ヨーロッパ横断鉄道旅行-第11弾(ローマ→ナポリ・ピサ)(2)

ヴァチカン宮殿ギャラリー
3日目

楽園

 地下鉄A線のオッタヴィアーノ駅で下車して通りをまっすぐ南に進む。しばらく行くと、トラムの駅があるリソルジメント広場だ。この広場の南側に高い城壁が聳えているのが見える。そして、その壁に沿って長い行列ができているのである。晴れてはいるが、風は強く、冷たい。辛抱強く行列を作るのは、日本だけのことではなさそうだ。とりあえず行列の脇を通ってヴァチカーノ通りを進み、横丁のカフェで一休みする。

 約束の時間が来た。私は行列の先頭、ヴァチカン宮殿の入口に向かう。事前に予約を入れておけば、行列の有無にかかわらず、あっさりと入ることができるのである。

 エントランスは、近年建てられた真新しい建物だ。ヴァチカン宮殿は、ここから中庭を挟んで左右の建物に分かれ、それぞれの建物は2階に分かれる。まずは左側の2階に進もう。

 左右の壁に掛けられた巨大なタペストリーに感嘆しながら廊下を進み、地図の間に入る。ここはその名の通りイタリア諸侯の領土を描いた巨大な地図がずらりと並ぶ。実際にはローマを中心とするエリアしか支配できなかった教皇だが、これを見ているとイタリア全土を支配している気分になれたのかもしれない。天井にもずらりと絵が敷き詰められている。まるで空白を許さないかのようだ。
 だが、驚くのはまだ早過ぎた。続いて入ったのはラファエロの間。その名の通り、かの巨匠・ラファエロが作品を描いた4つの部屋である。
 多くの見物客はここからシスティーナ礼拝堂に進んでしまうが、ここでいったん一階に下りてみよう。そこはボルジアの間と呼ばれる。その名前から想起される通り、教皇アレクサンデル6世(ロドリーゴ・ボルジア)の居室だった場所だ。これらの部屋の壁・天井も素晴らしい絵画で埋め尽くされている。この1階には意外なことに、現代画の展示室もある。

 再び2階に上ると、そこがシスティーナ礼拝堂であった。非常に混んでいて、もはや押し込められる感じだ・・・。だが、見上げればそこには巨匠達が描いた美しい世界が広がる。

 天国なのか地獄なのかよくわからない空間をやっとの思いで抜け出すと、ギャラリーとなっている廊下を通って、いったんエントランスに戻る。

 今度は左側の1階、ピオ・クレメンティーノ美術館に入る。ここは主に古代ギリシア・ローマ美術のコレクションだ。彫刻がメインだが、中には美しいモザイク床もある。最後まで見たところで引き返そうと思ったが、すさまじい人の流れで、それは不可能だった。そのため、またシスティーナ礼拝堂まで流される。まるでベルトコンベアである・・・。

 三たびエントランスに戻り、ようやく右側の建物に入る。絵画館というシンプルな名前だが、ラファエロ、カラヴァッジョ、ダ・ヴィンチ、ティツィアーノなど巨匠の作品がずらりと並ぶ見応えのあるコレクションである。

 エントランスに戻ると、疲れたのと、人混みを逃れたい気持ちで、早々に宮殿の出口を出る。だが、シャバの風景が味気なく見えて仕方がなく、ヴァチカンの美しい世界が懐かしい。何だかアダムになったような気分だ。

続く
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