ヨーロッパ横断鉄道旅行-第15弾(マルセイユ→バルセロナ)(5)

宮殿(1).jpg
捕囚

 予約していたホテルはのすぐそばだった。さすがに午前中だから、荷物さえ預かってもらえればいいと思っていたが、行ってみると運よく部屋が空いたとのことでチェックインすることができた。しばらく休憩して出発。

 駅の北側を走る幹線道路を渡ると、いきなり城門が待ち構えていた。そして、城門の左右には見事な城壁が連なる。ここでまず「えっ!」と思った。
 城壁の中の街のメインストリートの沿道には、豪勢な外観のホテルオペラ座が立ち並ぶ。何だか頭が混乱してきた。こういう街並みを見るのはもちろん好きだ。だが一方で、「こんなはずはない」という思いがムクムクと湧いてもくるのである。

 通りはやがて、広場に至る。そこで目の前に聳える何かを見たとき、「嘘だろ!」と私は心で叫んでしまった。広場に面して建つその巨大な宮殿は、「囚われて」いたはずのローマ教皇の住まいだったのだから。

 時は14世紀、ローマ教会とフランス王の対立の中でローマ教皇がその居所をアヴィニョンに移してしまった。これを「教皇のバビロン捕囚」という。

 と、私は高校の世界史で習った。当時の私は単にこの1行の説明を覚えただけで、アヴィニョンがどんなところか、そもそもどこにあるのかすら全く知らなかった。ましてや「教皇のバビロン捕囚」という言葉自体が、フランス寄りのアヴィニョン教皇に対する批判側からの揶揄であったこと、などは知るよしもなかった。その結果、「バビロン捕囚」の意味を真に受けてしまい、「アヴィニョンの教皇は囚われの身同然のみじめな暮らしをしていた」と長年勝手に思い込んでいたのである。

 感動と違和感が激しく入り混じったまま、法王庁宮殿の中庭に入る。中庭は巨大な回廊に囲まれている。
 建物の中に入る。広いホール礼拝堂彫刻とフレスコ画が次々と現れる。教皇がローマに戻って以降も何度も改築が行われ、またフランス革命の混乱もあって、残念ながら豪華な内装は残っていないが、そのことでかえって建物や壁面そのものの造形美が強調されるように思う。
 極めつけは、地下室だった。その奥まったところの床から光が漏れている。近づいてみると、床石がめくり上げられている。この床下には、教皇の秘密の金庫があったそうだ。「アハハハハ・・・」囚われていたのは私だった。目に見えない思い込みの鎖が、氷のように跡形もなく溶けてゆく。

 屋上のテラスに上がる。ここからは宮殿の高さと威容を改めて確認できるし、アヴィニョンの街並みの眺めも素晴らしい。

 多くの美術館・博物館と同様ここも出口付近にショップがある。ここにはシャトーヌフ・デュ・パプという地区のワインが売られていた。「パプ」とは教皇のことであり、ここのブドウ畑はアヴィニョン教皇領だった。つまり、かつて教皇に献上されたワインということだ。買うかどうか大いに迷ったが、値段も高めではあり、この後の街歩きのことも考え、後回しにしようと出口を出てしまった。ところが、ここは出口からショップに入ることはできない構造だということに、外に出てからはじめて気づいたのである・・・。

 宮殿の裏手は狭い通りで、そのせいで高く聳える宮殿の壁がいっそう見るものを圧迫してくる。そして、出口が裏手にある施設の場合はたいていそうなのだが、自分のいる位置がどこなのだか見失ってしまうのだ・・・。その時、観光客向けのミニトラムが通り過ぎる。あれについて行けばメジャーな場所に出られるだろうと考えて、ついて行く。そして予想通り、広場に通じる通りへと出ることができた。

 南仏はラベンダーの産地である。沿道に点在する土産物店に立ち寄りながら、気が付くとラベンダーのお土産をいろいろ買っていた。そして街の北側、ローヌ川に面する城門に至る。門の外にはまた幹線道路が走っている。門から右側を眺めると、城壁につながった橋が見える。「アヴィニョンの橋で踊ろよ」で知られるあの橋、サン・ベネゼ橋である。橋に登るには入場料が必要だ。
 登ってみると、意外と幅は狭い。そして途中で行き止まりになっていて、対岸に渡ることができない。(行き止まり地点から振り返ると写真のような景色になる。)橋としては超芸術トマソン状態とも言えるが、観光地としてしっかりお金を稼いでおり、ちゃんと修復もされる(なぜ対岸とつなげる修復がなされないのか?)というなかなか稀有な存在の橋である。橋から眺めるローヌ川は、とてもゆったりと流れている。

 また街に戻り、昼食。前菜は野菜のタルト(スパニッシュオムレツをパイ生地で包んだ感じ)、メインはほうれん草のラザニア、ワインはプロヴァンスの白だ。

 法王庁宮殿北側のプティ・パレ美術館へ。場所が場所だけに宗教画のコレクション、それもイタリア製が多い。しかし、ここに来る前にイタリアで同じような絵画をたくさん見てしまったせいで、あまり心動かされるものはなかった。

 法王庁宮殿の側を通りがかった時、またワインのことが気にかかりだした。しばらく迷った末、意を決して入口に向かう。チケット売り場で「ショップに行きたい」と伝えると、ショートカットで(もちろん他のエリアに行けないように)ショップに通してもらった。結局"La Fiole du Pape"という赤ワインをアウトレット価格(通常の1/4くらい)で購入。

 さらに通りを南に進んで、カルヴェ美術館へ行く。本来2階建てなのだが、残念ながらこの時は2階が工事中で入れず、その代わり入場料が半額であった。それでも、彫刻・エジプト出土品・古典絵画・フランドル絵画などコレクションはバラエティーに富んでいて、良い作品も多かった。

 ホテルに戻ると、疲れ切ってそのまま寝てしまった。まだ行ってみたいところもあったのだが・・・。

続く
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