ヨーロッパ横断鉄道旅行-第9弾(ヴェネツィア→フィレンツェ)(4)

ラジョーネ宮(1)
3日目

まさか!

 この日はいったんヴェネツィアを離れてみる。8時32分、トリノ行きのFB9710でメストレを出発。この辺りは複々線化されていて、列車は特急専用レーンを猛スピードで駆け抜ける。8時48分、次の駅パドヴァに停車。私はここで下車する。わずかな時間だが特急を使ったのは、混雑を避け、ゆったりと鉄道を楽しみたかったからだ。

 ミラノ・ヴェネツィアを結ぶ東西の路線とローマからフィレンツェ・ボローニャを経由してきた南北の線が合流するパドヴァの駅舎を出て、南に歩く。ほどなくして運河を渡ると、中世都市、後にヴェネツィアの植民地となったパドヴァの旧市街になる。
 運河のすぐ南にあるアレーナ庭園の一角にあるのが市立博物館、そして「隣接する」スクヴェローニ礼拝堂である。私は礼拝堂を彩るジョットの壁画を見るために、入場時間が決められた礼拝堂のチケットを事前に予約していた。チケットと、これも予約していたパドヴァカード(市内交通乗り放題+市内見どころが無料または優待)を市立博物館で受け取る。この時私は、今までの経験から、礼拝堂と博物館が文字通り「隣接する」と思っていたようだ。

 礼拝堂の入場時間まで時間があるので、まずは博物館を見学。地元で発掘された土器・彫像、宗教画を中心とした絵画コレクション、そしてなぜかこんなところにもある古代エジプトのコレクションまで、意外に見ごたえのあるコレクションにすっかり満足する。
 礼拝堂の見学時間が近づいた。「スクヴェローニ」の案内板に従って地下に下りると、そこにはジョットの壁画を映し出した大きなモニタがある。奥に入ると、それらしい陳列スペースがある。もちろん、教会がこのような陳列スペースに収まるわけがなく、私はこの奥に本物の入口があるのだと思っていた。あの密閉されたような空間には、地下から行くのがふさわしような気もしていた。
 だが入口はなく、行き止まりだ。違う!慌てて階段を上り下りして館内を探すが、それらしき入口はない。外だ!と気づいた時は、既に20分以上彷徨した後だった。外に出ると、道端に礼拝堂の方向を示した小さな標識(本当にこのようなものだったか記憶が疑わしい)を見つけた気がする。その方向に教会があった。半ば呆然としたまま行ってみる。確かにここがスクヴェローニ礼拝堂であったが、指定の時間が過ぎていたため入ることはできなかった・・・。
 「人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、そして"まさか"だ。」と言った人が昔いた。こんな平坦な道に「まさか」は潜んでいたのである。

 すっかり意気消沈してしまった。昼時でもあるし、町の中心に行こうとバスを待つ。ところが、いくら待ってもバスは来ない・・・。良くないことは続くものである。もうどこに行くあてもなく、何となく南に歩き始める。19世紀からあるというカフェ・ペドロッキの前を通り、案内板に導かれるままに道を右に折れると、ラジョーネ宮というかつての裁判所に行き着く。
 パドヴァカードがあれば見学は無料と思いきや、特別展をやっているという理由で追加料金が必要だった。特別展は、建築関係ということしか理解できなかったが、壁一面の絵画やなぜここに置かれているかわからない巨大な木馬を眺めていると、先ほどから沈んでいた気分も少し落ち着いてきた。
 人気の少ないテラスから下を眺める。すると、柵で囲われた道路を懸命に走っている人々がいる。何とマラソン大会が開かれていたのである。バスが走っていない理由もわかった。

 さらに面白い何かを求めて、南に歩く。中世から続くポルティコ(柱廊)の街並みを、マラソン人が通り過ぎる。彼らの脳内と同じように体内麻薬でも出ていたのであろうか、私は疲れも知らずに歩き続ける。

 たどり着いたのは、サンタントニオ聖堂というスクヴェローニに比べるとずっと大きな教会であった。青を基調に彩られた天井と極彩色の壁画が、見る者を非日常の世界に誘う。イタリアでも屈指の巡礼地らしく、熱心に祈る人々の姿が後を絶たない。聖堂付属の博物館がちょうど昼休みで閉まっているので、私も昼食へ。門前町にはレストランも多い。昼食後に博物館に行く。ここでもパドヴァカード+追加料金が必要である。カードの存在意義はいよいよ疑わしい。

 マラソンはほぼ終息したものの、まだバスは動いていないから、結局サンタントニオ聖堂からパドヴァ駅まで歩くはめになった。そして駅に着く間際になって、ようやくバスが再開する。この日の私にとって、パドヴァカードはほぼ無用の長物であった・・・。

 16時2分、トリエステ行きIC588に乗る。様々な教訓を胸に、パドヴァを去る。16時19分、メストレに到着

続く
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