ヨーロッパ横断鉄道旅行-第4弾(ウィーン→プラハ)(7)

ザハリアーシュ広場(3)
虹の架かる街

 テルチ駅からまっすぐに歩いて、閑静な住宅街に入る。道なりに左に折れてしばらく進むと、ホルニー門という石造り風の小さな門が現れる。この門自体はそれほど大したものではないが、ここをくぐった瞬間に世界が一変する。

 門を抜けると少し上り坂になっていて、その脇に高く聳えた塔が立ちはだかる。これは聖ドゥハ教会だ。坂を上ると一気に視界が開け、そして思わず立ちすくむ。その石畳の広場は、何ともカラフルでかわいらしい建物群に囲まれていたのだ。
 ここテルチの街は、おもちゃの国でもなく、また最近作られたテーマパークでもない。16世紀にあった大火事の後、住民達が趣向を凝らした家を建て、それが今日まで保存されているのである。街の中心・ザハリアーシュ広場ではちょうど何かのイベントが行われていて、軽食などを売るテント屋台があちこちに建っている。皮肉なことに、この簡易なテント屋台が、ここでは非常にモダンに見えてしまうのだ。

 私はさっそく、市庁舎(これもなかなか立派で面白い建物だ)の隣にあるホテルに行く。だが、フロントには誰もいない・・・。隣接するレストランで話を聞くと、係の人が16時にならないと来ないという・・・。
 16時過ぎ、ようやくチェックインできたので、街を散策する。

 まずは、街の一番奥にあるテルチ城に行く。ここはガイドツアーのみ見学可能なのだが、あいにくこの日は英語のツアーが終わっていて、チェコ語のツアーに参加する。ガイドさんの説明はさっぱりわからなかったのだが・・・、素晴らしい天井画や立派な肖像画に彩られているホールの数々、陶器などの豪華な調度品に感服する。よく手入れされた庭園の眺めも素晴らしい。

 時刻は18時に近づき、多くの観光施設が閉まる時間になってきた。急いで城の隣にある聖ヤコブ教会に行く。ここの塔に登ってみたかったのだ。数百段あるかなり険しい階段を上りきって、塔の頂上から顔を出そうとしたその時、激しい天気雨が降り始めた・・・。思わず屋内に避難する。
 しばらくして雨が止んだ。雨上がりの街は空気が澄んで、濡れた屋根が光沢を放つ。テルチの街は、北側をシュテェプニツキー池、南西側をウリツキー池という2つの池に囲まれているのだが、それをここからは一望することができる。シュテェプニツキー池を背景にした城の庭園も見ることができる。オレンジの甍の波と森の緑、そして池の灰色が絶妙にマッチしてとても素敵な風景を作り出している。

 18時過ぎ、夕食に行く。初めて口にするチェコ料理は、豚肉やハムにクネドリーキという蒸しパンを添えたものだ。全体にザウアークラウト(キャベツの酢漬け)のソースがかかっていて、これをクネドリーキに浸して食べる。クネドリーキは非常に腹持ちが良いので、これだけで満腹になってしまう。食事と一緒に飲むのは、チェコの名産・ビールだ。麦芽の糖度が高く、非常においしい。

 夕食が終わって外に出ても、まだ明るい。西日に照らされた広場の家々は、その多彩な色彩をいっそう引き立たせる。ふと気づくと、空には虹が架かっていた。この街は地上だけでなく、空まで彩られているようだ。

続く
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