ヨーロッパ横断鉄道旅行-第2弾(アテネ→ブダペスト)(7)

ヴェレス付近
ゲブゲリヤ→ヴェレス

 ゲブゲリヤ駅には、国境の駅らしく貨物列車用の構内線が何本も並んでいる。列車が到着するとすぐに、銃を持った兵士が周囲を警戒し始める。このものものしさにはどこか懐かしさを覚える。それはなぜだろうかと思い巡らせてみると、中央アジアの旧ソ連地域で見慣れた光景だったのだ。かつての社会主義国・ユーゴスラビアの一部だったこの国にも、そうした遺風が残っているのだろう。
 車掌がやって来て、入国カードを配布してゆく。書き終わった頃に出入国係官がやって来てカードとパスポートに押印し、カードを回収してゆく。

 ところで、1回目の記事で「ヨーロッパ圏内を移動するには出入国審査が不要」と書いたが、実はこれは正確ではない。より正確に言うならば、シェンゲン協定という協定の加盟国間では出入国審査が不要なのだ。この協定にはフランスやドイツなどのヨーロッパ主要国の他にギリシャも加盟している。しかし、マケドニア共和国は加盟していない。だから、ギリシャ・マケドニア共和国間では出入国審査が必要なのである。

 入国審査の間に、テッサロニキからこの列車を牽引してきたギリシャの機関車が、切り離され去って行った。次に連結されたのは、おそらく濃いオレンジ色をしたマケドニア共和国の機関車だろう。
 入国審査が終わって列車が開放されたらしく、地元の人々がたくさん乗車し始める。6時37分、列車が発車する。ようやく夜が明け始める。
 ゲブゲリヤから車掌が交代し、乗車券のチェックに回ってくる。ここは指定席ではないから乗客情報の引継ぎなどあるはずもなく、これ以後車掌が交代するたびに乗車券のチェックが行われることとなる。

 列車はやがて、大きな川の峡谷に入り、川に沿って蛇行する。この川こそ、テッサロニキを出発して以来、この列車が付かず離れず沿っていた川であり、ギリシャではアクシオス川と呼ばれていたが、ここマケドニア共和国ではヴァルダル川と呼ばれている川である。川岸の木々が大きく揺れている。この峡谷を吹き抜ける北風は、ギリシャ・マケドニア地方にまで吹きこみ、同地の気候に大きな影響を与えているそうだ。
 テッサロニキを出発して以来、国境までノンストップで来たこの列車だが、ゲブゲリヤを出てからは名前もわからない小さな駅にも頻繁に停車するようになる。そして、これらの駅でも乗客の乗り降りが少なくないのだ。当時私の持っていたThomas Cook時刻表によれば、2010年時点でゲブゲリヤとマケドニア共和国の首都・スコピエを結ぶ列車は、わずかに1日4往復。しかもそのうち2往復は、テッサロニキとベオグラードを結ぶ国際列車なのである。そのうちの1本が、この列車だ。「国際列車」といえども、地元の人々にとっては貴重な足なのだ。

 ヴァルダル川の峡谷は、所によっては大きく広がって平地になったかと思うと、大きな断崖が川に迫ってくることもある。峡谷を吹き抜ける風は相変わらず強い。外に出れば凍えてしまいそうだが、列車内では窓際から暖房が効いていて、とても暖かい。
 7時50分、名前不明の駅に停車する。対向列車が、この列車を待ち合わせていたようだ。ゲブゲリヤへと向かう4本のうちの貴重な1本とすれ違う。
 いくつもの駅に停車している間に、私のいるコンパートメントもいっぱいになってしまった。わずか2両の国際列車は「満員御礼」状態である。

 川の目前に迫っていた山々が後退し峡谷が少し開けた所に、赤い屋根の家屋が並ぶきれいな街が見えてきた。そして、右側と左側から線路が相次いで合流してくる。これらの線路は、マケドニア共和国東部のコチャニと西部のヴィトラからそれぞれやって来て、同国の中央部を南北に貫くこの線路に合流したのである。そして列車は、このきれいな街・東西南北の交通の要衝ヴェレスに停車する。8時15分。

続く
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