ヨーロッパ横断鉄道旅行-第1弾(イスタンブール→アテネ)(6)

4日目

ウズンキョプリュ→ピシオ

 国境ならば何度も越えてきたが、真夜中に越境するのは初めてだ。だから私は、その手続きがどのように行われるのか興味津々であった。しかし、と言うか、やっぱりと言うべきか、車掌と国境係官が連れ立って各コンパートメントのドアを激しくノックし、乗客を文字通りたたき起こすということから手続きは始まったのであった・・・。
 まずはコンパートメントにやって来た係官にパスポートを渡す。しばらくすると、税関の職員が荷物の検査にやって来る。越境にはつきもの?のトラブルも起きたようだ。同じ車両に乗っていたある一家は、子供のパスポートがないことが露見して(おそらく国境オフィスに)連行され、しばらく戻ってこなかった。
 私のパスポートも無事に戻ってきて、列車が出発したのは2時37分である。国境の駅で約70分の停車というのは短いようだが、思えば客車はわずかに3両なのだ。

 今まではやや南西向きだった線路だが、ウズンキョプリュを発車すると、くねくねとカーブしながら北西へと進路を変える。電灯など何一つ見えない草原は、月明かりに照らし出されて、少し幻想的な光景になる。列車は相変わらず徐行している。短い鉄橋を渡る。次いで、もう少し長い鉄橋を渡る。渡り終えるとトルコ軍の詰所を通過する。そして、また鉄橋。前2つの鉄橋よりも長く、しかも列車のスピードはさらに落ちる。
 鉄橋を渡り終えるとギリシャ軍の詰所を通過する。ついにギリシャに入ったのだ。そして直前に渡った川は、トルコ・ギリシャの国境を流れるメリチ川(ギリシャ名ではエヴェロス川)だったのだろう。しばらくして、列車はギリシャ側の国境の駅・ピシオに到着する。時刻は3時ちょうどだ。なお、トルコとギリシャの間には時差がない。

 ここでもウズンキョプリュと同じことが繰り返される。再びたたき起こされた乗客達はパスポートを回収され、税関のチェックを受ける。ここでは入国審査なのだから時間がさらにかかると思いきや、パスポートは意外に早く返却される。だが、列車は全く動こうとしない。
 4時3分、反対側のホームに別の寝台列車がやって来る。驚いたことに、この列車と進行方向が同じだ。手元の時刻表を見ても、後続列車の存在は確認できない。
 そうこうしているうちに、4時27分、この列車が先に発車する。だが、進行方向が逆転し、私の乗る3号車が先頭になってしまったのだ。

 しばらく考えて、ようやく事情を理解できた。トルコから来る線路と、テッサロニキから来る線路は、ピシオ駅の南側で合流し、北側にあるピシオ駅へと向かっているのだ。イスタンブールからテッサロニキへ向かう列車も、その対向列車も、共にピシオで折り返さねばならない。(ちなみに、ピシオから北にも線路は続いていて、トルコとの国境近くにあるディケアに通じている。)ここは単線区間だから、対向列車を待たねばならない。つまり、先ほどピシオで見た列車はテッサロニキからイスタンブールへ向かう列車なのである。

 列車が越境する一部始終を見届けて、私はようやく眠りにつくことにした。

続く
目次へ

"ヨーロッパ横断鉄道旅行-第1弾(イスタンブール→アテネ)(6)" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント