大井川鉄道の旅(4)

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千頭→井川

 さわやかな風が新緑の香りを運ぶ。列車は奥大井の渓谷を走る。蛇行する大井川に沿って、いくつものカーブとトンネルを通過する。通勤電車がこんな風であったら、毎日がどんなに楽しいことだろう。
 アプト市代に到着。大井川ダムに面するこの駅で、いよいよアプト式機関車連結する。アプト式とは、機関車とレールの双方に歯車がついていて、その両者を噛み合わせて急勾配を登る方法である。大井川鉄道におけるアプト式の区間は、ここアプト市代から隣の長島ダムまでのわずか1.5kmだが、その勾配たるや90/1000というから驚きである。つまり、1000m進むと標高が90m高くなる坂道なのだ。
 アプト式機関車を連結した列車は、力強く坂道を登って行く。やがて右手にコンクリートの要塞のような長島ダムが姿を現し、列車はダムに隣接する駅に停車。アプト式機関車の出番はここまでだ。用を終えた機関車は誇らしげに去って行った。
 再び小さな機関車に牽引された列車は東へ向かい、レインボーブリッジを渡って奥大井湖上に停車。この奥大井の「レインボーブリッジ」は、奥大井湖上駅を挟んで、長島ダムのダム湖に架かかる2本の赤い橋である。ダム湖の水位が上昇した時は、線路のすぐ下まで水が迫って来るそうだ。この橋からは、ダム湖のほとりの線路跡を見ることができる。この線路跡は、かつての井川線の線路なのだ。長島ダムの建設により、線路は現在のルートに変更された。ダム湖の水位が上昇すると、この線路跡も水没してしまうらしい。
 レインボーブリッジを渡り終えると列車は北へと進路を変え、接岨峡温泉を通り、今度は関の沢鉄橋を渡る。この鉄橋は、底からの高さが100mを超える。見下ろすと底にはきれいな沢が見えるが、景色を楽しむよりも今は恐怖心の方が上である。鉄橋を渡ると閑蔵に停車。井川ダムの建設時には、この付近に建設関係者が多く居住していたそうだが、今では周囲には人の気配が見当たらない。そして、いよいよ列車は終点の井川に到着。深い山の中、1つだけのホームに停まっている列車以外は何も無いその駅は、「果て」にふさわしく、もの寂しい駅であった。

続く
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千頭~井川


アプト市代~長島ダム


奥大井湖上


関の沢

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