ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(13)

ヴィルフランシュ駅
海鉄

 ロクブリュヌの中世の村から山を下りて駅に戻る。11時57分、予定よりやや遅れてニース行きの列車が到着したので、これに乗る。車窓はトンネルの黒または海の青で染められる。
 12時20分、ヴィルフランシュ・シュール・メールに停車。私はここで下車する。「シュール・メール」(海に面した)の名の通り、駅の中から海が見える。ヴィルフランシュは、東のサン・ジャン・カップ・フェラという小さな半島と西のニースに挟まれた入り江の奥にある。ニース・ヴィルからわずか2駅にもかかわらず、とても静かな(まだ夏のシーズンに入る前という事情もあろうが)海辺の村である。

 まずは西側の海岸を歩く。海水浴客もいるにはいるが、まだそれほど多くはない。だからランチタイムにもかかわらず、海辺の飲食店はガラガラだ。高級店はランチタイムでもびっくりするくらい高いので、「軽食」も提供しているカフェに入る。ところが、「軽食」たるカルボナーラがびっくりするくらいおいしい!
 海岸に出て入り江の奥を眺めると、そこにはまずビーチがあり、その上に線路がある。その線路の上を列車がちょうどヴィルフランシュに停車する。海岸リゾートと鉄道がみごとに溶け合う景色だ。

 今度は駅の裏手に回って坂を上る。山の中腹を通る幹線道路に行くためだ。を上から眺める。青のグラデーションを線路が囲む。こんな路線なら毎日でも乗りたい・・・。

 幹線道路に出ると、バス停に向かう。そこから81番の市バスに乗る。バスは、東のサン・ジャン・カップ・フェラに向かう。ところが、大勢の乗客が降りるのにつられて、目的地の1つ手前のバス停で降りてしまった・・・。が、結果的には美しい海と瀟洒な別荘の数々を歩きながら眺めることができたので良かったのかもしれない。
 しばらく歩くと、こうした別荘群の中でもおそらく「群を抜く」別荘に行き着く。それがロスチャイルド邸である。かつてヨーロッパ有数の富豪であったロスチャイルド家の別荘らしく、優雅な部屋の数々と庭園には感嘆するしかないが、それでもヨーロッパ諸侯のそれに比べるとつつましく見えてしまうのは、諸侯とも取引の多かったロスチャイルド家の「遠慮」だろうか?喉が乾いたので、喫茶室で一休み。束の間のひと時、大富豪気分?でヴィルフランシュ湾を眺める。

 帰りはロスチャイルド邸のすぐそばにあるバス停から、81番の市バスに乗る。16時を過ぎたところだが、もう夕方のラッシュ?らしくバスは非常に混んでいる。さらに道路も渋滞してくる。
 というわけで、ヴィルフランシュ駅近くのバス停で降りるつもりだったが、その手前のバス停で降りた。そして、これがまた当たる。西日がヴィルフランシュ湾の西側を照らす時刻だったから、そこを上から眺めるには良いタイミングだったのだ。そして、トンネルとトンネルの間の線路と駅の姿もよく見える。

 16時56分、名残惜しい気持ちでニース行きの列車に乗る。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第13弾(ミラノ→ニース)(12)

ロクブリュヌ城から東側を眺める
6日目
息切

 天気は昨日とは打って変わって快晴。こんな日には、一刻もじっとしていられない。8時に出発。
 ニース駅の券売機で切符を買う。まずはローカル列車専用の券売機へ。画面こそ今風だが、操作は全てダイヤルで行うという何ともデジアナ融合なインタフェースなのである。このダイヤルの操作は慣れないと非常に難しい上に、駅を指定する前に割引の種類がたくさんあって、該当するものをまず選択しなければならないので(フランス国民ではなく、いわゆる「生産年齢」の範囲内にいる人であれば、この種の割引には全く該当しないのだが・・・)、すっかり面喰ってしまう。仕方なく、特急の切符も変える「高級な」券売機に行ってみる。こちらはさすがにタッチパネルで英語対応もしているので便利だ。
 ニース駅のホーム番号は1,2・・・ではなく、A, B...Gとなっていて、他の駅とは変わっている。理由はわからないが。

 8時50分過ぎ、マントン行きの快速列車が入線する。どっと人が乗り込むのだが、2階建てでキャパシティが十分なため、何とか座ることができる。列車は予定より5分遅れの8時55分に出発する。海も昨日とは打って変わって真っ青だ。この青い海を写真に収めてみたいのだが、トンネルが断続しているせいもあって、なかなか難しい・・・。列車は目的地であるロクブリュヌ・カップ・マルタンを通過。トンネルを抜けると後方にマルタン岬が現れる。ここでようやくまともな写真が撮れる。9時25分、カルノレに停車。ここで降りる。
 ここで約30分ほど待って、9時52分に反対方向のニース行き普通列車に乗る。再びトンネルを通り、9時54分にロクブリュヌ・カップ・マルタンに停車。ここで降りる。ちなみに、「カップ」とは英語の"cape"と同じで「岬」のことであり、カップ・マルタンとはマルタン岬のことなのである。
 数分後、ニースからの普通列車が到着する。それなら、最初からこっちに乗れば運賃も安くついたし(切符にはカルノレ経由の運賃がもちろん加算されている)良かったと思ったが、時すでに遅し。切符を買うときによく確認すべきなのである。

 ロクブリュヌの町は、この辺りの町と同様に海に面した山の斜面に作られている。私はこの斜面をひたすら登っていくのだが、想像以上に傾斜がきつい・・・。階段も多い。こうして息を切らしながら登り続けること50分。たどり着いたのは、ロクブリュヌの旧市街。というより、中世以来の村、と呼ぶのが正しいようだ。
 坂道を登りきって疲れ果てていた私は、その中世の佇まいに感動するよりも、狭くて細い坂道を見て、さらに息苦しくなってしまった(笑)。そしてどこか開けた場所を求めて彷徨う。
 村の中心部に城があった。だいぶ朽ち果ててはいるが、が残っている。その塔の上に登ると、そこにはまたもや息の止まりそうな光景が待っていた。東はモナコ方面正面は村の全景とマルタン岬。これらを説明するのに言葉は不要である。

続く
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