ヨーロッパ横断鉄道旅行-第8弾(ミラノ→ヴェネツィア)(15)

ヴェネツィア(3)
9日目

脱出

 いよいよ旅の最終日になった。ホテルをチェックアウトすると、荷物を持ってメストレ駅に向かう。やって来たのは、青地に白の模様が描かれたローカル電車だ。この日は順調に海峡を渡ると、あっという間にサンタ・ルチアに到着する。駅で荷物を預けると、ヴァポレットには乗らず、大通りを歩く。大運河に注ぐ小さな水路を現代のゴンドラ、モーターボートが行き交う。

 案内板に誘われるまま小さな路地に入り込んで行くと、そこには真っ白なお屋敷が建っていた。大運河に面したバルコニーが美しい。
 カ・ドーロというその建物は、15世紀に建てられたゴシック建築で、かつては表面に黄金を施していたらしい。今では美術館になっている館内を見た後は、大運河に面したバルコニーに出て、眺める。階下に下りると、今にも浸水してきそうな大運河の水際に床一面の見事なモザイク画が描かれている。

 もうすぐこの街を離れなければならないことはわかっているが、踏ん切りをつけられないまま、迷宮をさまよう。水路、また水路、いくつ越えただろう。
 ふと空腹を感じて我に返る。やはり私は人の子だった。路地を出て大通りのレストランへ。「最後の昼餐」とばかりに、パスタはポモドーロ、メインは鰻のグリル、そしてお供はもちろん地元ヴェネト州のSoaveだ。

 すっかり満腹・満足した勢いのまま、サンタ・ルチア駅に戻って荷物を受け取ると、西隣のローマ広場へ。ここはヴェネツィア本島のバスターミナルになっていて、ヴェネツィアから各地に向かうバスが集結している。ここから空港へ向かう5番バスに乗る。
 バスは発車するとすぐに海峡に架かる橋を渡る。あの迷宮にとどまりたい気持ちは、「夢の島」を離れていくその眺めと共に吹き消されてゆく。

 着いた空港の名は、「マルコ・ポーロ空港」。はるかジパングから来た者の夢は、この偉大な旅の先駆者にしばらくお預けだ。

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