ヨーロッパ横断鉄道旅行-第8弾(ミラノ→ヴェネツィア)(10)

サンタンドレア教会(1)
華を追って

 マントヴァ駅には、予想通りコインロッカーはなかった。荷物は持って行くしかない。駅前にはバスが停あり、切符の自販機もあったのでさっそく切符を買う。バスの車内では切符を売っていないか、売っていたとしても高いからだ。ところがしばらく待っても、バスは全くやって来ない・・・。駅前から旧市街まで大して距離がないとはいえ、荷物を引きずりながらの徒歩はやはりしんどい。

 リオ川のほとりにあるサンフランチェスコ教会の前を通り過ぎるが、旧市街地はまだまだ先だ。案内板に従って歩くこと15分ほどで、ようやくエルベ広場に到着。駅前やこれまでの道の静けさとは打って変わって、観光客で賑わっている。広場の一角には、サンタンドレア教会と隣接する塔が威容を誇っている。広場に面した教会の入口は意外と狭いが、奥行きが相当にあるのだ。教会と道路を挟んだ反対側にはラジョーネ宮があり、その隣には小さなロトンダもある。さしずめ、ここはマントヴァの中心地と言えるだろう。

 エルベ広場からブロレット通りを北東に歩くと、ソルデッロ広場に至る。広場の東側には高い城壁が並び立っている。これがマントヴァ侯爵・ゴンザーガ家のドゥカーレ宮殿である。宮殿から道を挟んで隣には、大聖堂・ドゥオーモが建っている。街の中心・エルベ広場に対して、ここソルデッロ広場は政治の中心地と言える。

 その広さゆえ、位置関係がよくわからないまま入ってみたのは宮殿の一角にある考古学博物館であった。2013年の時点では館内の大部分が改装中であったため、入場料は無料。
 次いで、宮殿本体の博物館に入る。マントヴァ博物館カードを買う。価格は15ユーロ(2013年時点)で、市内の各博物館への入場が可能になる。ここで初めてクロークを発見し、荷物から開放される。壁画の一部は経年で劣化しているものの、その美しさは抜群である。各星座のキャラクターを天井に描いた部屋、石細工、壁と天井が一体となった装飾の数々、見事な絵画、窓ごとに姿を変える中庭、美しいタペストリー。

 町の大きさに比べて不釣り合いなくらい、ため息の出るような豪奢な館があるのは、イザベッラ・デステのおかげだろう。15世紀の末にマントヴァ侯爵夫人となった彼女は、なかなかの政治手腕を発揮すると共に芸術の振興に努めた。その結果、優れた芸術作品や芸術家が彼女のもとに集まってきたのだ。「ルネサンスの華」とまで言われる所以である。

 もう昼時になったのだが、いつもの悪い癖で昼食には行かずに観光を続ける。ソルデッロ広場から西に坂を下りた所にある司教区博物館に行ったのだが、15時にならないと開かないことが判明・・・。ブロレット通りに続くローマ通りに入り、南に向かって歩き出す。リオ川に架かるが何ともエレガントだ。
 ところが、エルベ広場のツーリスト・インフォメーションで地図をもらっていたのに、道に迷ってしまう・・・。結局20分以上かかって広い公園にたどり着いた。テ離宮である。

 この離宮はイザベッラの息子・フェデリーゴが建てたもので、敷地はとても広いのだが、建物の広さはそれほどでもない。(ちなみに、敷地内にはなぜかSLが展示されている。)博物館カードを持っていても、入場にはさらに4ユーロ取られてしまう・・・。天井画が素晴らしい。床一面に鏡、壁と天井は一連の絵画で満たされた部屋は幻想的だが、残念ながら鏡があちこち割れていて危ない・・・。音と光による演出も良い。

 街の中心部への戻り道、サンセバスティアーノ宮に寄る。小さな博物館だが、彫像のコレクションが素晴らしい。
 いつしか時刻は14時を遥かに回っていた。空腹はさらに募るが、8月というバカンスシーズンで閉店しているレストランが多いのに加えて、イタリアの地方では根強く残るシエスタの時間に遭遇してしまったため、店という店がシャッターを下ろしているのだ・・・。暑さと疲労と空腹が容赦なく襲いかかる。

 ローマ通りまで戻ってきて、ようやく開いている店を発見。店頭に並んだピザなどを温めてもらうという簡易なものだが、贅沢は言えない。店の外のベンチでピザを頬張っていると、チーズの臭いに誘われたらしいハエが寄ってくる。そのハエを何度も追い払う(日本人らしい?)しぐさは、周囲の客には少々奇異に映るようだ。

 少し元気を取り戻したところで、司教区博物館を再訪する。15時を既に回っていたはずだが、入口は閉まったままだ・・・。諦めようかと迷っていたところ、私の存在に気づいたスタッフが慌てて飛び出して来た(笑)。
 このかつてのマントヴァ司教館を改装したらしい博物館は、事前の期待に反して、充実したコレクションを誇っている。宗教絵画はもちろんのこと、ベネツィアガラスの箱などの宝飾品もなかなかのものだ。

 ソルデッロ広場に戻ると、昼過ぎまで広場を埋め尽くしていた市場のテントが跡形もなく姿を消していた。宮殿の博物館で荷物を受け取り、駅前のホテルに向かう。ホテルに着くと一日の疲労がどっと出て、夕食に出かける気力が失せてしまい、結局近くの店でパンなどを買って済ませてしまった。「ルネサンスの華」の跡をたどる旅は、思ったほどエレガントにはいかなかったのであった。

続く
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