ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(14)

インスブルック市の塔より
借景の街

 暑い。まだ4月の終わり、しかもアルプスのお膝元だというのに、気温は20度もある。駅前からサルールナー通りをまっすぐ進むと、マリア・テレジアが建てた凱旋門が現れる。ここから道を右に折れると、その名もマリア・テレジア通りとなる。沿道にはエルカーと呼ばれる出窓が付き、壁が美しく装飾されている建物が並ぶ。ここをまっすぐ進むと、そのエルカーの最たるもの、黄金の小屋根に突き当たる。
 ここからは狭い路地になってわかりにくくなるが、とにかく直進すると、インスブルックの大聖堂に行き着く。外観内装も、チロルの中心にふさわしい立派なものだ。

 大聖堂の裏手(いや、こっちが裏手なのか?)がハプスブルクの王宮である。この王宮もそうだが、この街ではあらゆる建物の背景に美しいアルプスの山々が姿を見せる。どこを取っても絵になってしまうのだ。
 さて、ヨーロッパではよくあることだが、王宮に着いたものの、見学の入口がどこだかわからない・・・。ずいぶん地味な入口をようやく見つけて中に入る。
 この王宮は、もともとチロル大公が建て、ハプスブルク皇帝のマクシミリアン1世がインスブルックを都とした時に王宮として改築したのが始まりである。その後、マリア・テレジアが再改築して現在の形になった。
 大広間の豪壮さ、小さなプライベートルームの絢爛さは確かにすごいが、この直前にルートヴィヒ2世の「作品」を見てしまった身としては、これすら地味に見えてしまうのだ。

 王宮に隣接して宮廷教会があり、その隣にはチロル民族博物館がある。民族博物館だから地味なのかと思ったのだが、入るや否や、その予想が覆される。まず、博物館の中庭を抜けると、そこは宮廷教会の入口なのだ。もともとマクシミリアン1世の墓所として建てられたのだが、諸事情で本人はここに埋葬されていない。しかし、王族などのブロンズ像がずらりと並び、独特の雰囲気を作り上げている。
 博物館の本館に戻ると、チロルの生活用具だとか、各階層の民家(家屋や家具はみんな木造だ)の再現だったりする。最上階には教会の宝物の他、呪術の道具も展示されている。ミステリアスなBGMが流れ、ちょっとおどろおどろしい雰囲気になったところで、展示室の奥のドアが突然「カチャ」と音をたてて開く!恐る恐るドアの向こうに進むと・・・残念ながら、この先はぜひご自分の目で確かめていただきたい。

 来た道を少し戻り、黄金の小屋根に行く。このテラスは、マクシミリアン1世が目の前の広場で行われる行事を見物するために建てたもので、建物の内部はマクシミリアン1世の博物館になっている。私は博物館に入ったものの、何とテラスに出るのを忘れてしまった・・・
 黄金の小屋根にほど近いところにが立っているので登る。エレベーターはないからしんどい・・・。だが、塔の上から見るインスブルックの街とその背景の山々の景色は、疲れを吹き飛ばしてくれる。

 黄金の小屋根の前を左に折れるとイン川に架かるイン橋に出る。インスブルックという地名の由来となった橋だ。アルプスの雪解け水をたくさん含んで白っぽく濁ったが滔々と流れてゆく。

 今度は旧市街を東に横切って州立博物館に行く。チロルの美術品や音楽の展示が中心だ。宗教画や農民画などの絵画は、想像していたよりもはるかにレベルが高い。音楽はヘッドホンで試聴できるのだが、昔の素朴な聖歌などは聴いていて癒されるものがある。

 いったんホテルにチェックインして、夕方食事に出かける。地ビールの店に入ったのだが、そこにはミュンヘンで食べ損なったヴァイス・ブルストがあるではないか!迷わずこれを注文。「江戸の仇を長崎で討つ」感じだが、とても満足できた。肝心のビールは、こんな暑いときにはとても飲みやすいのだが、今まで濃厚なドイツビールを飲んできた身には、少し薄く感じてしまう。
 ほろ酔い気分で外に出ると、ちょうど日没となり、あの凱旋門がライトアップを始めていた。

続く
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