ヨーロッパ横断鉄道旅行-第8弾(ミラノ→ヴェネツィア)(5)

ムゼイ通り
髭の人々の名残

 ブレーシャで観光するために、まずは荷物を預けたいところだ。しかし、ドイツであれば小さな町の駅でもコインロッカーがあるはずなのだが、ロンバルディア州で第2の都市と言われるブレーシャでもコインロッカーや手荷物預かり所がないのである・・・。ついでに言うと、ミラノ、ローマ、ヴェネツィアなど大都市の駅まで行けば手荷物預かり所があるのだが、イタリアではついぞコインロッカーにお目にかかったことがない。それはイタリアの文化だったり、治安状況が関係しているのかもしれない。
 荷物の件は諦めるとして、次は町の中心部に行く方法だ。駅前には大きなバスステーションがあるのだが、これは長距離バスが中心で、路線バスの姿は見えない。「荷物を持って、徒歩か・・・」と途方に暮れていたところ、駅前に地下鉄の駅らしきものを発見した。これは2012年に発行されたガイドブックにも載っていないから、きっと近年開業したものであろう。

 階段を下りてみると、真新しく広い構内が現れる。ホームの列車側は透明で分厚い壁に覆われている。東京メトロ・南北線などと同じである。
 地下鉄が入線する。警笛を鳴らさなければ入線したことにすら気づかないかもしれない。車両はわずかに3両。静かなのは良いのだが、私はやや物足りなさを感じてしまう。列車のたてる音には、何やらその列車の「威厳」が込められているように思われるからだ。
 列車に乗ると、運転席がないことに気づく。完全に自動運転なのだ。ブレーシャ市街の東部からやって来た地下鉄は、ブレーシャ駅の手前から進路を変えて北に進む。そしてわずか一駅で、ブレーシャの中心部・ヴィットリア駅に停車。私はここで降りる。
 地上に出ると、駅名の由来であるヴィットリア広場になっていて、広場は大きな建物に囲まれている。せっかく地下鉄が利用できたはいいが、ここからは荷物を引っ張って歩いて行かねばならない・・・。

 通りを東に進むと、何やら神殿らしきものが現れる。これは見た通りのローマ時代の神殿である。さらに東に進むと、通りは細くなり、左側には高い壁が連なる。そして、この高い壁で囲まれた建物の入口が現れる。
 サンタ・ジュリア博物館。大きな修道院の跡である。外観からは想像がつかないのだが、この博物館は、古代ローマとその後この地を支配したゲルマン系のロンゴバルド王国の面影を余すことなく伝えているのだ。ちなみに、「ロンゴバルド」とは彼らの言葉で「長い顎髭」を意味するそうで、男性は顎髭を伸ばしていたらしい。ミラノやブレーシャを含む地方名である「ロンバルディア」は、この「ロンゴバルド」に由来している。
 ヨーロッパの修道院ではよくあることだが、もともといくつかの教会群があったところが一つの修道院としてまとめられている。まずはかつてのサンタ・マリア教会へ。暗闇の中に壁画が浮かび上がり、展示ケースの中にはロンゴバルドの最後の王であった「デジデリオ王の十字架」が光っている。広い展示室の一角は一段高くなっている。そこから下を眺めると、ローマのドムス(集合住宅)の遺跡だった。噴水の遺構や、床のモザイクがはっきりと残っている。つまり、かつてのローマ遺跡の上に、ロンゴバルドの人々が修道院を建てたのである。そのため、この辺りから出土したローマの勝利の女神像なども展示されているのだ。
 次いで、サン・サルバトーレ教会へ。ここは1階も2階も壁画で埋め尽くされて圧巻だ。地下にはローマ時代の初期キリスト教の地下礼拝堂(つまり、キリスト教が弾圧されていた時代のもの)がある。

 サンタ・ジュリア博物館を見終わったところで、ホテルに行こうと思ったのだが、博物館の係の人に絵画館を勧められた。ガイドブックによると2012/10時点では閉館中となっていたのだが、「現地の人の情報」に勝るものはないと考えて、行ってみることにした。博物館からは南に500メートルくらい歩いたところにある。
 だが、絵画館に近寄ってみると、やはり工事のため閉館中であった・・・(念のため言っておくと、この日記は2013/8時点のものだ)イタリア、手強し。

 今度こそホテルに行き(もちろん、荷物を持って歩いて・・・)、夕方、身軽になって出かける。
 ヴィットリア広場の北にあるロッジア広場へ。その名の通り、ここにはロッジアがあり、広場を挟んだ向かいには天文時計塔がある。いずれも美しい建物だ。
 広場の裏手には町の大聖堂・ドゥオーモと、その右隣に円形のロトンダ(17世紀に今のドゥオーモが建つまではドゥオーモだった建物)が並んでいる。ドゥオーモ内部は多数の絵画に彩られ、外観に引けをとらない。ロトンダは、今はオープン時間のはずなのだが、なぜか入口は閉ざされたまま・・・やはりイタリア、手強し。

 気を取り直して、少し早い夕食にありつく。ボロネーゼ風のラザニアと野菜がたっぷりのったローストビーフだ。

続く
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