ヨーロッパ横断鉄道旅行-第2弾(アテネ→ブダペスト)(12)

ベオグラード旧市街(5)
8日目・9日目

白い街

<8日目>
 朝、ホテルを出てカレメグダン公園に向かう。途中、旧市街を通る。石畳の遊歩道になっているクネズ・ミハイロ通りを中心とした旧市街には、19世紀の町並みがそのまま残っており、古くて上品な色づかいの歴史的建造物が立ち並んでいる。ここには、大きな銀行や各国の大使館も数多くある。

 旧市街を抜けるとカレメグダン公園だ。ここはドナウ川とサヴァ川の合流点側にある丘であり、紀元前の時代から戦略上の要衝として要塞が建っていた場所だ。中に入ると、いかにも要塞っぽい建物が見える。さらに奥に進むと、大きな時計台が聳えている。公園の中では、犬を放し飼いにして自らもくつろぐ人々の姿が多く見られる一方で、巡回中の警官や兵士の姿も多く見える。もしかするとここは未だに現役の要塞なのだろうか?
 丘の頂上からは、ドナウ川とサヴァ川の合流点が良く見える。どちらも巨大な船が行き交うことのできる大河川だ。ベオグラードがこの地形ゆえに発達した町であることを改めて納得する。頂上からは、来た方向とは逆にジンダン門レオポルド門を通って川岸へと下りてゆく。こちらの道の方がはるかに急峻である。道沿いには、聖ルジツァ教会聖ペトカ教会という由緒ありそうな教会が並んでいる。川岸に出て丘の方を見上げると、ここが本当に急峻な地形になっていることがよくわかる。

 サヴァ川沿いに歩くと、船が多く停泊している所が見える。ここはベオグラードの港であり、ドナウ川を航行する国際船も停泊している。また、貨物用の引込み線も存在する。ドナウ川を周遊する観光船もここから出ているはずなのだが、さすがに真冬のことゆえ休業していた(川風に吹かれるには寒すぎる!)。

 朝方は晴れていてコートも不要なくらい温かかったが、昼頃から小雨が降り始め、気温も下がってきた。お腹も空いたし暖も取りたいので、川岸から坂を上がり、セルビア正教の大聖堂の前を通って旧市街に戻る。通りのカフェでは、こんな天気にもかかわらず、多くの人々が屋外の席でくつろいでいる。もちろんそこには簡易な屋根も暖炉もあるけれど、私なら迷わず屋内に入ってしまうだろう。文化の違いというのは本当に面白い。
 とあるレストランに入って昼食を取る。魚介のプレートは、見た目の安っぽさとはうらはらに意外においしい。日本でもおなじみのカニ風かまぼこは、焼いてタルタルソースをつけるとビールに非常に良く合う。骨付き豚肉と野菜のシチューは期待通りの味だった。体はすっかり温まったが、雨は止むどころかますます強くなる。しばらくして見切りをつけ、体の冷めないうちに急いでホテルに戻る。


<9日目>
 前日の雨は、やはり寒波を運んできたようだ。これまでの温暖さがまるで嘘のように寒い。コートをしっかり着込んでホテルを出る。外の温度計は0度を示している。
 ベオグラードには長い歴史があるが、その割には主だった史跡が少ない。それは、この町が何度となく破壊され、再建を繰り返してきたからだ。そんなわけで、この日は特に計画もなく、面白そうな所を探すことにした。

 国立博物館はずっと休館しているので、代わりに民俗学博物館に行く。その名の通り、セルビア各地域の衣装・家具・農具などを展示している。
 しばらく旧市街を散策しながら、市内を走るトラムを見る。川岸からカレメグダン公園の丘陵を一気に駆け上がるトラムは特に面白い。
 セルビア正教大聖堂近くのリュビツァ妃の屋敷に行く。ここは、19世紀にオスマン・トルコからセルビアの自治を獲得したミロシュ・オブレノヴィッチの屋敷で、リュビツァは彼の妻である。この屋敷は1階部分がトルコ風、2階部分が西欧風のレイアウトになっていて、階段を上り下りするだけで別世界に移動する感じがする。さらに、リュビツァ妃を含めたここの住人達の肖像画もトルコ風と西欧風の2種類展示されていて、同じ人の肖像画でも全く別人に見えたりする。トルコというヨーロッパとは異なる文化圏の王朝に支配されたバルカン半島の歴史を象徴しているようで、非常に興味深い。

 正午を過ぎる頃から雪がぱらつき始め、気温は上がるどころか下がってマイナス1度になっていた・・・。まだ色々と歩き回りたい気もするが、やはりこの寒さには耐え難い。ということで昼食。チキンのリゾットは、これだけで相当に熱い。ソーセージのスープはダメ押しだった。おいしいのだが、ややしょっぱいのが難。
 雪は強く降るばかりで、とても止みそうにない。仕方なく、そのままホテルに退散する。

 翌日はベオグラードを去ることになっていた。だから夜の寒さをこらえて再び外に出る。期待通り、旧市街ではクリスマスイルミネーション一色だった(世界の多くの国ではもうクリスマスは終わっていたのだが、セルビアのクリスマスは1月なのである)。風格ある建物も、ライトアップされると昼間とは別の表情になる。
 そして夕食。軽めのスープ魚(マス?)のグリル。そして赤ワイン。もう満腹だ。

続く
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