立山・黒部 水流紀行(9)

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宇奈月←→欅平(黒部峡谷鉄道)

 富山地方鉄道の宇奈月温泉駅を出て南東にまっすぐ進むと、黒部峡谷鉄道の宇奈月駅がある。(実際、両者のレールは接続している。)雨天にもかかわらず大勢の人が詰めかけているのは前日のアルペンルートと全く変わらない。
 黒部峡谷鉄道はトロッコ車両を機関車で牽引して運行しているのだが、トロッコ車両の種類には普通・特別・リラックス・パノラマの4種がある(2006年7月時点)が、列車によって牽引する車両の種類が異なるので注意が必要だ。普通車の切符を買った場合でも、乗る列車と車両は指定されている(座席は指定されていない)。私はさっそく普通車の切符を買ってホームに向かう。
 普通車とは、要するに屋根はあるが窓の無い車両である。改札口の混雑にもかかわらず、普通車の乗客は思ったより少ない。窓の付いている普通車以外の車両は団体客で占められているようだ。私は端の席を簡単に陣取ることができたものの、小降りとは言え降り止まない雨の直撃を受けることになった。

 9時21分、列車が出発。宇奈月駅を出ると、すぐに黒部川に架かる新山彦橋を渡ってトンネルに入る。トンネルを抜けると右手に宇奈月ダムが現れる。柳橋に停車。駅前には西洋の城のような新柳河原発電所が建っている。この後も多くの駅に停車するが、それは列車の行き違いのためであり、5月~11月に一般客が利用できるのは終点の襷平を除けば黒薙と鐘釣の2駅のみである。それ以外の駅は、川沿いのダムの関係者用のものなのだ。
 列車は森石を出ると、森石橋を渡り、まもなく黒薙に到着。この近辺には温泉があるのだが、この日は雨のため温泉への道が通行止めであった。黒薙を出ると、すぐに後曳橋を渡る。深い谷川に架かっており思わず後ずさりしそうなので、この名がついたそうだ。確かに下を覗くと、泥流となった黒薙川がはるか下を轟々と流れていてゾッとする。
 いくつものトンネルを抜ける。出入口はコンクリートで固めてあるものの、中は岩盤がむき出しになっている。列車のたてる轟音が岩盤にこだまし、壁にはね返された空気が風となって車内を勢い良く拭き抜ける。トロッコ列車の醍醐味ここにあり。
 笹平を過ぎて出平に停車。駅の前には出し平ダムが見える。上述のように、この鉄道はダムの関係者にも利用されているのだが(と言うより、そもそもこの鉄道はダム用に作られ、それが観光用にも使われているだけなのだが)、雪のために列車が運行できない時は冬季歩道と呼ばれる歩行者用のトンネルをひたすら歩いて行くらしい。出平駅の周辺には、この冬季歩道が地上に露出している。
 黒部川の対岸には「ねずみ返し」と呼ばれるほぼ垂直に近い岩壁が現れる。そしてまもなく猫又に到着。対岸には黒部川第2発電所が見える。上流に向かうにつれ、黒部の流れはいっそう急になる。雨水を含んでますます荒ぶるばかりの川の轟きは、列車の音さえもかき消してしまう。
 やがて列車は東鐘釣山を左手に見て鐘釣橋を渡る鐘釣に到着。この駅は前後を勾配区間に挟まれていて、本線上にホームに十分な水平区間が確保されないため、ホーム用に側線を作って、スイッチバック方式でホームに出たり入ったりしているという変わった駅だ。そしてここからは、黒部渓谷の万年雪を見ることができる。
 列車はさらに山道を登り、小屋平ダムのある小屋平を通って、終点の欅平に到着。10時39分。駅の目の前には黒部川第3発電所が見える。欅平から先は我々一般人は進めないが、ここから「高熱隧道」として知られる高温の岩盤の中を貫くトンネルを通って、あの黒部ダムの下へ通じる鉄路が確かに存在するのだ。

 欅平では帰りの列車の予約をしなければならない。当初は周辺の温泉に入ったりして長居するつもりだったのだが、雨天で周辺の道路が通行止めになったので早めに切り上げることにした。欅平駅から坂を下りると、祖母谷川黒部川の合流点に架かる奥鐘橋がある。橋を渡った所から先は、もう通行止めだ・・・。がっかりする人間達をよそに、川は轟々と流れて行く。欅平駅の展望台からは、深い深い黒部峡谷の姿がよりはっきりと見える。

 11時46分、帰りの列車が出発。見える景色は往きと変わらないが、見どころを既に把握している分、余裕を持って写真を撮れた。13時4分、宇奈月に到着。

続く
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宇奈月~欅平の全体図


宇奈月


欅平

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