ヨーロッパ横断鉄道旅行-第12弾(ピサ→ミラノ)(3)

ラ・スペツィア港
玄関

 駅前の通りを左に向かうと、道は緩やかな下り坂になって港に向かっている。私の泊まるホテルは、この通り沿いにあるはずなのだが、それらしき看板もない。ようやく指定された住所に着くと、そこは普通のアパート。こういう経験はヨーロッパではもう何度かしていたので、迷わずベルを押す。
 中へ入ると、そこにはフロント氏が待っていた。意外だったのは、ロビーはあるが、フロントデスクがないことだ。全ての客室がロビーと接している。つまり、その程度しか部屋がないのだ。あらかじめ時間を決めて待ち合わせねばならなかったのはこういう事情によるのだとようやく得心した。

 夕方、出かける。ラ・スペツィアは海と山に囲まれた町で起伏が多い。そしてこれは、ここから北に続くリヴィエラ海岸の特徴であるとも言える。ラ・スペツィアはリヴィエラの玄関なのである。

 まずは町の真ん中にある丘に登ってみよう。途中の道にはおしゃれなマンションが立ち並ぶ。別荘として所有している人も多いのであろう。丘の頂上には、サン・ジョルジョ城が建っている。現在では考古学博物館らしいのだが、来るのが遅かったため既に閉まっていた。
 丘からは、ラ・スペツィアの港と、この町を囲む山々を眺めることができる。
 面白いのは、この丘へ通じる「エレベーター」がいくつもあることだ。「エレベーター」の箱や乗り降りの仕様は、まさにエレベーターそのものなのだが、その経路を見る限り、これはミニケーブルカーである。

 丘から下りて、今度は港へ行こう。海岸でのバカンスシーズンは始まったばかりだが、もう大勢の人出がある。見た目も美しい開閉式の桟橋から眺めると、港に係留されている無数のクルーザーが見える。人も船も、海へ出ようとうずうずしている。

続く
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ヨーロッパ横断鉄道旅行-第12弾(ピサ→ミラノ)(2)

ミラノ行きIC(ピサ駅)
ピサ→ラ・スペツィア

 13時40分、ミラノ行きのICが到着する。コンパートメントではない通常の座席だ。13時43分に発車。
 西向きの線路は、すぐに南北に大きく分岐する。左側すなわち南に折れれば、ガリレオ空港の西側を通って、前回の旅の経路すなわちリヴォルノ、さらにはローマに通じる路線。右側すなわち北に折れれば、ラ・スペツィア、そしてジェノヴァへと向かう路線だ。列車はゆっくりと右にカーブしてアルノ川を渡る。
 斜塔のあるドゥオーモ広場を左手に見ながら、線路はさらに分岐する。右に向かえば、ルッカへの路線だ。列車は左に向かい、サン・ロゾーレ、さらにたくさんの貨車が並ぶ広い操車場を通過する。

 風景は早くも都市から広大な畑や森に変わる。そしていつの間にか海に近づいていた。14時ちょうど、ヴィアレッジョに停車。いかにも港町らしい景色だ。

 列車は再び内陸に向かう。右手に雲のかかる大きな山地が近づいてくる。ピエトラサンタやクエルチェタを通過して、14時17分にマッサに停車。ピサを先行して出発していた普通列車にここで追いつく。

 マッサを発車後、すぐに大きな工場が現れ、線路脇には貨物駅らしいホームが並ぶ。書かれている駅名は、ずばり"Zona Industriale"(工業団地)である。
 列車はサルザナを通過すると、マグラ川を渡る。山の上に街が広がるのが見える。しばらく北西方向にマグラ川を遡って進むが、やがて大きく左に分岐してトンネルに入る。ちなみにここを右に分岐すると、さらにマグラ川を遡り、アペニン山脈を越えてパルマへと至る路線となる。乗ることを想像するだけで楽しいが、以前経験したように鉄道が運休していないことを祈るのみである。
 さて、列車はトンネルを抜けると今度は南西に大きく向きを変える。この辺りはかなり複雑な地形のようだ。トンネルも断続する。そして、14時39分、列車はラ・スペツィア中央駅に停車。私は、ここで下車する。

続く
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