シルクロード鉄道旅行-第8弾(ブハラ→テヘラン)(3)

ファラブ
越境(その1)

 電話を終えたDさんが車に戻ってきた。そこで彼が告げたことは、私をホッとさせると同時にゲンナリさせるに十分であった。まず、私が心配していたような国境閉鎖とか出入国制限などはなかった。しかし、この検問所から先は車は進めず、国境まで歩いて行かねばならないのだ・・・。「そう遠くはない。向こうに見える青い屋根の建物が国境事務所だ。」確かにその青い屋根は見えた。だが、それは彼方の点にすぎない。
 時刻は9時40分過ぎ。バッグを背中に負って歩き始める。シルクロードを旅する時は、いつも小さいバッグ1つだけを持ち歩くようにしている。旅の途中で何度も衣類の洗濯が必要になるのだが、こういう場面では威力を発揮する。検問所から広い道がまっすぐ国境に伸びている。同じく越境するであろう地元の人が歩く姿がまばらに見える他は、人の姿はなく、道端では羊の群れが草を食んでいる。車ごと越境する大型のコンテナが時折通り過ぎて行く。鉄路も確かにこの辺りを通っているはずだけれど、ここからは肉眼で確認することができない。トルクメニスタンへの入国時間は11時。間に合うかどうか不安なので、とにかく早足で歩く。日差しが荒野を容赦なく照りつける。だが、歩けども歩けども国境事務所の姿は大きくならない。

 歩くこと40分、ようやくウズベキスタン側の国境事務所にたどり着く。旅行者風情の人間は珍しいのだろう。入口を警備する若い兵士達が、好奇心をむき出しにしていろいろと話しかけてくる。
 出国の手続きは、未経験でロシア語のできない(ここでは英語はほとんど通じない)人間にとってはわからないことだらけだ。手前の小さな建物の中では、まずパスポートの確認が行われ(ここでは出国スタンプは押されない)、税関書類の確認も行われる(これもスタンプが押されるわけではない)。次に進むわけだが、案内板も何もないので、道なりに何となく進む。前方に大きな建物が見えるが、コンテナの駐車スペースが見えるばかりだ。素通りしようとすると、他の通行人に注意される。彼らの指差す所には確かにドアがあり、中に入ってみるとそこは税関のオフィスになっている。ここで税関書類を提出する。再び道路に戻って進もうとすると、また通行人に注意される。コンテナの駐車スペースの出口の料金所のような小さな小屋が、パスポートにスタンプを押す場所なのだ・・・。ようやく手続きを終え、事務所を出ようとすると門が閉まっている。そこに立っている兵士にパスポートを見せると、一人分が通れるスペースだけ開けてもらえるのである。

 門を出ると、ウズベキスタン・トルクメニスタンの緩衝地帯だ。荒野の中に細い道が1本伸びている。道の両側には大型コンテナがずらりと駐車している。おそらくここで通関待ちをしているのだろう。イランから来たらしいコンテナが多い。中にはアゼルバイジャンから来たものもある。コンテナは1台ずつ駐車したり出ていったりしているだけなので、この道はとても静かに見える。だが、ここがシルクロードの動脈の一つであることは確かであろう。
 歩くこと約20分、ようやくトルクメニスタン側事務所に到着する。時刻は既に11時(ウズベキスタン・トルクメニスタン間には時差はない)を過ぎてしまった。さっきまでよく晴れていた空は、いつの間にか曇っている。

 トルクメニスタンの国境事務所(それはとても小さく、「小屋」と形容するのがふさわしい)には、英語ガイドのNさんが迎えに来ていた。Nさんにパスポートと入国諸費用(ビザ発行手数料・入国税、米ドル)を渡して、しばらく事務所の外のベンチで待つ。
 トルクメニスタンで個人旅行するには、少し制約がある(2009年5月現在)。まず観光ビザを発行してもらうには、現地旅行社のインビテーションレターが必要だ。インビテーションレターをもらうには、入国から出国まで全行程にわたって、現地旅行社に観光・移動手段・ホテル・ガイドの手配を行う必要がある。ビザは各国境(または空港)で発行される。この他にも周辺国のトルクメニスタン大使館でトランジットビザが発給されるという話もあるようだが、私はよく知らない。
 手続きは、1時間ほどして終わった。パスポートにはトルクメニスタンのビザが貼られている。この他にも2種類の書類が添付されている。いずれも出国まで必要なものだ。
 国境事務所の門を出た所に駐車場があり、私達の乗る車が駐車していた。良かった・・・。

続く
目次へ

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック