ヨーロッパ横断鉄道旅行-第9弾(ヴェネツィア→フィレンツェ)(5)

大運河(3)
4日目

ここでは死なない

 朝、ホテルをチェックアウトして出発。荷物があるので、ホテルの前を通る路線バスでヴェネツィア本島のローマ広場まで行こうと試みたが、通勤時間帯のゆえか非常に混雑しているので、断念。結局メストレ駅まで歩き、サンタ・ルチア行きの列車に乗る。

 サンタ・ルチア駅からはLine1のヴァポレットに乗り、大運河を行く。リアルト橋に別れを告げ、サン・トーマで下船。サン・トーマ広場からさらに奥に進むと、大きな教会が現れる。サンタ・マリア・グロリオーサ・ディ・フラーリ教会だ。中に入ると、ティツィアーノをはじめとした巨匠達の描いた巨大な祭壇画に圧倒される。その隣にあるのは、スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコという信者会だが、ここも壁といい天井といい巨大な絵で満たされている。小さな鏡がいくつも置いてあり、それで天井の絵を眺めることができるのだ。

 サン・トーマの船着場に戻ってLine1に乗り、サン・マルコ広場に向かう。当面来ることのない大運河の風景を心に刻みながら。
 サン・マルコ広場は今まで見たことがないくらい、人でごった返す。落ち着いた気持ちでこの広場に別れを惜しむことはできそうにない。すぐさまLine1に乗って出発する。

 船は南東に突き出たヴェネツィア本島の岸に沿って進む。大運河を通っていた時とはうって変わって、風も波も一気に強くなる。名高いビエンナーレが開かれる庭園の前を過ぎると、ついに本島を離れて海峡に差し掛かる。風と波はさらに強くなる。やがて、対岸の街が現れる。こうしてリド島に到着する。

 リド島はリゾート地であるから、海水浴やイベントもない今の時期は人気も少なく、静かだ。南北に細長い島なので、あっという間に島の反対側(つまり外海側)に出てしまう。浜辺に下りる道は無数にあるが、そもそも海水浴場には興味がないし、行ってみたところで、白いタキシードを着たおじさんを見かけることもないだろう。
 他に見どころのない島ではあるが、やはり飲食店は多い。ここで昼食を取る。

 帰りは、Line5.1というサン・マルコ広場を経由しない路線に乗ってみた。これはヴェネツィア本島の北岸を経由する路線で、予想通り乗客は少なく、波風が少々強いことさえ我慢できれば、楽しい船旅である。船は海峡を渡ると、ヴェネツィア本島の北岸に沿って進み、サン・ピエトロ島やアルセナーレ(造船所)の北側を通る。
 船はやがてカナレジオ運河に入り、そして再び大運河に合流して、サンタ・ルチア駅前に到着する。

 とても名残惜しい。ここで死んでもいいという人の気持ちもよくわかる。だが、私には見たいこと、知りたいことがまだまだたくさんあるのだ。先に進もう。

続く
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