甲信縦断鉄道旅行(10)

懐古園より千曲川を臨む
遊子悲しむ

 小諸の駅前に出ると、向こうの方から威勢の良い掛け声が耳に響いてくる。次第に掛け声は大きくなって、やがて神輿が姿を現す。この日は小諸の夏祭りだったのだ。

 高架橋を渡って駅の反対側に出ると、懐古園(小諸城跡)の入口、三の門はすぐそばだ。本来は大手門が入口となるはずなのだが、大手門の跡は線路を挟んだ反対側、すなわち駅側にある。ちょうど2つの門の間を線路が横切っているのだ。
 この城が変わっている点はもう一つある。それは、市街地より低い場所に建てられていることだ。小諸の市街地は、千曲川岸の崖の上にある。城はこの崖の中に建てられているために、市街地より低くなっているのだ。だから、地上の道路から懐古園を訪れる人は階段を下りて、この三の門に至るのである。

 中に入ると、風格のある石畳の道が続く。大きな石垣も見える。在りし日の城の姿に思いを馳せずにはいられない。藤村記念館の脇を抜けてさらに奥へ進むと、「小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ」で始まる島崎藤村の『千曲川旅情の歌』の碑が建っている。碑の側には展望台があり、そこから崖下の千曲川を一望する。空は灰色の雲に覆われているけれど、千曲川は昔と変わることなくゆったりと流れている。

 園の中央、本丸の跡は、懐古神社となっていて、この時期(7月中旬)関東では枯れてしまったアジサイの花が、小雨の中で元気よく咲き乱れていた。

続く
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