ときわ路鉄道旅行(13)

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内郷→大津港(常磐線)
五浦海岸

 10時15分、上野行き普通列車に乗る。列車はいわき市をぐんぐん南下して、勿来に停車。ここを出ると、白河と並ぶ陸奥への関門、勿来の関を横目にして再び茨城に入る。そして県境の駅、大津港に到着。10時38分。

 大津港駅からは平日ならばバスがあるようなのだが、休日のこの日には全く便が無い。タクシーに乗って海岸に向かう。5分ほどで五浦美術館に到着。五浦海岸を見下ろす高台に立つこの真新しい美術館には、岡倉天心や日本美術院に関する資料が豊富に展示されている。展示されている絵画はそれほど多くないが、たまたま企画展示されていた神戸の「須磨御殿」の襖絵(作:木村武山)は非常に良かった。素人目にも、そのダイナミックさと繊細さが伝わってくる。
 美術館を出て、遊歩道沿いに海岸を南下する。強い風が吹き付ける。その風に乗って波が陸地に押し寄せる押し寄せる波は巌に当たって砕ける。そんな日本画にぴったりな風景を毎日見て暮らす画家達がいた。ここは、そのような画家達の夢の跡だ。
 この五浦の地に日本美術院を創立した岡倉天心は、海岸近くの草むらにひっそりと眠っている。天心の墓のすぐ向かいに、彼の邸宅がある。今は茨城大学の五浦美術文化研究所になっている。正面の長屋門から中に入ると、天心記念館を左手に小道が海の方へと続いている。海に突き出た小さな岬、その先端に六角堂が立っている。文字通り六角形の建物で、内部は畳敷きの6畳程度の小さな部屋だ。見渡せば青い空と海、だが激しく打ち付ける波は大音響と共に目の前でたちまち真っ白に変わってしまう。感動と恐怖が同時にやって来る。
 天心は、この六角堂で読書したり、ここから釣り糸を垂れていたと言う。羨ましいのを通り越して、ため息しか出ない。せめて私は、この景色を写真と共に心に刻もう。

 六角堂の近くにあるホテルの露天風呂に入る。青空の下、五浦海岸を一望しながら湯に浸かる。心は空に海に溶けていきそうだ。

続く
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内郷~大津港


勿来の関


五浦海岸

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