シルクロード鉄道旅行-第9弾(テヘラン→イスタンブール)(5)

イラン・トルコ国境
ラジ→カプキョイ

 乗客の出国手続きは済んでいるはずなのだが、15時を過ぎてもラジを出発する様子は見られない。しかも乗客は外に出ることは許されないから、退屈な時間が続く。しばらくして、菓子と飲み物が配られる。3食プラスおやつ付きとは、なかなかサービスの良い列車である。
 おやつを食べて一息ついていると、先程の出入国審査官が部屋にやって来て、パスポートに押印があるかをチェックする。こうして各部屋を回っているようだ。
 全ての手続きが終わり、ラジを出発したのは16時9分だ。

 南北を山に囲まれた谷間を、列車はゆっくりと進む。やがて、南側の山中にイランのシンボルがはっきり見えたかと思うと、次の瞬間には線路脇の東側にイラン、西側にトルコの看板が見えた。ここが国境なのだ。旧ソ連の国境で見られたような、びっしりと張り巡らされた鉄条網や広大な緩衝地帯は、ここでは見れらない。列車はついにトルコに入った。線路脇には、国境警備のトルコ軍の兵士のリラックスした姿が見え、南側の山中には、今度はトルコのシンボルが見える。そして、16時24分にトルコ側の国境の駅・カプキョイに到着する。トルコ時間(日本時間-6時間)では、1時間30分遡って14時54分となる。

 外壁が明るいクリーム色で塗られたカプキョイ駅には、いかめしい雰囲気は全くない。しかし、乗客は全員外に降ろされ、ここで入国審査を受ける必要があるのだ。
 まず、医務室の前に行列ができる。ここでは、2人の医師が一人一人の耳に体温計を当て、高熱がないかを瞬時にチェックする。問題なければ、「ドクター○○ チェック済み」と書いた小さな紙切れを渡される。この紙切れを、入国審査の際に提出するのだ。
 次に、入国審査室に行列ができる。体温チェックよりもはるかに時間のかかる作業なのだが、窓口は2つしかない。イランの人々の習性によるものか、きっちり男女に分かれて1列ずつ並んでいる。ずいぶん長い行列だったが、それでも列は少しずつ進み、ようやく窓口の中が見えるようになる。窓口の中には、カジュアルな服装をした審査官が2人いて、もう1時間30分以上も途切れることのない入国者の審査をこなしている。
 私の番まで、あと3人ほどになった時、そのトラブルは発生した。その時審査を受けていた男性(イラン人ではない)は、トルコのビザを持っていなかったようだ。審査官は入国を拒否する。だが、男性は猛然と抗議を始める。「オレたち○○人は、ビザはいらないはずだ!」と持っていたガイドブックを審査官に見せて詰め寄る。そのガイドブックの情報が古かったのか、間違っていたのか、何かの誤解なのかはわからないが、決定は覆らない。しかし、審判に抗議するプロ野球の監督よろしく、男性の抗議は延々と続く。不幸なことに、ここには予備の審査官がいないので、その間、後ろの私達はずっと待たされるはめに・・・。乗客達のイライラが、部屋に充満する。
 30分ほど後、男性はようやく諦めた。そして審査が再開する。私の後ろに並んでいた人が、「キミは大丈夫かい?」と尋ねる。皆、(イラン人から見て)外国人の入国手続きに不安を抱いている。2009年現在、日本人はトルコ入国時のビザは不要なのだが、この状況を見た後では私も不安になってしまった。
 ようやく私の番になる。私のパスポートを見ると、審査官は黙って何かを入力し始める。ビザがない代わりに、パスポートの情報などを登録していたのだろう。だが、「コイツもヤバイぞ」という動揺が列の後ろの方に広がり始めてしまった・・・。みんな疑心暗鬼になっているのだ。しばらくして、手続きは無事に終わった。安堵の声が広がる。

 ホームに戻ったのは17時。到着してから2時間以上も経っていた。太陽はもう西に傾き始めている。乗客達は、日陰にまとまって佇んでいる。私には、ここで済ませておきたい用事がもう一つあった。トルコリラへの両替である。だが、この駅には両替所がなかった・・・。

 17時30分過ぎ、乗客は列車に戻される。税関による手荷物検査や、パスポートの押印チェックなどが行われた後、列車は18時18分に、ようやくカプキョイを発車する。

続く
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