ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(29)

ディアヴォレッツァ・ロープウェーから(2)
吹雪の後に

 10時42分、ティラノ行きの列車が3分遅れで到着する。ようやく凍っていないラーゴ・ビアンコの水面が現れる。辺りが真っ白なせいか、こちらは青みがかった灰色に見える。ラーゴ・ビアンコを過ぎると、山道を下り始める。いくつものトンネル(多くは雪よけのトンネルだ)を抜けると、10時50分にアルプ・グリュムに停車する。私はここで下車する。

 アルプ・グリュムに降り立ってはみたものの、私は困ってしまった。ここから少しでも山道を歩けないかと思っていたのだが、線路を渡ったところに坂道があるのはわかったものの、それがすぐに行き止まりになっている気がした。(後で地図を見ると、実はそうではないことがわかったのだが・・・)それで、なんとなくホームの先に行ってみると、そこには大きなカーブが広がっていた。このアルプ・グリュムを出たところで、線路は長い長いヘアピンカーブを描いて山を下ってゆくのだ。
 そうこうしているうちに、カーブを登って列車がやって来た。サン・モリッツ行きの列車だ。もしもこの辺りの地形を知っていたならば、私はこの列車を見送って、坂の上からヘアピンカーブを行き交う幾多の列車の雄姿を見ることができたであろう。しかし、私はすっかり諦めていたので、そのままこの列車に乗ってしまった。
 列車は再びラーゴ・ビアンコの岸を通って11時22分、ベルニナ・ラガルプに停車。ここで対向列車を待つ。やって来た対向列車は、ベルニナ急行だった。さすがに車内は満席である。11時30分、列車が発車する。11時33分、ディアヴォレッツァに停車。私はここで下車する。

 駅から少し坂を上ったところにロープウェー乗り場がある。もしやと思ってエンガディンカードを使ってみると、ちゃんと改札を通過できるではないか。ロープウェーも無料になるとは、素晴らしい。黒くて大きなロープウェーに乗り、標高約2200メートルの麓から2986メートルの山頂まで一気に上がる。

 だが、というか、やはりというべきか、山頂は吹雪だった・・・。山麓が曇っているのだから、山頂が良い天気のはずがない。辺り一面真っ白で、山々の姿はすっかり隠れてしまっている。ここで諦めて麓に戻ろうかとも思ったが、ちょうど昼食時でもあり、少し待ってみることにした。

 山頂のレストランで食べたのは、スイスの国民食・レシュティだ。刻んだジャガイモをオーブンかフライパンでこんがりと焼き、その上にチーズや卵をトッピングしている。そしていつもの調子でビールを飲む。ここでゆっくり待つのが目的だから、ビールも2杯目に突入。
 だが、ここで異変が起こる。頭がズキズキしてきたのだ。普段この程度の酒量なら、どうということはないのだが、ここが標高3000メートルの高地であることをすっかり忘れていた・・・。高地にいると、アルコールの酔いに加えて高山病の酔いが加わってしまうらしい。

 ようやく頭痛もおさまり、ふと外を見ると、青空が顔をのぞかせているのに気付いた。期待に胸を膨らませて外に出てみる。
 上空の雲はまだ多いが、視界はかなりすっきりしてきた。まだ靄がかかっているものの、山々の雄姿をはっきりと見ることができる。反対側の山々もはっきりと見える。稜線に張り巡らされたリフトのケーブルもよく見える。まだ風は強く、乾いた雪が吹き上げられ、地吹雪となって時折襲ってくる。これはけっこう痛い・・・。

 アルプスのパノラマを楽しんだ後、再びロープウェーに乗る。山を下りながら、山頂とは少し違った角度からパノラマを楽しむことができた。やはり待つことも大事である。

 カーブを縫うようにして上って来た列車が、ディアヴォレッツァ駅に停車する。サン・モリッツ行きの列車は、14時34分に発車する。列車はベルニナ川に沿って山を下りヘアピンカーブを抜けるとモルテラッチに停車。さらに山を下ってポントレジーナを過ぎると、少し広くなったベルニナ川の川岸や、山麓ののどかな平野の中を疾走する。そして15時12分、列車はサン・モリッツに到着する。

続く
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