ることができる。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(10)

シュヴァルツァハ・ザンクト・ヴァイト→レント(3)
ビショフスホーフェン→ツェル・アム・ゼー

 列車は谷あいの少し開けた土地を南に進む。8時6分、ザンクト・ヨハン・イム・ポンガウに停車。ここからザルツァハ川の峡谷は西に向きを変え、列車は川を渡る。8時12分、シュヴァルツァハ・ザンクト・ヴァイトに停車。ザルツブルクでは一杯だった乗客が、今ではほとんどいなくなる。
 発車するとすぐに分岐する。左に分かれていった線路はすぐに見えなくなるが、実は山を登ってこの峡谷の上の方に行き、やがて南へと山を越えて、フィラッハやクラーゲンフルトに向かう。一方、ほぼ川に沿って進むこちらの列車の目の前には、ダムトンネルが次々と姿を現す。列車が突然停車する。ザルツァハ川がけっこう増水しているから運休になったのかと一瞬ひやりとするが、しばらくすると動き出す。ここで、線路が単線に切り替わったことに気付く。先ほど停車したのは、信号所のようだ。

 ここ何日間か気になっていた疑問が、ようやく氷解する。ザルツブルクからインスブルックに向かう特急が、いったんドイツに入ってローゼンハイム(正確にはその付近)を経由していることを、私は既に見た。同じオーストリアの2都市を結ぶ特急がなぜ隣国を経由するのか(そうなると使用料をドイツに払っているはずだから)私には疑問だった。今、オーストリア領内だけを通ってこの2都市を結ぶ路線上に私はいるわけだけど、この路線に特急を通すことはおそらく難しい。先ほど左に分岐して南へと峡谷を越えて行った路線には、クラーゲンフルトに向かう特急が通る。しかし、ザルツァハ川の峡谷を突き進むこの路線は、高速列車を通すには険し過ぎるのだ。

 そんなことを考えている間にも、列車は峡谷をゆっくりと進み、8時23分、レントに停車する。列車の目の前には、幾多のカーブやトンネルがなおも立ちはだかる。8時37分、タクセンバッハ・ラウリスに停車。ここからは峡谷が少し開け、緑の草原に覆われた山の斜面には家畜が放牧されているのが見える。そして線路は再び複線になる。8時41分、ブルック・フッシュに停車。

 ブルック・フッシュを出ると、長らく沿っていたザルツァハ川から離れて北に進路を変える。お城のような建物が現れ、列車は大きな盆地に入る。その直後、目の前に大きな湖が姿を現す。ツェル湖である。そして8時48分、湖岸の町、ツェル・アム・ゼーに停車する。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(9)

ヴェルグル行き列車(ザルツブルク駅)
5日目

ザルツブルク→ビショフスホーフェン

 早朝、鳥のさえずりで目を覚ます。6時30分にはホテルを出る。ザルツブルク駅に向かい、朝食もそこで済ますと、5Aという張出ホームに向かう。ヴェルグル行きの列車が既に入線していた。張出ホームに停車している時点で、これは特急などの優等列車ではない。しかし、最初ガラガラだった車内は、次々に乗り込んでくる乗客で次第に埋まってゆく。

 7時10分、列車が発車する。いったん北東に向かうが、ぐるっと大きな山型カーブを描いて南東に向きを変える。市内のSバーンの駅を次々に通過すると、7時17分にザルツブルク南駅に停車。
 ザルツァハ川に沿って一路南に向かう。西側には雪が残る高い山々が見える。7時28分、ハラインに停車。ザルツブルクを中心としたこの一帯は「ザルツカンマーグート」と呼ばれる。「ザルツ」の名が示す通り、昔から塩の産地だった地域だ。ハラインにはかつての岩塩採掘場がある。ここで大勢の乗客が下車するのは、そこを見物に行くためだろうか?

 ハラインを出ると、ザルツァハ川周辺の平地が次第に狭まり、東西の山々がぐっと迫ってくる。7時36分、ゴリング・アプテナウに停車。発車するとすぐ、ザルツァハ川を渡ってトンネルを抜けると峡谷となり、川の流れも急になる。空があいにく曇っているのが残念だが、雪をかぶった岩山と川が織りなす景色は素晴らしい。川沿いのわずかな平地は新緑に覆われている。
 川に突き出た山の頂に城が建っているのが見える。(ホーヘンヴェルフェン城と言うらしい。)城に次いで町が見えてきた。7時51分、ヴェルフェンに停車。ここからは峡谷も少し緩んで平地が広がる。7時57分、ビジョフスホーフェンに停車。大勢の乗客が下車する。

続く
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