ヨーロッパ横断鉄道旅行-第2弾(アテネ→ブダペスト)(16)

ブダの王宮
11日目

ブダ

 朝ホテルを出る。厚いコートにニット帽で寒さから身を守っているものの、露出している耳や頬には容赦なく寒気が襲い掛かる。地下鉄M3に乗り、デアーク広場で下車する。ここから16番のバスに乗り、ドナウに架かるくさり橋を渡る。ブダペストは、ドナウ川を挟んで西側がブダ、東側がペストという2つの町に分かれており、バスはペスト側から出発してドナウを渡り、ブダに入ったのだ。そしてバスは、ブダを代表する名所・王宮の丘の麓に停車する。
 丘の上に登るには、このままバスに乗り続けても良いのだが、私はここで下車してケーブルカーで登ることにする。茶色に塗られたケーブルカーはとてもレトロな感じがするが、各国からの観光客でぎゅうぎゅう詰めにされた状態では、その雰囲気を楽しむどころではない・・・。ケーブルカーは、急勾配のまっすぐな線路をするすると上り、あっという間に丘の上に到着する。

 丘の上から眺めるドナウの景色は本当に素晴らしい。広くてゆったりとしたドナウの流れと、河岸に立ち並ぶ歴史的建造物が一体となって、強烈な印象をもたらす。それは、古代ギリシャという源流から数々の時代を経て、ついに大河となったヨーロッパ文明の象徴のようにも思えるのだ。

 振り返ると、そこには巨大な王宮が聳えている。今では国立美術館になっているこの建物の中に入ってみる。ここには、中世から近代にかけてのハンガリーの絵画などが展示されている。私の感想では、近代以降のコレクションはあまりぱっとしないのだが、中世の教会美術は、当時ヨーロッパの辺境であったこの地の独特で素朴なスタイルをしていて、とても印象深い。
 国立美術館の裏手に回ると、そこは広い中庭になっていて、その奥の建物がブダペスト歴史博物館になっている。ここには王宮の地下室を利用した展示があって、とても面白い。

 王宮から歩いて北に向かう。この丘はけっこう広くて、南北は約1kmもあるのだ。カトリックの国らしく三位一体の像というのが建っているその真正面にあるのが、マーチャーシュ教会である。高さが80mもあるという塔が聳えるこの教会では、歴代のハンガリー王の戴冠式が行われていた。格式の高い教会らしく、内部は華麗な装飾で覆われている。
 教会の裏手には、漁夫の砦という何ともメルヘンチックな要塞が建っている。ここからもドナウの雄大な景色を眺めることができる。

 王宮の丘には、かように歴史的建造物で満ちているのだが、中には娯楽施設もある。地下迷宮はその最たるものだ。ここは以前からあった地下の洞窟を利用したものだ。中に入ると、ものすごい湿気が結露して、眼鏡が曇って前が見えない・・・。ようやく結露が消えて洞窟の中に進んで行くと、原始人の壁画?やら謎の人物像など、思わず「?」と思ってしまうものが随所にちりばめられ、最後にはとんでもないオチが待っている。
 迷宮を出ると、そこはドナウとは反対側の丘の中腹だった。丘の上に戻るには、坂道を歩いて上らねばならない・・・。その途中、ワイン博物館なるものを見つけてしまった。もちろんワインの製造工程などを見学させてくれる場所なのだが、ハンガリーワインのテイスティングコーナーがあり、博物館は見ないで、そっちに行く。貴腐ワインとして名高いトカイ産ワインも堪能する。空きっ腹にワインを投入してしまったため、すっかり酔いが回る・・・。

 帰りは、歩いて丘を下る。路面が凍結している上に酔っ払っているので、一歩ずつ慎重に。くさり橋のたもとまで着いた時には、もう日没の時刻が迫っていた。ゆっくりと橋を渡ってペスト側に戻って来ると、橋や王宮はライトアップを始めていた。ドナウの岸辺が光の装飾で彩られる。

 日没と共に空気は一段と冷え込み、雪もちらついてきた。私は持っていた折り畳み傘を取り出すが、街を行き交う人々の多くは傘もささずに歩いている。年末という時期のせいか、街のあちこちでイルミネーションが華やかだ。
 それにしても寒さと空腹が身にこたえる。ここはブダペストの中心部だから、通りにあるレストランはびっくりするほどの高級店ばかり・・・。ようやくデアーク広場近くの商店街でリーズナブルなレストランを見つける。ピザが中心の店だったようだが、今の気分はピザよりもグヤーシュだ。そして性懲りもなくワイン

続く
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