ヨーロッパ横断鉄道旅行-第4弾(ウィーン→プラハ)(10)

プジェミスル・オタカル2世広場(2)
黒い塔の街

 駅からブディェヨヴィツェの旧市街に向けてまっすぐ伸びるラノヴァ通りを西に歩いて行く。沿道の建物はいずれも新しそうなのだが、昔風のカラフルでかわいらしい造りになっている。
 しばらく進んで、旧市街の中心、プジェミスル・オタカル2世広場に到着する。この町の起源は、ボヘミア王、プジェミスル・オタカル2世が13世紀にこの地に町を建てたことに由来している。町には城もなく、専ら商業都市として栄えたようだ。
 広場を取り囲む建物群は、いずれも古風でかわいらしい。唯一威厳があるのは、広場の隅にある市庁舎ぐらいなものだ。その建物群の中にあるホテルに入る。

 市庁舎とは広場を挟んで対角線上にあるのが、黒塔と呼ばれる塔だ。その名の通り黒い石造りの塔で、高さは72メートルもある。ここも登ることができるので、早速登ってみる。息を切らしながらようやく頂上にたどり着くと、そこには展望台の料金所が待ち構えている。途中で挫折した人からはお金を徴収しないということなのだろうが、せっかくゴールしたのに何だか気が抜けてしまいそうだ・・・。
 だが、黒塔からの眺めはとても素晴らしい。赤い甍を戴くかわいらしい家々が寄せ集まっている街の様子や、広場全体を一望することができるのだ。

 地上に下りて、今度は街中を散策してみる。広場からさらに西に抜けて聖母の祈り教会(ここにも高い塔があるが、これは登れない)の前を通って、水路沿いの道を歩く。旧市街の西側でヴルタヴァ川(日本では「モルダウ」として知られるボヘミアの大河)とマルシェ川が合流しているのだが、この街は、これらの川とここから引いた水路を堀として利用しているのである。水路の周辺には広場の雑踏もなく、川の流れと同じくゆったりとした時間が流れている。
 水路に架かる小さな木橋を渡ると、「塩の門」と呼ばれる小さな門をくぐる。かつて、この町が塩の取引で栄えたゆえ、この門から塩が頻繁に出入りしたのであろう。門をくぐると、再び広場に出る。水辺の静寂は消えて、人々がせわしなく行き来する世界に戻る。

 20時を過ぎてようやく日が沈み始めた。夕食に出かける。ピザを食べる。スロヴァキアでもそうだったが、ピザが本当に安い。一人では食べきれないサイズのものが、たった数百円なのだ。お供はもちろん、ビールだ。この時に飲んだのはピルスナー(実は、この日私が乗った特急の終着地・プルゼニュのドイツ語読み)で、もちろんおいしかったのだが、私はうかつにもブディェヨヴィツェ名産のブドヴァル(この名前にあやかってアメリカで造られたのがバドワイザーである)に気づかなかったのだ。

 いつもの通り満腹とほろ酔いになって外に出ると、ようやく辺りが暗くなっていた。しばらく広場にたたずむ。21時過ぎ、広場を囲む建物群が突如としてライトアップされる。あの黒塔も強い照明に照らされて、白く輝き始めた。これでは「白塔」である。古い街並みが織り成す幻想的な光景に、私はその場にしばらく立ちつくしていた。

続く
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