ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(28)

ベルニナ峠(北)
北と南の間で

 駅には既にティラノ行きの普通列車が入線していた。2等車に乗るが、設備は結構いいし、早朝なのでガラガラだ。座席前のテーブルは、路線図になっている。
 実は、この日はホテルで借りたエンガディン・カードを使う。(2013年時点では、オーバー・エンガディン地方のホテルに2泊以上すると、公共交通に乗り放題となるエンガディン・カードを、宿泊期間分借りることができた。)このカードを使えば、アルプ・グリュムまでのベルニナ線の2等車に乗り放題なのだ。

 8時45分、列車が出発する。出発するとすぐに、右に分岐する。左に分岐すると、前日通ったサメーダンに向かう路線となる。ところが、両者共すぐにトンネルに入ってしまうので、分岐したことには気づきにくい。トンネルを抜けるとツェレリーナの美しい街並みが見えてくる。こちらの路線にあるのは、ツェレリーナ・スタッツという駅なのだが、これは通過する。線路が丘陵の端にあるので坂を上り下りする。少し後になってから気づいたのだが、実は、この列車はリクエスト・ストップの列車だった。すなわちバスと一緒で、乗客が次の駅に停まることをリクエストするか、駅で乗客が待っていない限り、列車は駅を通過してしまうのだ。停車をリクエストする方法なのだが、これは車両間ドアの隣にあるボタンを押せばよい。

 列車は大きく右カーブしてベルニナ川の西岸に出る。川の対岸には、サメーダンからやって来た路線が走っている。列車はプント・ムルガル・スタッツを通過して(川の対岸にはプント・ムルガルという駅がある)、やがて川を渡ってきた路線と合流する。そして8時53分にポントレジーナに停車する。サン・モリッツ、サメーダン、ポントレジーナの3駅を結ぶ路線は、こうして三角形を成しているのだ。列車はポントレジーナに10分停車した後、9時3分に発車する。
 列車はロゼグ川を渡って、山小屋風の駅舎のあるシュロヴァスを通過すると、ベルニナ川に沿って南に進む。9時13分、モルテラッチに停車。ここでは東から流れてきたベルニナ川と、南から流れてきた川が合流しているのだが、南から流れてきた川に沿って歩くと、モルテラッチ氷河に至る。
 そのような地形のせいか、列車はここから大きく北に反転して迸る渓流を渡ると、今度は大きなヘアピンカーブを登って、南東方向に再反転する。きつい勾配をぐんぐん登ると、少し開けたところに出る。辺りは雪に覆われたアルプスの山々に囲まれている。
 ベルニナ・スオットを通過。そして次の駅、ベルニナ・ディアヴォレッツァには停車する。ここはディアヴォレッツァという山の麓にあり、駅前から山の頂上に向かうロープウェイがある。

 列車は次のベルニナ・ラガルプを通過すると、右に左に次々とカーブする。辺りが平坦に見えるので気づきにくいのだが、勾配が相当にあるのだ。当初は茶色い地面の露出が多かったが、次第に雪に覆われていく。それを取り巻く山々は完全に雪化粧をしている。
 列車はレイ・ネイル(黒い湖)の側を通るのだが、その黒い水面は真っ白な雪に完全に覆われて、場所すらわからない。そしていよいよラーゴ・ビアンコ(白い湖)が現れる。確かに真っ白だ。しかし、本来は氷河に削られた岩石の成分によって水が白くなっているのであって、この白さはインチキである(笑)。
 9時33分、ラーゴ・ビアンコ湖畔のオスピツィオ・ベルニナに停車。私はここで下車する。この駅は標高2253メートルの地点にあり、ベルニナ線の中でも最高地点にある。

 湖がまだこんな感じなので、湖畔に出ることはできない。駅から坂を上ってみると、ラーゴ・ビアンコ(のある場所)を一望することができる。さらに坂を上ると道路に出る。
 せっかくなので少し歩いてみよう。数分もしないうちに、ベルニナ峠の小さな標識に行き着く。標高2330メートルの峠は、広大なアルプス山脈を南北に分かつポイントの一つだ。それはヨーロッパを南北に分かつポイントだと言ってもいいだろう。実際、ここから南はスイスの中でもイタリア語圏となるのだから。ディアヴォレッツァとかラーゴ・ビアンコは既にイタリア語である。
 峠からの眺めは雄大そのものだ。南を向けば、高く険しい山々が幾重にも連なり、やって来た方向(西)を振り返れば、道路を取り囲むように真っ白な山々がいつまでも続いている。

 駅に戻ろうとして、思わず足を止める。ちょうど列車がラーゴ・ビアンコの湖畔を行き過ぎていくのが見える。銀世界の中を走る赤い列車も、なかなか絵になる眺めだ。

続く
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