ヨーロッパ横断鉄道旅行-第7弾(ミュンヘン→ミラノ)(16)

ツークシュピチェ山頂から(8)
ドイツの頂上へ

 ホームから地下通路に下りると出口が東西二つに分かれている。東側に進むとドイツ鉄道の駅舎があり、西側に進むとドイツの最高峰・ツークシュピチェに向かう登山鉄道の駅がある。登山鉄道の駅の窓口には、大勢の登山客が列をなしている。列に並んでいる間に、ガルミッシュ・パルテンキルヒェンという舌を噛みそうな地名について少し説明しよう。

 もともと、ドイツ鉄道の駅から東に少し歩いたところにあったのがパルテンキルヒェンという町で、この駅を含む西側のエリアがガルミッシュという町だった。1936年、ベルリンオリンピックの年にこの地で冬季オリンピックが開催されたのだが(かつて夏季と冬季のオリンピックは同じ年に行われていた)、その機会に二つの町は合併したのである。オリンピックを引き受けるには2つの町の協力が不可欠だったからなのだろうか?先ほど車窓から見たジャンプ台も、その当時のものかもしれない。

 ようやく登山鉄道の切符を買い、ホームに行く。上が白、下がバイエルンを象徴する青に塗られた登山電車は、既に乗客でいっぱいだ。デッキの片隅に立つしかない。
 10時15分、登山電車が発車する。しばらく南に進むと、ミッテンヴァルトに向かうDB線と分かれて右に大きくカーブする。オーストリアのエーアヴァルトに向かうDB線と併走する。緑に覆われた平坦な土地をしばらく進むが、ハウスベルクを過ぎると、DB線とも分かれて徐々に山を登り始める。天に向かって聳える山々が姿を現す。10時30分、グライナウに到着する。実は、ここまで乗って来た列車は普通の車両。ここから本当の登山仕様の列車に乗り換えるのだ。その列車の側面にはスキー板を取り付けられるようになっているのだが、一番の違いは、歯車を使って進むラックレールだ。つまり、ここからは相当な急勾配が予想される。

 10時35分、グライナウを発車する。山道をぐんぐん登る。天に聳える山々がさらに近づく。10時43分、アイプゼーに停車する。その名前の通り、アイプ湖という湖のほとりにある。ここで7分間停車した後、10時50分に発車する。勾配はさらにきつくなり、ほとんどケーブルカーのようになる。11時、信号所に停車。もちろん単線なので、ここで対向列車を待つ。発車すると、まもなくリッフェルリスという信号所?を通過する。そしてトンネルに突入。相変わらず急勾配は続き、大きなヘアピンカーブもある。もちろんその場では気づかないが、ツークシュピチェ山頂の真下も通過したらしい。あまりに長いトンネルなので、トンネル内にも信号所がある。トンネルに入ること20分。ようやく終点のグレッチャーに到着する。駅はまだトンネルの中にある。

 駅を出ると、そこは一面の銀世界だ。標高2650メートル。鉄道一本でこんな所まで来てしまったのだ。振り返ると、山小屋のような駅舎が見える。私にスキーの素養があれば、この真っ白でなだらかな斜面を滑ってみたいが、残念ながらそういう能力がないので、ここからはツークシュピチェの山頂を目指すことにしよう。
 山頂にはロープウェーで行くことができる。雪を被った岩肌の上を進む。どんどん山頂に近づいているものの、濃い霧に覆われていてよく見えない。

 ツークシュピチェの山頂にはビルのような建物が建っている。ここの展望台から辺りを眺める。やはり視界が悪い・・・岩場の上に金ぴかの柱が立っているのが、本当の山頂であろう。標高2962メートル。ドイツの最高地点に苦もなく到達したのだから、あまり文句は言えないのだが、それでもここで引き返すのは惜しい。しばらく待ってみよう。

 強い風が吹きすさぶ中、展望台にしばらく立ち尽くす。上着を何枚も来て、マフラーにニット帽を被る。気軽に来れるとはいえ、真冬の装備をしていないと凍えてしまう。
 山の天気は本当に変わりやすい。少しばかり霧が晴れてきたのだ。山頂がその神々しい姿を現す。辺りの様子もよくわかってきて、この展望台が建つ岩場や、剣のように鋭い岩山も見える。かつての高所恐怖症は克服したつもりでいたが、これを見るとやはり足がすくんでしまう。だが視線を遠くに転じると、麓のアイプ湖アルプスの山々の素晴らしい景色が目に飛び込んでくる。怖さを忘れて、3000メートルの絶景をしばし楽しむ。

続く
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