ヨーロッパ横断鉄道旅行-第4弾(ウィーン→プラハ)(12)

クルムロフ(7)
せせらぎに抱かれた街

 駅からは、くねくね折れ曲がった下り坂になっている。歩行者用の道は、階段がある代わりにまっすぐ伸びている。道の途中から、早くも巨大な城がその姿を現し始める。想像していたよりも壮麗な姿に驚き、そして期待が高まる。
 坂を下りきると小川を渡り、ブディェヨヴィツェ門をくぐる。ここがクルムロフ旧市街の入口である。やはりこの門も異世界への入口であった。街並みは中世以来の姿を色濃く残している。

 まずは、城の前を通り過ぎて先へ進もう。城の前を流れるヴルタヴァ川(モルダウ)を渡る。ここから先が街の中心部である。街の中心・スヴォルノスティ広場を通って、もう一度ヴルタヴァ川を渡る。ここまでがクルムロフの旧市街である。あまり大きな街ではないようだ。

 ここで折り返して来た道を戻る。前方に、城の高い塔が現れる。普通よく見る塔とは全く異なり、表面に鮮やかな装飾が施されている。川を渡って、城の入口・「赤い門」をくぐる。は、入口に近い所にある。さらに先に進むと城の中心部になる。城の内部はガイドツアーで見学できるのだが、かなり混雑していて、待ち時間が長い。
 その時間を利用して先に塔に登る。やはりここも混雑していて、狭い階段を上るのに一苦労する。だが、ようやくたどり着いた塔の頂上から眺める景色は素晴らしい。クルムロフの旧市街は、ヴルタヴァ川が西に湾曲している所にあるのだが、城は湾曲部分の北岸に位置し、その対岸の、湾曲部分に突き出た半島のような所が街の中心である。塔からは、川の北岸を取り囲むように聳える城壁と、川にぐるりと囲まれた密集する建物群がはっきりと見えるのだ。
 塔からの素晴らしい眺めを満喫した後は、下にある博物館で城主の調度品コレクションを見る。美しいボヘミアグラスや陶器の数々にはため息が出てしまう。

 ようやくガイドツアーの時間になった。豪華な調度品、各部屋の内装(とりわけ寝室が面白い)、黄金の馬車、仮面舞踏会の間、などなど、私達の日常とは無縁なだけに、夢見心地の間に時間が過ぎてゆく。
 ツアーが終わり、再び外に出て、城をさらに奥に進む。谷に架かる城内の橋(プラーシュティ橋)からの眺めもとても良い。ここを抜けると庭園に行き着く。
 また街に出て、プラーシュティ橋を下から見上げると、その高さや、何段も積み上げられたアーチ構造に感嘆してしまう。

 夕方になったので、街外れにあるホテルに行く。そして、また日没前に食事に出かける。行ったのは、地元のビール工場が経営しているレストランだ。食事は、あのクネドリーキにベーコン・たまねぎを詰めたものだ。期待の自家製ビールだが、メニューの端に書いているだけだし、種類も2つしかない・・・。しかし、メニュー上で目立たなかった黒ビールは期待通りのおいしさであった。周囲を見渡すと、やっぱりみんなビールばかり飲んでいるように見える。

 今宵もほろ酔いになったところで、日没後の街を歩く。人通りはまばらだ。城はライトアップされていて、が闇夜に青白く浮かび上がる。モルダウのせせらぎを聞きながら、照らし出された城塞を目の当たりにして、私は胸が震えた。酔いなど、どこかに吹き飛んでしまった。

続く
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