シルクロード鉄道旅行-第5弾(アルマティ→シムケント)(7)

コジャ・アフメド・ヤサウィ廟(2)
トゥルキスタン

 駅から伸びる通りから眺める光景は、アルマティとは異なっている。街の規模が違うことはもちろんだが、ここにはアジア的なのんびりさが漂う。ようやく中央アジアに来た実感がする。
 通りは大きな広場の前で三方向に分かれる。駅からの正確な地図を持たない私は、ここで道に迷う・・・。とりあえず広場の奥にある何かのモニュメントの方に行ってみる。近寄って見ると、それは旧ソ連製ミグ戦闘機だった。どうしてこんな所に置かれているのか?それはともかく、このミグが地図に載っていたおかげでようやく現在地がわかり、大きなロータリー前のホテルにたどり着く。

 ホテルの前では、ガイドさんと運転手さんが既に待っていた。早速出発する。時刻は9時30分過ぎだ。車はシムケントの街を抜けて北へと向かう。平地も丘も、全て薄い緑一色だ。沿道には馬・牛・羊・山羊、そしてラクダまでもが多数放牧されている。薄緑の大地の中に、濃い緑の土地がポツンと島のように浮かんでいる。このような土地は人の住む集落で、ここだけ木が生えているのだ。まさにここは草の海である。放牧された動物達は、集落の中にも遠慮なく入り込む。道路を横断するのは当たり前(道路の見通しが良すぎるため、事故はあまり起こらないようだ)。ガソリンスタンドを徘徊する牛、道路を逆走する牛、バス停の建物に住みつく馬などなど・・・。この国にサファリパークは不要であろう。(実はシムケントにも動物園があり、そこには主に猛獣がいるらしい。)

 このような自然味あふれるドライブが2時間ほど続き、再び大きな町に入る。トゥルキスタンである。町の一角に見える巨大なドーム状の建物、それがコジャ・アフメド・ヤサウィ廟だ。コジャ・アフメド・ヤサウィは12世紀のイスラム神秘主義の指導者で、長くこの地に住んだ。この廟は、それを記念して14世紀末にティムールによって建設されたものである。一度は老朽化したが、トルコの支援により大規模な修復が行われ、世界遺産に登録されると共に有名な観光地にもなった。
 水色一色のドームも素晴らしいが、壁面に貼り付けられた青を基調とするタイルの装飾も見事である。この壁面に触れながら人々が廟の周りをぐるぐる回っている。こうすることで神聖なパワーをもらえるのだそうだ。
 中に入ってみる。女性は頭をスカーフで覆う必要があり、持参していない人には入口の所でスカーフをレンタルしている。見上げると吹き抜けになった高い天井があり、床にはティムール寄贈と言われる巨大な鍋がある。一時期サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に収蔵されたが、最近返却されたらしい。奥に進んで祈祷室・台所・図書室・会議室などを巡る。いずれも大きくて立派な部屋である。
 廟の中には多数の聖人の墓(小さな石碑が安置されている)があるのだが、とりわけヤサウィの墓の前では大勢の人々が祈祷している。皆、日本では滅多に見たことのない真剣な表情だ。私は彼らにシンパシーは感じないけれど、そうした表情に出会うと何か心打たれるものがある。

 ヤサウィ廟の近くにはクルウェト地下モスクがある。このモスクは、63歳(ムハンマドが死んだ年齢)になったヤサウィが地下に隠居した場所だ。数十人が入れるほどの広さがあり、井戸や風呂なども整っている。ここで弟子達としばらく修行したヤサウィは、モスクの奥にある穴(それもちゃんと残っている!)にさらに潜って行ったと言う。

 ヤサウィ廟の周辺には巡礼者のためのサウナ跡(現在では風呂博物館)や廟を守るための立派な城壁もある。城壁の真下と外側に別々に博物館があり(統合しないのはなぜだろう?)、周辺から出土した陶器やコイン・ヤサウィ廟のミニチュア・都市の復元図などを展示していて、アルマティの博物館よりも内容が充実している。

 草原の道を再び通ってシムケントに戻る。ぶっ通しで観光していたので、途中で遅い昼食をとる。食べたのは小鳥の丸焼きや馬肉のソーセージ。カザフスタンで伝統的に食べられているものらしい。もちろん、主食のナンや羊のスープも一緒だ。とてもおいしいのだが、塩味が強いため、毎日食べ続けるのはちょっとつらい・・・。

 夕方シムケントのホテルに戻り、初めて部屋に行く。エレベータがなく、荷物を持ったまま階段を上る。部屋の鍵はもちろんアナログだが、開け方を理解するのに一苦労。鍵は奥まで差し込んではならず、鍵の突起部分と錠の金具が噛み合う位置に合わせる必要がある。しかも、うまく噛み合ったとしても1回で開くことはなく、再試行を数回繰り返す必要があるのだ・・・。
 鍵がこれだから、部屋の設備は推して知るべし。今まで見たことのない旧式の水洗トイレ、ボロボロのトイレットペーパー、巨大だが壊れた冷蔵庫・・・。
 外からはアザーンを思わせる歌謡曲が流れてくる。通りの屋台に人々が集まっているようだ。夜は賑やかに更けてゆく。

 疲れていたのでぐっすり眠っていたが、夜中に大きな音がして目を覚ます。何と土砂降りの雨だ。この地方では珍しいことだ。最上階の部屋にいる私は雨漏りが心配になって、思わず貴重品を枕元に引き寄せる。だが、雨漏りするほどにはホテルも老朽化していなかったようだ。

続く
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